ふたりはプリキュア Spiral Flavor
※注意・プリキュアのキャラは歳をとらない!と思っている方はご注意ください。
※この物語はフィクションのフィクションであり、実際のプリキュアとは関係ありません。
※駄文を読むときは部屋を明るくして画面から離れて読んでね。
※2010/7/21開始
※8月末日全体的に修正
※2010/10/6完結
@─A─B─C─D─E─F─G─H─I─JーK
特G 特J 特K
拍手返信
〜番宣〜
私、日向みのり!中学二年生!
もうすぐ夏休み!全力でノリノリナリ!
お気に入りの場所で突然出会った小さな精霊。
変な人が現れて!違う世界に飛ばされて!
誰がプリキュア?私もプリキュア?
新番組!ふたりはプリキュア Spiral Flavor!
7月21日(水)よる8時30分〜放送開始!
@
※アバン
木漏れ日の一つ一つが火傷しそうなほど強い。
それでも草木の呼吸は山の空気に優しさを与えている。
ずっと昔から変わらない。耳の裏の三つ編みと後ろに流した髪をなびかせて。
「おりゃー!」
自転車を漕いでトネリコの森の奥へ。
大空の木。
姉は中学二年生の春にここで親友に出会ったと言う。
そんな出会いも期待してみたが、結局夏になってしまった。
もちろん友達はたくさんいる。しかしあの二人は特別だったように思う。
明日から夏休み。
学校が終わったばかりにもかかわらず、吸い込まれるようにここへ。
短い時の移りなど感じさせないほど雄大な木を見上げる。
「あ、いけない!」
アイスモナカが溶けてしまう。
大空の木には空洞がある。
竹の網で仕切られていてまるで神様の住処のようだ。
その目の前まで大きな根が地表に出てどっしりと全体を支えている。
そこに座ると風に乗って山の声が聞こえてくる。
「ふぅ」
一呼吸置いてアイスの袋を開けようとした。
カッ
不意に神様の住処が光った。
放射状の光に吹き飛ばされそうになる。
「きゃー!」
もふっと顔に何かが当たった。
慌てて両手で引き離す。
ソフトボールのグラブほど。ぬいぐるみのような動物。特に丸まった耳が大きい。
「ピィ?」
OP♪
「包んでSpiral Flavor」
CM〜
※Aパート
「伝説の戦士!プリキュアを守るプリキュア!」
「ミミンガだ!」
何年か前に噂になったことがある。トネリコの森にはミミンガという珍獣がいる。
大捜索をしたことがあったが結局は見間違えのようだった。
しかしここにそれらしきものが現れた。
「ミミンガじゃないッピ!」
「しゃべった!」
手に持ったまま驚いていたが、どこかで見たことがあるような気もしていた。
座っている木の根。隣に置く。
珍獣は急に力なく座り込んだ。
「おなかがすいたッピ……」
手には解けそうなアイスモナカ。
「こういうの食べても大丈夫なのかな?」
半分に割ったアイスモナカを渡す。
不思議そうにそれを受け取って食べる珍獣。
「冷たいッピ!」
身を震わせる珍獣。
「アイスだからね」
「でも、甘いッピ〜」
なにか喜んでいるようだ。
もう半分を食べる。
「私は日向みのり。夕凪中学二年生。あなたは何者なの?」
「チョラピは恵みの精霊ッピ!」
「めぐみ?」
「大地と大空から生まれる自然の恵みを届ける精霊ッピ!」
ハンカチでチョラピの口を拭く。
「その精霊さんがどうしてこんなところに?そこに住んでるの?」
大空の木の穴を見上げる。柵までどこかに吹き飛んでしまったのだろうか。破片も見当たらない。
「違うッピ!本当はこんなことしてる場合じゃないけど、どうしたらいいかも分からないッピ!」
「どういうこと?」
「みのりはプリキュアを知ってるッピ?」
「え?ぷりきゅあ?」
どこかで聞いたことがある響き。動きが止まる。
「知ってるッピ?よかったッピ!」
首を空に向ける。木のかさの裏が見える。
夢の中の出来事のような記憶。今考えると不思議なことがたくさんあったあのころ。
「ううん、知らないと思う。たぶん」
「どういうことッピ?」
「聞いたことがあるような気がするけど……」
みのりは自分でもよく分からない。
「プリキュアは伝説の戦士ッピ!この世界もこの町もプリキュアが救ったッピ!」
「伝説の戦士?この町って……」
夕凪町にそんな大きな事件があったと聞いたことはない。
「チョラピはプリキュアに会いに来たッピ!夕凪町にプリキュアがいるって聞いてきたッピ!」
「伝説の戦士が夕凪町に?誰なの?」
もしかしたら。そんな思いに気がはやる。
鼓動と期待。
「それは分からないッピ……。聞く前に泉の精霊たちは眠らされてしまったッピ……」
悲しそうにうなだれるチョラピ。
「え?」
一陣の風。
ザッ
靴音。そして声。
「やあ、泉の精霊くん。探したよ。もう少しのところで見失うなんて危ない危ないデンジャラス」
