でぃれくたーずかっと♪
特G
特J
特K
でぃれくたーずかっと♪
特G
G
※アバン
公園を歩く。
ラブ、美希、祈里。そして千香、アルト。
「ラブ、いつまでその髪型なの?」
そういう美希は動きやすそうなパンツルックながら今日も完璧。
「だって大輔が……」
「まあ、幸せなのねラブちゃん」
いつも元気なラブがこの話になると少し大人しくなる。
「美希たんだって気合入ってるじゃない」
「そんなことないわよ。あたしはいつだって完璧。あ!瞬!」
長髪を縛った細身の男。こちらもモデルか芸能人のように見える。
「やあ、久しぶりだね」
OP♪
「包んでSpiral Flavor」
CM〜
※Aパート
「希望との再会!トネリコの森の戦い!」
朝早くから支度する千香。
「外国に行くなんて楽しみ」
「外国やのうて、パラレルワールドやで」
「似たようなものじゃない?火星人とか出てくるわけでもないんでしょ?」
「妖精さんはみんなかわいいで。そもそも、みのりはんとこもパラレルやないの」
「そうなのかな。実感無いけど、ああいうところも素敵だよね」
笑顔でアルトを見ると光り輝いている。
「え?まさか!」
自分を見る。しかし、いつもの光は無い。
もう一度よく見ると、光っているのはアルトではなくその前の空中に何かがある。
ひらりと一枚の輝く大きな葉っぱ。
「なに?」
「これは!」
アルトは葉っぱを手にとって表や裏を見たり振ったりしてみる。
「なんやろ。でも大事なもんな気がするわ」
「とにかくそれ持って行こう。プリキュアに関係してるならなおさら相談できる方がいいから」
アルトを抱えて家を出る。
「いってきます!」
「みなさんにご迷惑かけないようにね」
「うん」
母も面識がある分、ラブたちと過ごす事には安心している。
しかし実際はプリキュアとして戦っている千香。後ろめたさはある。
「今日あたり何かありそうな気がすんで」
「私もちょっと嫌な予感がする」
予定の時間には余裕がある。しかし気持ちが早って小走りになった。
公園で三人と待ち合わせ、瞬と出会う。
ラブの家で聞いたプリキュアの戦い。
千香はプリキュアが大好きで知っていることも沢山あった。
もちろん正体を知らないまま、やはりラブたちも大好きでよく知っていた。
しかし、戦っていたものの正体と、もう一つ。
キュアパッション。
いつの日か四人で行動していた。ラブの新しい友達、東せつな。
タケシがよく話していた。
そして千香と知り合う前に帰っていったらしい。
「戦っていたのは管理国家ラビリンス。せつなはそこの幹部だったの」
ラブはあっさりと言った。きっとそこには壮絶なやりとりがあったに違いない。
そして夕凪で会った満のことを思い出す。
「友達になれたんですね?」
「うん」
伝説の戦士の戦い。パラレルワールドすべてを管理しようとする存在。
そして管理国家ラビリンスは解放され、自分たちの手と足で幸せを探す国になった。
瞬を先頭に森に入る。
「ここは確か……」
「最初にラグナラボの忍者と会ったところやな」
「なに?本当かい?」
驚く瞬。
「はい。それから、最初に夕凪町に飛んで行ったのもここでした」
ラブが頭をひねる。
「えっと、ここは特別な場所で、次元の歪みが……なんだっけ?」
「とにかく、パラレルワールドへの扉を開きやすいらしいわよ」
苦い顔をする瞬。
「しかし多用しすぎたかな?不必要に扉が開くのもよくないが……」
足音がする。
「おそくなりました、南さん」
金髪のショートカット。
「え?千歳?」
「千香?」
お互いを見て驚く。
「あ、ラブさん、美希さん、祈里さん。どういうことですか?なんで千香が……」
「実はいろいろあって、私たちのことを話したの」
「何かあったんですね?最近、プリキュアを見たっていう噂もあるし……」
「まあ、そういうことや」
千歳を見て話すアルト。
「なつかしいわ。とてもおいしいドーナツをくれたあの子達にそっくり」
千歳はしゃがんで目線を合わせ、じっとアルトを見る。
「もしかして千歳は……」
「私、ラビリンスから来たの」
「そっか。なんか運命だね」
何かが変わるわけでもない。むしろ肯定的に事実を捕らえる。
その笑顔はいつか見たプリキュア。