この暑さの中、スーツの上にグレーのコートを着ている紳士風の男。
ソフト帽をとると、黒髪だが外国人のような顔立ち。
病的なほど白い顔をしている。
「なんなの?」
チョラピは驚いて震え始める。
「泉の郷をまるごと眠らせたやつらッピ!チョラピはなんとか逃げてきたッピ!」
「ううん。ユーは二つほど勘違いしている」
紳士風の男は帽子を右手被りなおし、左手は前に出して人差し指を振る。
「どういうことッピ!」
「眠らせたのは泉の郷だけではない。プリキュアに係わる妖精の世界をもう一ついただくことになっている。これはユーたちにはあまり関係ないけどね。ナッシング」
簡単に言う男。
「ひどい!」
みのりは悪いやつだと確信する。
「そしてもう一つ、ユーは逃げてこられたんじゃなく逃がしてあげたのさ」
「ッピ?」
男はさも自身が優れた者のような態度で両手を広げて話す。
「半人前とはいえ、泉の力を継いでいる君だ。必ずプリキュアのいる町に向かい、プリキュアだった者に危険を知らせに行くだろうと思ってね。アンダスタン?」
「ッピ!」
「つまりプリキュアのいた町に案内してもらったのさ。途中で見失いそうになったけどね。セーフセーフ」
ショックを受け涙をこぼすチョラピ。
「そんなッピ……」
チョラピを拾い上げ抱くみのり。
「あなた、何者なの?」
よくぞ聞いたとばかりに両手を胸の前で交差させてから大げさに広げる。
「私はラグナラボの研究員にして偉大なる錬金術師の助手、紳士ベノン!」
間違いなく悪いやつであり、変な人だ。
みのりはどうにかチョラピを連れて逃げようと考える。
「ヘイ、ユー!」
ベノンの指は真っ直ぐにみのりを指す。
「わ、わたし?」
「ユーはもしかしてプリキュアかい?」
「ち、違います」
本当に違う。みのりは全力で否定する。
「口ではそう言っても、この水晶があればわかるのだよ!クリスタル!」
コートの内側からなにやら占い師が使うような水晶球が出てきた。
「だったらいちいち聞かないでよ!」
みのりは怒り出した。ベノンは聞いてない。手に持った水晶を覗く。
「おお、素晴らしい魂の器だ!しかし、戦いを勝ち抜いてきた戦士ではないな。ノットウォーリアー」
ぶつぶつと何かを言い続けている。
「みのり〜」
チョラピは不安そうに声を出す。
「まだいたのかね小さい精霊くん。君にウロチョロされるのは面倒だ。消えてしまいなさい。イレイザー!」
ベノンは再びコートの中に手を入れた。
カッ
再び大空の木の穴が光る。
「なに!」
光に飲み込まれる一同。
「また光った!きゃああ!」
水の中のように流れる光。
その先に誰かがいる。
鏡に映った自分のようでいて、違う。
すれ違うように、近づいて離れた。
どこか分からない丘の上。草花がきれいに並んでいる。
みのりは目を覚ました。チョラピはまわりを見てキョロキョロしている。
「ここはどこ?」
「わかんないッピ!」
「夢じゃなさそうだけど。そうだ!さっきの人は?」
「いないッピ」
立ち上がる。
広い場所。丘の上か。
「みのりを巻き込んでしまったッピ……」
しょんぼりするチョラピ。
「いいの。ほっとけるわけないし。ここまで来たら全力でノリノリナリ!」
ガッツポーズで奮い立たせる。
下の方に町が見える。
「とにかくあの町まで行ってみよう」
チョラピを抱き上げて丘を降りる。
空気がいい。なぜか懐かしさも感じる。しかし見た目はまるで覚えがない。
「建物は外国じゃなさそうだけど……、夕凪町とは全然違うなあ」
商店街の入り口だろうか。
アーチに書いてある幸せそうな名前。
「なんか書いてあるッピ」
「クローバータウンストリート?」
アイキャッチ
CM〜
アイキャッチ
※Bパート
町並みは整備されていて綺麗だ。新しさを感じる。
しかし人々ははるか昔から変わっていないような温かみがある。
「ピ〜」
「ちょっと人に聞いてみるから、ぬいぐるみのフリしてて」
「わかったッピ」
主婦らしきやさしそうな女性。みのりの母くらいだろうか。
身につけているエプロンには親しみを感じる。
「すみませーん!ちょっとお尋ねしたいんですけど、ここってどの辺りなんですかね?」
突拍子もない話に驚く女性。
「どこってクローバータウンだけど?あなた中学生?見ない制服ね」
「あの、ちょっと迷っちゃって……」
「そう。じゃあ、交番に案内したらいいかしら?」
「お願いします」
頭を下げるみのり。女性はにこにことしていた。
そのころ。
「こ、ここはどこだい?」
円形の大きなくぼみ。周りは階段のようになっている。
「公園?ここは舞台?ステージ!」
周りにいた人々は突然現れたベノンに驚く。
コートの内ポケットから光が漏れる。
「む!近いぞ!ニアアアア!」
怪しげで危ない様子。人々も少し離れる。
「ちょっと!急に出てきてなんなの?」
ポニーテールの女性がベノンに詰め寄る。ここで何かをしていたようだ。
ベノンはそんなことは気にしない。地面に置かれた携帯型の音楽プレイヤーと接続されたスピーカーを見る。
「ヘイユー!そこにあるのは大事なものかい?」
「私のじゃないけど、大事なものよ。それが何?」
「それはいい!大事なものほどパワーがストロング!」
ベノンはまるでマジックのようにコルク栓のしてある試験管を手の中から出した。
中には赤い液体が入っている。
栓を抜くと赤い液体は勝手に動き、一直線にスピーカーに向かっていく。
「召喚!シックシク!我が呼びかけにこたえよ!」
大きな光の柱が登る。スピーカーは大きな手足を生やしたロボットのような怪物になった。
「あの光はなに?」
立ち上る光を見たみのり。
「なんだか不吉な気配ッピ!」
みのりは走り出す。
「あっ!ちょっと!」
「すみません!ありがとうございました!もう大丈夫です!」
みのりは一度立ち止まって深々と頭を下げたあと、再び走って行った。
現場に着いたのは若い女性。
ぴょんとしたピッグテール。
「ミユキさん!」
「ラブちゃん!これって!」
「うそでしょ?ナケワメーケ?」
怪物は名乗るように胸を張り雄たけびを上げる。
「シックシクー!」
その場所からは人々が逃げるように走ってくる。
みのりはその波を逆走して現場に着く。
「なにあれ!」
「みのり!あそこを見るッピ!」
「あ!さっきの変な人!」
ベノン、コンポのような怪物。そして女性が二人。
「なんだかちょっと違うみたいだけど、とにかく逃げないと!」
ラブはミユキの手をとって踵を返す。
ひときわ光るベノンの水晶。
「ビンゴ!ユー!逃がさないよ!プリキュアハート!」
「シックシク!」
怪物は飛び上がってラブたちの前に着地し、立ちふさがる。
「プリキュア?私?」
ラブは再び振り返りベノンを見る。
「隠者の石よ!」
ベノンの持った水晶が光る。
ラブの足元が同時に光る。
ラブはとっさに握っていたミユキの手を離した。
「ラブちゃん!」
「きゃあああ!」
ラブは大きな六角柱のクリスタルに閉じ込められた。
「エクセレント!素晴らしい力だ!」
ベノンの持った水晶が輝く。
「あああ!」
ラブはクリスタルの中で体力を奪われ苦しむ。
「ラブちゃん!なんなのこれ!」
クリスタルの表面を叩くミユキ。
「プリキュアの持つ心の強さをゲットするのさ!」
高笑いするベノン。
「なんとかならないの?」
一縷の望みをかけてチョラピに聞くみのり。
「わ、わかんないッピ!」
「わかんないって?」
「もしかしたら、みのりもプリキュアとして戦えるかもしれないッピ」
「なら、やるよ!」
チョラピはみのりの腕の中から地面に降りる。
迷いなきみのり。しかしチョラピは迷う。
「でも、チョラピはまだそれだけの力を持ってないッピ!だからもし半端なプリキュアになってみのりが負けちゃったら……」
足元にテニスボールが転がっている。
「そんなのやってみなくちゃわからない!」
みのりはボールを拾った。
大きく振りかぶって投げる。
ベノンの持っていた水晶に当った。
「な!」
水晶が落下する。ベノンは慌てて地面に滑り込み、落ちる前にとる。
「ユー!なにをするんだね!」
「あんたこそ何してるの!ひどいことして!」
「ユーにはこのグレイトさが分からないのさ!シックシク!ゴー!」
「シックシクー!」
怪物がみのりに向かってくる。
「みのり!この町の命の力を感じるッピ!」
「この町の命の力?」
よくわからなくてもすぐに思い出す町の名前。
「クローバー!」
「クローバーの恵みを受け取るッピ!」
丸まった両耳が斜め上に伸びる。
チョラピが光る。
怪物はひるんだ。一歩また一歩と退いていく。
「ホワット!このパワーは?」
ベノンも光を受けて後ずさる。
チョラピの耳と耳の間から大きなパネルのついた小さなモバイルが現れた。
「リッタッチッピ!」
「りったっちっぴ?」
「ピはいらないッピ!そんなこと言ってる場合じゃないッピ!」
みのりの手の中に納まる。
走り抜ける鼓動。
※変身バンク
「プリキュア!フィーリングソウルエナジー!」
天に掲げて叫ぶとみのりを光が覆う。
パネルをタッチすると四葉のクローバーが画面の上に飛び出した。
息を吹きかけるとクローバーが回転し輝く。
緑色の風がみのりを包む。
胸元には真っ白の大きなリボン。肩からボディ、スカートまで明るい緑色。
フリルは薄い黄色がなびく。
同じ緑を基調としたアームウォーマーにレッグウォーマー。
インナーのアームカバーとレギンス、ブーツは濃いピンク。
両膝とベルトの中央、手の甲には赤く丸いリンゴのポイント。
イヤリングにはさくらんぼのように小さく。