「ありがとう。ねえ、千香が、プリキュア?」
「うん。だけど、噂のプリキュアは私じゃないの」
「どういうこと?もう一人戦ってる子がいるの?」
「おわっ!」
アルトが急に声を出した。
大きな葉が光り宙に浮く。
「お久しぶりですみなさん」
聞こえてきた声。姿は見えない。
「え?」
「誰?」
久しぶりといわれても声にほとんど聞き覚えが無い。
いや、正確にはみんな心のどこかでその声は分かっていた。
しかし、その記憶とはかけ離れた調子のしゃべり方。
「お疲れ様やでシフォンはん」
「シフォン?」
顔を前に出して驚くラブと美希。
「シフォンちゃん?」
頬に手を当てて驚く祈里と千香。
「はい、以前は大変お世話になりました」
うまく言葉が出ない。衝撃的。
「な、なんか……」
「うん、すごい礼儀正しい」
「立派になって……」
落ち着きを取り戻す。目を潤ませる祈里。
「そういえばタルトがシフォンには別の使命があるとか言ってたわね」
「そうね。だから会えなくて寂しかったわ」
「じゃあ、もしかして今がその使命を果たすときなの?」
ラブは気を張った。
「そうです。私の無限のメモリーと世界をつなぐ力を使うときが来ました」
「本来はそういうことだったのか」
驚く瞬。
「あ!」
「え?」
「フィーリア王女!時間です!そろそろ移動しないと!」
「わかりました」
突然の誰かとの会話。
「申し訳ありませんみなさん!またすぐに必ず説明します!」
千香を見るラブ、美希、祈里。
「シフォンちゃん」
「千香ちゃん。ごめんね。何も説明しないままで」
「いいよ。立派になったシフォンちゃんが頑張ってるんだもん。私も頑張る」
千香とアルトが光りだし浮き始める。
「やっぱりラビリンスには行けへんかったな」
「うん、なんとなくわかってたけど。千歳」
「千香……」
祈るような千歳。
「きっとみのりちゃん、キュアフルーティーが来てくれる。せつなさんはきっと大丈夫だから」
「うん。千香も戦うんでしょう?絶対に無事に帰ってきてね」
「うん!」
千香はラブたちの方を見た。
みんなプリキュアのような目をして頷く。千香もそれを受け取って頷いた。
光の流れに乗る。
「きっと大丈夫。深呼吸!リフレッシュ!」
正面を見据える。
しかしみのりが流れてこない。
「あれ?おかしいな」
そのまま光の外へ出た。
辿り着くと目の前に4人。
「あ、どうもみなさん」
いきなりの遭遇に驚いてギクシャクする。
「あなたが千香ちゃんね」
長い髪をバックにした長身の女性。冷静で優しそうな笑顔。
見た目は違うが満に雰囲気が似ている。
「はい。薫さんですね。よろしくお願いします」
「こちらこそ。あら、なにか心配事?」
気がかりなことがある表情を見抜かれた。
「途中でみのりちゃんとすれ違わなかったんです。いつも交代するみたいにすれ違うのに」
「え?」
冷静だった薫の表情が一変する。
もちろんみんな驚いている。特に姉である咲。しかし薫はそれ以上に。
「向かうところがラビリンスやったからやないの?」
「あ、そうかも」
「どういうこと?」
アルトを持ち上げて目の前で尋ねる薫。
「こっちの精霊たちの国やわいの王国みたいに、違う世界の人間にプリキュアがおるんや」
「つまりいつもみたいに行き違いじゃないからっていう、単純に場所の問題なのね?」
「多分そうやろ」
安心したのか大きく息を漏らす薫。
「それより、なんやここは。すごい力を感じるで」
「あ、あの葉っぱ」
「あれ?わいのは向こうに置いて来てもうたんやけど、チョラピはんのか?」
大空の木の葉が共鳴して光る。
アルトは薫の腕から降りて木を見上げる。
「こらすごいわ!世界樹の共鳴体やないの!」
「なにそれ?」
「シフォンはんらが無事やったってことはラグナラボに対抗する効果があったんやな」
「この光が?この木にそんな力があるの?」
「それだけやなくて、プリキュアと光る葉っぱ。全部合わせた感じがするわ」
「なんかわかる気がするかも」
大きさやうろを見ればそれなりに老いているようにも見える大空の木。
しかしあふれ出る生命力。千香は元気をもらう。
「来たで!」
ズズン
トネリコの森の鳥たちが飛び立つ。
アイキャッチ