髪はオレンジ色に染まる。三つ編みはそのままに、髪留めは一枚の桜の花びら。
後ろ髪は少し伸びて垂らしたまま。
少しだけ頭の上に持っていって花の髪留めで留める。
小さく双葉のようにぴょこんとはねる。
リッタッチは腰元のケースに収まった。
「緑の四葉は命のしるし!世界を育む実り!キュアフルーティー!」
大きく手を天にかざす。はじける光。
「いざ!成敗なり!」
天にかざした手をベノンと隣り合ったシックシクに向ける。
「プリキュア?ニュープリキュア?アンビリーバボー!」
帽子を天辺から手で押さえ、顔を大きく前に出して驚くベノン。
「シックシクー!」
向かってくる怪物。
「えええい!」
フルーティーは高くジャンプして蹴った。
巨大化した音楽プレーヤーに浮かんだ顔。蹴りが直撃する。
「シーック!」
倒れそうになる怪物。しかし踏ん張った。
「シック!」
スピーカーの手を払う。
「たあ!」
後ろにジャンプしてよけるフルーティー。
「新しいプリキュア!そうだ!ちょっと!これどうにかならない?」
ミユキは臆することなく不思議生物のチョラピに話しかける。
クリスタルの中で弱っていくラブ。
「あの水晶を遠くに離すしかないッピ!それにはキュアフルーティーが勝ってくれないと……。でも、足りないッピ……」
「足りない?どういうこと?」
フルーティーと怪物は互角の戦いを繰り広げているように見える。
しかし体格差のせいかフルーティーの攻撃が効いているようには見えない。
「シーック!」
胸元のボリューム表示が上がり、手のスピーカーが震える。
ゴオオッ!
大きな音に身動きがとれなくなるフルーティー。
そして苦しんでいたラブがクリスタルの中で崩れ落ちた。
「ラブちゃん!しっかりして!」
クリスタルを叩くミユキ。
「残念だけど無駄さベイベー。見たまえ」
ベノンの持つ水晶が鮮やかなピンク色に変わる。
「そんな!」
「プリキュアの力はゲットさせてもらった!もう用はない!その未熟なプリキュアは倒させてもらおう!」
怪物は大きなスピーカーの手を振りかぶり殴りかかる。
フルーティーはガードするが吹き飛ばされてしまう。
「きゃああ!」
チョラピ、とクリスタルに閉じ込められたラブの近くに落下するフルーティー。
「キュアフルーティー!」
叫びにも似たチョラピの声。
「大丈夫……」
ゆっくりと立ち上がる。しかしその身は震えている。
「こんなことで、あきらめない!」
クリスタルがにわかに輝く。
中でラブがつぶやく。
「あきらめない……そう、プリキュアは絶対にあきらめない!」
クリスタルの輝きがフルーティーに移る。
「ホワッツ?プリキュアのパワーはすべて回収したはず!なんというハート!これがレジェンドウォーリアーか!」
フルーティーの胸にある大きな白いリボン。
「チェンジ!ピーチドライブ!」
光が集まり鮮やかなピンク色に変わる。
「うぬ!ゴー!シックシク!」
「シックシクー!」
突進してくる怪物。
「やああ!」
フルーティーは真正面から怪物のボディを光る拳で打ち抜いた。
ドン!
「シッ……」
ズン!ゴン!ゴロゴロ……
怪物は真っ直ぐ吹き飛んで地面に激突し派手に転がる。
「ノー!」
頭を抱えるベノン。
「すごい……」
フルーティーは自分の両手を見る。
「今なら倒せるッピ!」
「うん!」
※技バンク
リッタッチを手に取る。
リッタッチから輪が飛び出す。顔の大きさほどの輪。
「フルーティーフープ!」
大きなハート。サイドに小さなハートが二つずつ。
ピンクの小さなハートが一つ光る。
フルーティーは反対側を掴む。
タンとタンバリンのように枠を叩く。
シャランと鳴る音と同時に大きなハートが輝く。
「プリキュア!スパイラルハーベスト……」
振りかぶり、突き出す。
「スプライト!」
ハートからたくさんの粒が集まった光の帯が放たれる。
怪物に直撃。光が包む。
「はあああ!」
輪に腕を通し手首の辺りで回すフルーティー。
ピンク色の光が竜巻のように昇る。
「シーックシク……」
怪物は浄化され元のプレイヤーとスピーカーに戻った。
「オーマイガー!だが、プリキュアの力はいただいた!アディオス!」
ベノンは飛び上がるように一瞬でどこかへ消えた。
同時にラブを覆っていたクリスタルが砕ける。
「ラブちゃん!」
ミユキが寄り添う。
「大丈夫ですか?」
駆けつけるフルーティー。
「うん、これくらいじゃ負けないよ。ダンスやってるからね!」
立ち上がる。顔色はよくない。しかし笑顔。
「いったいどうなってるの?」
ミユキが尋ねる。
「わたしもまだ、なにがなんだか……」
「あなたたちはプリキュアッピ?」
チョラピは真っ直ぐに問う。
「わたしは違うけど、ラブちゃんはそうだった。6年くらい前かな?」
「6年前?」
姉のまわりに不思議な出会いがあふれていたときだったと思う。