CM〜
アイキャッチ
※Bパート
大きな影。
「揃っているようでござるな。その者が最後の一人か」
怪物の上にポズーイ。驚く咲。
「ひ、ひょうたん岩?」
ひょうたんの形をしているが無骨。鋭い目。とってつけたような簡素な手に対して重厚な足。
「こいつの上に乗ってみるとなにやら強い力を感じたでござる」
「シックシク!」
ある程度の距離を保って止まる。
「なるほど、近寄り難い。そちらも対策はほどこされているでござるな」
見合う。
千香はリッタッチを構える。
※変身バンク
「プリキュア!フィーリングソウルエナジー!」
天に掲げて叫ぶと千香を光が覆う。
パネルをタッチすると立体的な黄色い五芒星が画面の上に飛び出した。
息を吹きかけると星が回転し輝く。
青い色の風が千香を包む。
解かれてなびく髪。
肩と胸の辺りは薄いピンク。胸元には星のワンポイント。
ボディからスカートまでマリンブルー。
全体の端を薄いピンクのフリルがなびく。
腰元に真っ白の大きなリボン。
同じ青を基調としたアームウォーマーにレッグウォーマー。
インナーのアームカバーとレギンス、ブーツは黒。
両膝とベルトの中央、手の甲には赤く丸いオレンジのポイント。
イヤリングにはさくらんぼのように小さく。
髪はグレーに変わり左側に垂らしてまとめるルーズサイドテール。
肩のあたりに下がった髪留めは、丸いふちの中に赤い風車を模している。
リッタッチは腰元のケースに収まった。
「千の泉に香る星!ナチュラルフレッシュ!キュアパフューム!」
大きく手を天にかざす。はじける光。
「飛んでいけ!悪いの!」
天にかざした手をポズーイと怪物に向ける。
「プリキュアの心の力を奪って何をする気なの?」
パフュームは思い切って直接聞いてみた。
「崇高なるワグ様のお考えだ。我らは任務を果たすのみでござる」
口が堅いほうでないポスーイがそう言う。本当に知らないのかもしれない。
「騙されてるんやないの?」
容赦ないアルト。
「それはない。なぜならば我らはワグ様の……いや、余計な問答は無用!」
ひょうたんの怪物は頭のフタのようなものを外す。
「シッーック!」
ゴオオ!
ものすごい風で吸い込み始める。
「なんの!」
四人は互いを支え合ってふんばる。
「うまくいけば一気に……」
パフュームはタイミングを図り吸い込まれないように少しずつ近づく。
「あーれー」
「え?」
何かが飛んで行った。
「当然、一番軽いものが飛んで来るでござる」
ポズーイはしっぽを掴む。
怪物はフタを閉めて吸い込むのをやめた。
「アルト!」
逆さまのアルト。目を回している。
「このまま吸い込めば岩と一体化するでござる。出てきてもらおうか。額の君」
冷笑の薫。
「ひたいのきみ……。仕方ないわね」
「薫さん!」
「いいのよ。手を出して千香ちゃん」
「え?」
千香の手を握る。
「飛ばしてやりなさい」
薫は怪物の前へ。
ポズーイが怪物の頭から降りてくる。
「邪魔だな。持っていろシックシク」
ポズーイはアルトを怪物に渡そうと放り投げた。
「風よ!」
「なに!」
吹き抜ける風。
「なわわわー!」
アルトは風に乗る。
飛び上がりアルトを抱くパフューム。
パフュームの腰にあった大きな白いリボン。
光が集まり鮮やかな藤色に変わっている。
「だが!隠者の石よ!」
薫の足元が光る。
「ぐっ…!」
薫は大きな六角柱のクリスタルに閉じ込められた。
「よし!時間をかせげシックシク!」
着地と同時に離れるアルト。
「シック!」
再び頭のフタを開ける。
「ウィンディドライブ!はああ!」
風の塊を投げる。
「シック?」
風を吸い込んだシックシクは風船のようにふくらむ。
「シーック!」
逆流した風を吐きながら飛んで行った。
「か、簡単にやられすぎでござる!」
咲、舞、満がクリスタルにしがみつく。
「な!どけ!」
「どくもんですか!」
クリスタルにみるみる亀裂が入る。
「力が集中しすぎているでござる!これでは回収する前に!」
パフュームの蹴りが飛び込む。
「たあ!」
「ぬお!」
よけて距離をとる。
ポズーイの手にある水晶の光がわずかに弱まる。
「任務失敗なのか!」
カッ
空で何かが光り、落下してきた。
ズドン!
『きゃあ!』
爆風と砂煙。
「なにをしているブラザー!早くミッションを果たせ!」
「兄者!かたじけない!」
ポズーイは薫の閉じ込められたクリスタルを抱えて離れる。
「はあ!」
風で砂煙をよける。
「大丈夫ですか!」
「なに?今の?」
起き上がる咲たち。
「シックワメーケ!」
翼竜のような怪物。
翼を羽ばたかせて飛んだ。
旋回し爆風を巻き起こして飛ぶ。
「はあ!」
風と風がぶつかる。何度も往復してくる怪物。
受け流すたびに大空の木から光が失われ、咲たちの体力を削る。
「だめだ!このままじゃ!」
周りを心配する。動けない。
「え、えくせれんと……。だが、これはハードだ……。おっと」
帽子を押さえてしがみつくベノン。落ちそうになる。
一瞬、動きが鈍る。
「今なら!」
飛ぶパフューム。
「やあ!」
ドン!
腹部を蹴り上げる。
「ノー!叩き落とせ!」
「シックワメーケ!」
尻尾を振る。
「やあ!」
足に集めた風。空中で跳ねる。
「アンビリバボー……。ん?」
下の様子が変わる。
「シーック!」
ひょうたん岩の怪物が戻ってきた。
咲たちに迫る。
「踏み潰してしまえシックシク!」
「シーック!」
「だめ!」
飛んで割って入る。
ズン!
大きな足を受け止める。
「プリキュア!プレスエンドだ!」
さらに後ろから押しつぶそうと飛んでくる。
「くう……!」
またみてね
でぃれくたーずかっと♪
特J
J
※アバン
ふらりと体を揺らし、世界樹を見るワグ。
「計画通りここまで来た。長かった」
「仲間を失うことも計画通りなの?」
フルーティーは不気味な目を睨み返す。
「それはこいつらのことか」
両手から黒い霧。
その霧がベノンとポズーイの形を作り出す。
「どういうこと?」
二人とも息を呑む。
「言わなかったか。我々は元々一つだと」
「じゃあ……」
「そうだ。ベノンもポズーイも私だ」
理解できないことばかり。
「あなた……なんなの?」
パフュームは尚、問う。
「私がなにか、教えてやろう」
ワグは突然体を黒い霧に変え高速で移動、フルーティーの前で再び上半身だけを戻し幽霊のように迫った。
OP♪
「包んでSpiral Flavor」
CM〜
※Aパート
「脅威!バクター・ワグの計画!」
「フルーティー!」
叫ぶパフューム。
覆いかぶさるワグ。
「やあああ!」
ボス!ボスボス!