「私は桃園ラブ。キュアピーチ」
「キュアピーチ?」
とまどうチョラピ。
「どうしたのチョラピ?」
「違うッピ!知らないッピ!」
『え?』
みんなの声がそろったときだった。
キュアフルーティーとチョラピの体が金色に輝き始め少しずつ浮かび上がる。
「やっぱりここは違うプリキュアの世界ッピ!」
「え!え?じゃあこれって、夕凪町に戻るの?」
「たぶんそうだと思うッピ!」
ラブが顔を上げて呼びかける。
「あなたの名前は!」
「私は日向みのり!キュアフルーティー!」
「これからたくさん辛いことが待ち受けているかもしれないけど!」
「大丈夫!あきらめないよラブさん!」
「頑張って!幸せゲットだよ!」
輝きと共にキュアフルーティーとチョラピは消えた。
「きゃあああ!」
変身は解け、みのりは光の中を漂う。
「あれ?」
すこしはっきりと見える。黒いセミショートの女の子。
「あなたは……だれ?」
向こうも同じように口を動かしているが聞こえない。
ボシュ
大空の木から光と共に飛び出るみのり。
「えい!」
カエルのように着地。
「ッピ!」
後から出てきたチョラピがみのりの頭に直撃する。
前のめりにコケるみのり。
「あたた……。あ!帰ってきたんだ!」
空が赤く染まりかけている。
「なんだかよく分からないことになってるッピ」
「こっちのセリフ。とにかく帰ろう」
「チョラピも?」
「当たり前でしょ。でもみんなに見つからないようにね!」
「わかったッピ!」
自転車のカゴに入るチョラピ。
「本当に分かってるのかな。まあ、いっか」
みのりは大空の木を後にした。
ED♪
「ガンバリードでビートハート」
※Cパート
夕日の海岸線。自転車を押して歩く。
海を見つめていた人がこちらを向く。
「みのり?どうかしたの?……これって……」
カゴの中のチョラピは動かない。
「ミミンガの人形作ってる人がいて!もらったの!」
強引な説明。
「そう……」
「お姉ちゃんこそ、大丈夫?」
いつも有り余るほど元気な姉が疲れきっているように見える。
「うん、ちょっといろいろあってね」
「和也さんとケンカでもしたの?」
夕日が当った顔。さらに赤くなった。
「ナマイキなこと言っちゃって!あんたにも素敵な出会いが必要ね!」
「素敵な出会いならあったよ」
「え?みのりが恋?あらら……」
「そういうんじゃないよ」
恥ずかしがる様子もない。それでも笑顔をしている。
「困ったことがあったら言うんだよ?」
「え?」
「まあいいや。かえろうか」
「うん!」
姉妹は食欲をそそる香りの漂う家に帰っていった。
予告
動物がしゃべった?変な人!知らない世界!深呼吸!リフレッシュ!
え?私があのプリキュアになれるの?
絶対に救ってみせる!あのときのプリキュアのように!
次回!
「もう一つの世界!さらなる新しいプリキュア誕生!」
またみてね
A
※アバン
純白の壁の陰に何かが潜んでいる。
「芸能界とかは分からへんからなあ……もしそうやったら困るわぁ……」
小さな生き物がつぶやく。
「でも、きっとここやで……。お巡りさんやなかったら、白衣の天使にでもなっとんで……。四人もおったんやし!」
病院の玄関口から出てきた看護師と桃色の学生服を着た少女。
「わざわざ来てくれてありがとうね。主任なんて、本当にたいしたことじゃないのに」
「いいえ!お世話になった人の昇進ですから!」
少女は病院を見上げる。
「それに、目標です!」
「そう言ってくれるとうれしいわね。でもときどき他の事も夢見てない?」
ドキンと心臓の音。照れるように笑う。
「で、でも、そっちは将来の夢じゃなくて夢の中っていう感じなんで……」
「あら、そうなの?」
様子を見続ける小動物の影。
「あの人はどうやろか……」
「あー!」
子供の声が響く。
影は驚いて飛び跳ねる。
「変なのいるよ!」
「まあ、リスかしら?」
子供とその親だろうか。小動物は慌てて逃げる。
看護師と少女の前を横切った。
「まあ、敷地内に動物が?」
「まかせて!」
走って追いかける少女。黒いセミショートが風を切り、角を曲がって見えなくなる。
「千香ちゃん。あんなに元気に走れるようになったのね……」
息を切らせて壁に張り付く小動物。
「使命を果たすまで捕まるわけにはいかんのや……」
角から様子を窺うように頭を出す。
後ろからの気配に気付かない。
影が小動物を覆った。
「はっ?」
「捕まえた!」
少女は両手で小動物を捕まえて持ち上げた。
「怖がらなくても大丈夫だよ。でもね、病院にキミがいるとよくない体の人もいるの。分かってね」
小動物は口を押さえている。
背中には風呂敷のようなもの。
「なんだろうこれ。ご主人さまのこと分かるかな?」
少女は小動物の背中の包みをはずした。
「アカーン!」
「え?」
OP♪
「包んでSpiral Flavor」
CM〜
※Aパート
「もう一つの世界!さらなる新しいプリキュア誕生!」
「しゃべった?」
「しもた!」
また自分の口を塞ぐ小動物。
少女は小動物を降ろす。目線をあわせる。
「しゃべる……リス?」
「リスやない!フェレットや!……ちゃうわ!妖精さんや!」
一人で忙しそうにまくし立てている。
「バレてもうたんはしゃあないわ。内緒にしといてんか。やならいといけないことがあんねん」
「やらないといけないこと?」
「せや。ワイはプリキュアを探さないといかんねん!」
拳を握るようにして胸を張る。
「プリキュア?」
「正確にはプリキュアだった人や。悪いやつらがプリキュアの心の力を狙っとるんや。それを教えてどうにかせんと……」
「プリキュアが、狙われてる?」
「千香ちゃん?」
先ほどの看護師が来た。
「アカン!」
妖精さんが焦る。
少女は角から出た。
「あ、なんか外に出て行ったみたいですよ。見失っちゃいました」
「そうなの。それならいいけど」
「じゃあ、私、帰りますね。さよなら」
「はい、さようなら。またね」
少女は壁の影で妖精さんを拾い上げ、胸に抱えて裏門まで走り抜けた。
「ごめんね、ちょっとだけ静かにしてて」
そのままとことこと走る。
「あんまり人に見られない方がいいよね?」
人通りの少ない道。歩きながら話始める。
「ほんま感謝しますわ」
「私は森田千香。四つ葉中学の二年生」
「わいはアルト。スウィーツ王国から来た癒しの妖精さんや」
「スウィーツ王国……」
まったく想像もつかない世界。アルトのような生き物がいっぱいいるのだろうか。
「それでプリキュアだった人が狙われてるってどういうこと?」
「あんさん、プリキュア知っとるんかいな?」
抱えられたまま首をひねって千香を見上げる。
「よく分からないけど、ヒーローみたいなものでしょ?私も元気付けてもらったことあるし」
「プリキュアってのは伝説の戦士や。それはそれはごっつう……」
拳を握って演説するように語るアルト。
「プリキュアがすごいのは知ってるよ」
「この町、いやあらゆるパラレルワールドを救っとんねんで?」
「え?パラレルワールド?すごい!」
突拍子も無い話を信じる。抱えている存在が何よりの証拠。
「そんでな。だいたいの勤めは随分前に終わっとるねんけどもや、また悪いやつが出てきてな」
「悪いやつ?」
思い出す。
塔のような体にアンテナの手を持った怪物。
「あるときスウィーツ王国の国民はどういうわけかみんな突然眠り始めてしもたんや」
「眠り?目を覚まさないの?」
頷くアルト。
「わいを含めていくらか残ったんやが、あやしいやつに捕まってもうた。そんでプリキュアの居場所を教えろと言ってきたんや」
「どうするつもりなんだろ?」
「なんでも心を奪うとか言うてたんやけど、ようわからん」
「心を奪う?大変じゃない!」
「せやな。そんでなんとか、ある方の力を借りてここまで来たんやが……」
いつの間にか森のようなところに来ていた。
「どこやここは。人気がない方がええけども限度あんで」
「いつの間にかこんなところに……。そういえば昔、絶対あたる占いの館があったのに突然消えたって噂の場所だ……」
「わいは怪談はアカンで」
震えるアルト。
「プリキュア……。心を奪うなんて絶対させない」
千香はアルトの震えを止めるように抱きしめる。
「そら、たのもしいわ。ほんなら案内してや」
立ち止まって抱えていた手を伸ばし正面からアルトを見る。
「案内?どこにいるかなんて知らないよ?」
「なんやて?知ってるんやないの?」
「ヒーローの正体は謎なのが普通でしょ!それよりアルトが知らないほうがおかしいんじゃない?」
「わいも細かいことは教わっとらんのや。知っとったらウロチョロしとらんがな」
「なに!?」
突然、後方の一本の木から太い声が聞こえてきた。
「まさか、お主がプリキュアの居場所を知らんとはな……」
バサリと木がめくれる。マスクに頭巾で黒ずくめの男。
行動も姿も忍者そのものだ。
「あなた誰なの?」
飛び上がり宙返りして着地、手を前に出してポーズを決める。
「ふん!仮にも忍びであるこのポズーイがやすやすと名乗るわけがなかろう!」
静まり返る。アルトは地面へ下りた。
「お約束やな。ウケへんで」
「この調子でプリキュアの心を奪うとか解説してくれたんだね……」
「せや。軽い口で助かったわ」
あきれた目で見つめる千香とアルト。
「くっ……!だが、ここまで唯一時空を越えて逃げたお主を付けてきたのだ!おかげでこの町にプリキュアがいるということまではつかめたでござるぅ!」
「なんやて!」
今度は大げさにアルトが驚く。
「なんかどっちも間が抜けているような……」
「そんな、殺生やで千香はん」