フルーティーは夢中で拳を振るうがまるで手ごたえがない。
「効いてない!」
そのまま黒い霧がフルーティーを覆い始める。
「わっ……」
「じゃあこれなら!」
※技バンク
リッタッチから輪が飛び出す。顔の大きさほどの輪。
「パフュームフープ!」
大きなハート。サイドに小さなハートが二つずつ。
タンとタンバリンのように枠を叩く。
シャランと鳴る音と同時に大きなハートが輝く。
「プリキュア!サウザンド・フレーバー……」
振りかぶり、突き出す。
「スプライト!」
ハートからたくさんの粒が集まった光の帯が放たれる。
飛ぶようにその場を離れるワグ。
「理解が早いな」
霧の一部が消滅する。
「わああ!」
振り払うようにフルーティーも続く。
※技バンク
リッタッチを手に取る。
リッタッチから輪が飛び出す。顔の大きさほどの輪。
「フルーティーフープ!」
大きなハート。サイドに小さなハートが二つずつ。
タンとタンバリンのように枠を叩く。
シャランと鳴る音と同時に大きなハートが輝く。
「プリキュア!スパイラルハーベスト……」
振りかぶり、突き出す。
「スプライト!」
ハートからたくさんの粒が集まった光の帯が放たれる。
ワグと光の帯の間に黒い妖精が立ちはだかる。
バチッ!
消滅する光。
「あ!」
「十分なパフォーマンスだろう?」
パフュームは同じようなベノンの行動を思い出す。
「ベノンって人がやってたのと同じね。そしてその黒い妖精……」
「そうだ。ついにノウンも完成した」
ワグが手を出すと黒い妖精はその手の上に乗る。
「ノウン?名前があるのね」
「大切なものには名前をつけるのだろう?」
「それが分かっていて、他の人の大切なものを奪おうというの?」
フルーティーは構えなおす。
「そうだ。そうされたくなければ力を手に入れるしかない。お前たちのように」
困惑。力の入っている自分たちを見つめなおす二人。
「確かに私たちは守るために戦ってるけど……」
「あなたは誰に何を奪われるというの?」
「私は弱い。全てを滅ぼす力も、全てを管理する力もない。そんな力をもっているやつらを恐れるほどに弱い」
そんな話を思い出す。
「それって、プリキュアが倒してきた相手?」
「そして、全てが滅んでも管理されても私は消滅してしまうだろう」
「あなたは……」
ワグから黒い霧が立ち上る。
「私はストレスの集合体。生命が受けるストレス。それが私の力であり私自身」
「ストレス?」
ワグの目がどんどん深く光を失っていく。
「考えたよ。そして反する力を利用する道具は完成した」
ノウンの目が赤く光る。地面に降りて鳴く。
「ピィー!」
機械的な声。
泉の郷の草原が茶色く変色していく。流れる水も失われていく。
「大地の力を奪ってるッピ!」
「やめなさい!」
フルーティーが叫ぶと素直に地面を離れ浮かぶ。
「あれ?言うこと聞いた?」
草は枯れる寸前。水はわずかばかりだが流れ続ける。
「後は私自身を高め、扱いきる力。ストレスの世界」
「ストレスの世界?胃が痛くなりそう」
「きっとそんなものじゃ済まないわ」
パフュームは息を呑む。
「私の作り上げる世界は、平和な世界でも戦いの世界でも感情のない世界でもない」
今度は空が暗くなり始める。雲もないのに灰色の空。
「ギリギリで生きながら、ひたすらに心を痛め続ける奴隷の世界」
薄笑いのワグ。
「なんとおぞましい……」
「怖いなんてもんやない……」
「そんなの嫌ッピ……」
震える精霊たち。
「大丈夫。草は踏んでも強く生きるっていうじゃない」
元気付けようとするパフューム。
「ならば水も光も与えず踏み続けよう」
「なんなのよ!命の輝きを馬鹿にしないで!」
フルーティーは怒る。
ワグはノウンの頭をわしづかみにした。
「フィーリングソウルエナジー!」
『え!』
信じられない言葉。
黒い妖精が輝き解けて吸い込まれるように消える。
ワグの白衣が燃え上がるように消滅し全身が黒く包まれる。
手にはガントレット、足にはレガース。全身が中世の鎧のような黒い武装。
顔から頭まで兜のように無骨なマスク。目だけが赤く光る。
長い髪はすべて後ろになびく。そして長い尻尾のようなものまでついている。
まるで黒い竜騎士のロボットのようだ。
「ついに手に入れた!いや、これでまだ半分か。さあ、世界樹の力をいただこう!」
『させない!』
音もなく構える二人の間に割り込むワグ。
振り向くように腕でパヒュームを、尻尾でフルーティーをなぎ払い吹き飛ばす。
地面を水切りのように跳ねて飛ばされていく二人。土煙に消える。
「み、見えなかったッピ!」
「だいぶスマートやけど、さっきのデカイのより強くて怖いで!」
世界樹と根元のチョラピたちに一歩一歩ゆったりと近づくワグ。
「世界樹の力を手に入れたところで世界をあなたの好きなようにはできませんよ!」
警戒するシフォン。
「インフィニティ。私たちがどうやって次元を超えていたと思っている」
「まさか!」
「お前の力を分析した。あらゆる世界に影響を与える力。力を蓄える力。ノウンが目指した最初の機能だ」
跳んで戻ってきたフルーティー。
「はあああ!」
光で覆った拳をたたき付ける。
バン!