ポズーイは手品のように丸い水晶を出す。
「我らがナグナラボの技術の結晶。近くにまで行けばこの水晶が反応するという。お主はどうだ?」
「なにあれ?」
「仰山変なアイテム持ってんねん。ラグナラボやて?」
輝く水晶。
「いい輝きの魂を持っているが、違うようだな。では、用のない妖精には消えてもらうでござる」
「なんやて!」
「そんなこと……」
森がざわついた。
そして全体が光る。
「なにごと?」
うろたえるポズーイ。
「あのお方やろか?」
「あのお方って?」
「わいを助けてくれた方やが、力のコントロールで無理しとる!」
中に浮く。
カッ
光に流され飲み込まれる。
「え?きゃああ!」
光の流動。
自分の影のようなものが目の前にある。
一瞬ですれ違った。
広大な青空。砂地。
ぼーっと立ち尽くしている自分自身に気付く。
「あれ?森じゃない?」
水の音がする。
「川原?」
潮風のにおい。
「川やないな」
「うん。海だね」
海風に揺れる一人と一匹。
「海?どこ?四つ葉町じゃない!」
辺りを見回す。
広大な海と後ろには防波堤。登ってみる。
斜面の多い町並み。山も見える。電車の音が聞こえる。
「どこなの?」
「いつかクローバタウン行ったろうと思て勉強しとったのに!なんでやねんな!」
両手を頬に当てて絶望するアルト。
「深呼吸!リフレッシュ!」
大きな声を出して深呼吸。アルトもそれにならう。
「あの変な人もいない。助かったのかもしれないよ。まだ、なんとかなりそうな場所だし」
「千香はん、冷静やな。たのもしいで」
「綺麗な場所……」
水平線。海、山。空。
「せやな。生き物の力を感じるわ」
落ち着いた二人。
「とりあえず駅に行けばなんとかなるかな?」
ゆっくりと歩き出す。
アイキャッチ
CM〜
アイキャッチ
※Bパート
少し離れた浜辺。
おじさんが海の中の影と竹筒のようなものを見つけた。
何事かとしばらく様子を見ていると、全身黒ずくめの人間らしきものが浜辺に上がってきた。
「う、海坊主?」
「だれが海坊主だ!」
くわっと目を見開いて抗議する男。
「あんた、ここは遊泳禁止だよ」
「好きで泳いでいたわけではないわ!よりにもよって海の真ん中に強制転送されるとは!何者の仕業か……。む!」
また手品のように水晶を出す。水晶は光を放っている。
「近いぞ!向こうか!」
ポズーイは走っていった。
「変な趣味が流行ってるのか?」
おじさんはきょとんとしていた。
電車が駅に着く。
大きなバッグを肩にかけた女子大生が二人降りてくる。
ハーフパンツでラフな服装。日焼けをしている。
「あー!帰ってきた感じがする!」
「凱旋とはいかなかったけどね。マジくやしい」
短い髪の方が顔の前で拳を握る。
「優子と泉田先輩、強かったなぁ。次は勝つ!」
後に続くもう一人。ちょんまげのように後ろ髪を結び、前髪はピンで留めている。
海岸線に続く道路を歩きはじめる二人。
「帰ったらどうするの?」
「どうしようかな」
「あたしはどうせ帰ってからもロクなこと言われないんだろうな。彼氏もいないし。ベリーショートにしたのは気合入れすぎたかなぁ……」
「ゆっくり休めばいいじゃん。私はたぶん店の手伝いだよ」
「和也さんは相変わらずアメリカ?」
照れたのは確かだが、顔を背けたわけではない。海を見る。海の向こうを見る。
「うん」
「勝ち進んでる優子は帰って来れないし、彼氏がいてもなかなか理想通りにはならないか。神様マジ厳しい」
「それでも願いは叶うよ。だから私も、いつだって……」
何かの気配を感じた。振り返る。
「咲?どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
「そう。あたしこっちだから、じゃあね」
「うん、またね。仁美」
海岸通り。この先の道を曲がって家に帰る。
しかし、目の先にある山。トネリコの森。何故か思い出す。不思議な出来事。
首を振って。防波堤に登る。目の先にひょうたん岩。
荷物を置いて、腰を手に胸を張る。手を大きく上げて伸びる。
「見つけたぞ!」
急に声をかけられてバランスを崩す。
「とと……。うっわ!なにあれ!変な人すぎる!」
声の方向には暑さの中、まるで肌を見せていない黒ずくめの怪しい人物。
「あ!あの人!」
「また出おったんかいな!」
反対側から少女と小動物。
「今は主らの相手をしている暇は無いでござる!」
また手品のように出てきたもの。それは試験管のようなもの。
「口寄せ!シックシク!いざ、参らん!」
赤い液体が咲の大きなバッグに付着すると大きな光の柱が昇った。
「なに?」
「よくない気配や!」
バッグを胴体にスパイクの足、大きな手袋のような右手とグラブの左手。顔はボールだ。
「シーック!」
「え?まさか!ウザイナー?」