受け止めるワグ。
もう片方の手。
バン!
さらに受け止める。
「やあああ!」
力を振り絞って押すフルーティー。
「無駄だ」
上から押し付けるワグ。
「だあ!」
後ろから攻撃にかかるパフューム。
ギュイン。
首が真後ろに向いた。
「うわ!」
驚く。そして尻尾が飛んでくる。
バシッ!
弾かれるパフューム。
「えい!」
その隙に腹部を蹴るが硬い鎧に効果が見られない。
腕を掴まれたまま蹴ったフルーティーはバランスを崩す。
グルンと首が戻る。そのまま持った両手を地面にたたき付ける。
覆いかぶさったまま腕を振りかぶるワグ。
「やあああ!」
全身に光をまとって突進したパフューム。
ドゴッ!
ぐらりと揺らいでバランスを崩す。
「はあ!」
逆立ちをするように足を畳んで両足で蹴るフルーティー。
ゴン!
それでも倒れない。長いシッポがムチのように飛んでくる。
バチッ!
逆さまのまま腕で受ける。吹っ飛びそうなフルーティーをパフュームが受け止める。
二人とも倒れこむ。
飛び上がったワグが勢いをつけて踏みつけてくる。
パフュームはフルーティーを抱き上げて後ろに跳ねる。
「ひゃー!ありがとう」
「来るよ!」
高速で移動するワグ。体勢を立て直す暇もない。
ボッ!
赤い光。
ワグの腕が空を切る。
ザッ
足音。左にリボンを赤く変えたフルーティー。
「そこか!」
体をひねって足を溜める。
「一人……!後ろか!」
気付いてグンと首だけを不自然に回す。
輝く頭上。黄緑色のリボン。
「光よ!」
「上!あの一瞬に二回移動したのか?」
のしかかる大きな光の弾。両手で受ける。
「ぬ!」
はさむように抱き、押しつぶしていくワグ。
さらに藤色に変わるリボン。
「か、ぜ、よお!」
風がさらに押し込む。
「はあ!」
光の弾は押しつぶされ、風ごと消し去られる。
フルーティーのリボンがピンク、ブルー、イエローと立て続けに変わる。
「無理したらダメッピ!」
「プリキュア四人分の力を一気に使う気かい!」
慌てるチョラピとアルト。
祈るように胸の前で手を合わせ広げると、三色の光のハート。
「いっけえええ!」
手を前に出す。同時に飛び出す輝き。飛ぶパフューム。
「くっ!あああああ!」
なんと光の中を掻き分けて進んでくるワグ。
「なんちゅうやつや!」
「怖いッピ……」
近くまで来ると光線の中から体を出し腕を振りかぶる。
フルーティーの隣に飛んできたパフューム。金色に輝くリボン。
「や!」
半球の光の壁。
ズン!
大きく開いた手を止める。しかしすぐにひび割れる。
「やああ!」
さらに銀色に変わるリボン。
「はあああ!」
両腕で押し込むワグ。
ドン!
いくつもの輝きと共にその場が爆発する。
アイキャッチ
CM〜
アイキャッチ
※Bパート
倒れそうになりながらもどうにかバランスを整え着地する二人。
息が乱れる。汗が流れる。
「疲れとるな……」
「力に頼りすぎッピ……」
「せやかて力押ししかあらへんやろ」
「プリキュアの力は心の力ッピ。バランスが合ってないッピ」
「なにか迷うとるんか?」
土煙の中から平然と現れるワグ。
「スピードはなかなかだが、パワーはもうひとつのようだな」
目を丸くするアルト。
「力押しであれかい……。スタミナやバランスっていうレベルやないで」
「……それでもプリキュアを信じるッピ」
前を向いて互いの手を握る。白く輝くリボン。
ワグも両手に黒い輝きを集め踏み切る。
ズドン!
たたき付けられる力。
ワグの両手を片方ずつ輝く手で受け止める二人。
「一体誰があなたを責めて、あなたから何を奪うというの!」
「私たちはそんなこと……しないよ?」
表情崩れる二人。
「私は心の歪みが力であり存在。しかし生命はそれを癒し、解消し、満たされようとする」
ぶつかり合う力、心。
「そんなの、誰だってそうでしょう?どっちも完全になくならないことだって知ってる!」
「でも一生懸命に前向きになって!そうやってバランスとって、みんな生きてるんじゃない!」
押し込まれる力が少し弱まる。
「そうだ。存在ならプリキュアと私は同じバランスの上に成り立つはず」
ぼそりとつぶやくように言う。そして今度は吼えるように言い放つ。
「私と正反対の力を持つプリキュアに救われていた!惨めなことこの上ない!」
マスクに亀裂が入る。
「どうして!」
「そんなの!」
ひび割れるように避けた口。大きく息を吸い込む。
「ガアアアアア!」
声なのか音なのか分からない衝撃。
周囲がえぐれる。
二人は吹き飛ばされ後退するが、踏みとどまり耐える。
ワグの様子が変わる。スマートな鎧のようだった足にするどい爪が生える。
猫背になった背には悪魔のような翼が生え始めた。
「変化してる!」
「止めないと!」
つないだままの手。
※半バンク
二人に集まる光が粒子になって舞う。
光る粒が螺旋状に集まり小さな円になる。
フルーティーフープとパフュームフープが浮き上がり光の円をはさんで筒になる。
つないだ手を上に向ける。筒が二人の腕に入り、つながった手の先だけが出た。
そしてその手にさらなる光が集まる。
『心に実る命の香り!包み込め!』
ダンスを踊るように振りかぶる。
『プリキュア・スパイラル・フレーバー…』
足を踏み出して手を前に。
『アライブ!』
放たれた光から。巨大な光のつる。緑色に輝き伸びるように流れ走る。
三つ編みのように重なり合い葉のようなものがところどころに出る。
ザアア!
輝く葉の集まった先がワグの放つ衝撃を消していく。
「ぐうう……!」
そのまま衝撃と黒い輝きを破ってワグに直撃。
「成長したな。ずっと見ていた。半人前だったお前たちも、もはや十分に伝説の戦士、プリキュアだろう」
抱えるように大きく手を広げる。
バリバイバリ!
押しつぶし砕く。枯れるように消えていく光のつる。
「まだまだ!」
「あきらめない!」
根元から生気を帯びる。
「オオオ!」
畳んだ腕が大砲のように筒状に変化する。
収束する黒い輝き。
シッポを地面に突き刺し、翼を広げ中腰になる。
ゴウ!
砲撃された黒と紫の炎の塊。流星のように走る。
裂かれる焼かれ消滅していく光のつる。
ドオオオン!
「フルーティー!」
「パフュームはん!」
「ダメです!」
出て行こうとするチョラピとアルトを抱え世界樹の根の陰に隠す。
ゴオッ!
熱風が駆け抜ける。
焼け焦げた一帯。
大地に出ている世界樹の根も欠け、炭になり砕ける。
そっと顔を出す。
倒れるプリキュア。
光が漏れ出している。
二人とも動かない。
そして変身が解けた。
「無策のままなら破れていた。だが、完成したノウンをまとった私は止められん」
「みのり!」
「千香はん!」
止めるシフォンを振り切って駆け出す。
シフォンとフィーリア王女も続く。
「世界樹を傷つけてしまった。ふむ。これ以上、待っても実は付かないか」
腕を組み思案する。もうチョラピたちも眼中にない。
「まあ、いい。世界樹の花も失われた魂を呼び戻すほどの力があると聞く」
羽ばたかない翼。しかしふわりと浮く。生い茂る世界樹。咲く花。
「さあ、その力をよこせ!」
全身を広げる。吸い込まれていく光。しおれる花。
「花が、枯れていく……」
絶望するシフォン。
「あかんのか……」
アルトは地面を叩く。
「フィーリア王女!」
チョラピの声。
「大丈夫……です……」
フィーリア王女の体が透ける。
「フィーリア王女は世界樹の精霊ッピ!このままじゃ消えちゃうッピ!」
シフォンはワグを見つめる。
「仕方ありません。私があの人ごとどこか遠いところに飛びます。すべての力を使えば……」
「そんなのダメに決まってるでしょう」
立ち上がる千香。
「千香ちゃん?何を……」
途中でシフォンの頭を一撫で。
みのりもふらふらと世界樹の方へ歩いていく。
上空ではワグの様子が変わる。
自らの体を確かめるように手を見て握るように動かす。
「素晴らしい……」
黒い鎧のような体に黄金のラインが入る。
「これで完成だ」
光を失っていく世界樹。
みのりと千香は世界樹の張り出した根に足をかけ幹にしがみつく。
「あの人たち、プリキュアの力を奪っていって使ったでしょう。同じことができるかも……」
「今の私たちにはそれくらいしかできないかもね」
二人とも目に力がない。
「そんなことしたら本当に栄養になってまうがな!」
驚くアルト。チョラピが震えだす。
「そんなの!そんなのダメッピー!」
輝くチョラピ。
「なんだ?」
ワグも気付く。
しかし世界樹に変化はない。
「再び花が咲く様子も無いが……」
透けていたフィーリア王女の体だけが戻る。
「精霊の力を集めてるんでしょうか……」
起き上がるフィーリア王女。
「いけません……。これは太陽の泉の力ですね?」
「海の……」
みのりは咲たちの話を思い出す。
「でもフィーリア王女が……」
「あなたがこの力を使うには負担が……」
「それでもいいッピ!」
フィーリア王女にしがみつく。
「やっぱり私が……」
シフォンはワグを見る。
「だめよシフォンちゃん……」
「私たちが……」
「アカン!アカンで!みんなずるいやないか!」
アルトが叫ぶ。
「もはやただの木か。どちらにしろ完全に消し去っておくべきだな。まずは……」
ワグが手を掲げ引っ掻くように振るう。
みのりたちをめがけ、数本の閃光が飛ぶ。
「いけない!」
シフォンが甲羅のような光の壁を作る。
ドガッ!
壁は砕け土煙が舞う。
ワグは背を向けた。
「世界を不安に陥れる。疑心暗鬼の世界へ」
空が暗くなる。
その影響はまず、スウィーツ王国。そしてラビリンス。
暗く、そして道や建物の影で何か黒いものが揺らめく。
夕凪町では海の色が暗くなる。
かすかな音。
垂れ下がった木の枝。枯れた小さな花が一つ。
みのりと千香は吹き飛ばされたはずなのにならんでならんで座っていた。
倒れて透けているフィーリア王女にしがみついて尚も光を与えるチョラピ。
「チョラピ……」
震えるチョラピをそっとなでるみのり。
霞む視界に何かが動いているのが見える。近づいてくる。
ボロボロのシフォン。それを担いでいるアルト。
「わいは妖精言うても何の力もなくて足手まといになってばっかりやからな……」
自分自身も傷だらけだ。
「こんくらいせえへんと!みんなでおったらまだわからへん!」
「アルト……」
何かが聞こえる。
みのりと千香は目を合わせる。
どこからか声が聞こえる。
「千香ちゃん……」
「みのり……みのりちゃん……」
垂れ下がった枝。枯れた花。
その周りの小さな花が光る。
僅かに残った若葉から聞こえてくる声。
「聞こえる……」
「大切な人の声……」
でぃれくたーずかっと♪
特K
K
※アバン
オマケ
スピリットフルーティー
エンジェルパフュームは描けなかった…orz
でもそっちはだいたい想像できるよね(`・ω・´)