蘇る記憶。当然その姿に驚く。しかしちょっと違う。首をひねる。
「うざくなどないでござる!シックシク!やつらはまかせた!」
「シーック!」
千香と咲の間に立ちふさがる怪物。
「お初にお目にかかるなプリキュアよ!その猛き魂を貰い受ける!」
「プリキュア?どういうことなの!」
「隠者の石よ!」
水晶と咲の足元が同時に輝く。
「きゃああ!」
咲は大きな六角柱のクリスタルに閉じ込められた。
「大変!」
「なんや!あの人プリキュアだったんかいな!」
「なんとかならないの?」
「なんとか言うてもなー」
目の前には巨大な怪物。
何かが目にちらつく。
千香はアルトの背負っている風呂敷の中が光っていることに気付いた。
「アルト!ちょっとこれ貸して!」
「なんや!アカンてそれは!」
千香は強引に包みをとる。
大きなパネルのついた小さなモバイル。
触れると表示が出た。
「リッタッチ?」
「しゃあない!この世界の力を思い浮かべるんや!……って、まだ何も分かっとらんがな……」
あわあわと慌てるアルト。
「この世界の力……。海と自然の命の力!」
「それや!この星の癒しの力!スターやで!」
「スター?ちょ……」
走り抜ける鼓動。
※変身バンク
「プリキュア!フィーリングソウルエナジー!」
天に掲げて叫ぶと千香を光が覆う。
パネルをタッチすると立体的な黄色い五芒星が画面の上に飛び出した。
息を吹きかけると星が回転し輝く。
青い色の風が千香を包む。
解かれてなびく髪。
肩と胸の辺りは薄いピンク。胸元には星のワンポイント。
ボディからスカートまでマリンブルー。
全体の端を薄いピンクのフリルがなびく。
腰元に真っ白の大きなリボン。
同じ青を基調としたアームウォーマーにレッグウォーマー。
インナーのアームカバーとレギンス、ブーツは黒。
両膝とベルトの中央、手の甲には赤く丸いオレンジのポイント。
イヤリングにはさくらんぼのように小さく。
髪はグレーに変わり左側に垂らしてまとめるルーズサイドテール。
肩のあたりに下がった髪留めは、丸いふちの中に赤い風車を模している。
リッタッチは腰元のケースに収まった。
「千の泉に香る星!ナチュラルフレッシュ!キュアパフューム!」
大きく手を天にかざす。はじける光。
「飛んでいけ!悪いの!」
天にかざした手をポズーイと怪物に向ける。
「プリキュア!これはいったいどういうことでござるか!」
うろたえるポズーイ。
それをよそに文句を言うパフューム。
「ちょっとアルト!イメージ半端だよ!」
「いや、見た目はようできとるで!」
納得半分でやるべきことを目にする。
「とにかく、あの人を助けないと!」
「無理したらアカンで!」
咲はクリシタルの中でへたり込む。
「まあいい!大いなる魂の力は確実に奪えている!シックシク!」
「シーック!」
大きなスパイクで踏みつける怪物。
「はっ!」
パフュームはアルトを抱えて飛んだ。
そのままポズーイに蹴りこむように落下。
「ぬ!」
ポズーイはさらに高速で飛び、蹴りをかわす。
クリスタルの隣にアルトを降ろす。
「これ、どうすればいいの?」
「わからん!あっちの丸い水晶どうにかするしかないんちゃうか」
「わかった。すぐに助けます!」
中の咲は息を切らせている。
「シーック!」
「いけない!」
向かってきた怪物。全力で体当たりして。浜辺に押し戻す。
しかし、それほど飛ばず着地。
「もう一回!」
弾丸のように飛んでタックル。
「無茶はアカン!」
アルトは叫んだ。
ドスン!
パフュームの突進を左のグラブで受け止める怪物。そのまま捕まえる。
「あれ?」
右手に持ち帰られたパフューム。大きく振りかぶる怪物。
そして、投げた。
「きゃあああ!」
ズン!
防波堤の壁に叩きつけられた。
「パフュームはん!」
砂煙の中から這い出てくるキュアパフューム。
「なんか、思ったより大変……。やっぱりイメージのせいかな……」
そのまま倒れる。
「やっぱりアカンかった!必要な力が集まりきらなくてリッタッチは不完全なんや!わいのせいや……。千香はんを危ない目に……」
頭を抱えて涙目になるアルト。
思い出す。
約束を守ってくれた戦士たち。
テレビの奥で見た戦い。いっしょに戦っていた心。
「はああああ!」
立ち上がる。プリキュアとして。
「無理したらアカン!」
「無理じゃない。できるんだ!」
歯を食いしばって仁王立ち。
「なるほど。それがプリキュアか。根性はアッパレだが、伝説と言うほど大げさなものではないようでござるな」
ポズーイに鋭い視線を向ける。
持っている水晶は金色に輝いている。
「もう、任務は完了した。プリキュアの魂の力。確かにいただいた」
「なんやて!」
クリスタルの中の咲はうつろだ。
「シックシク!とどめだ!」
「シーック!」
怪物は胴体のバッグから頭と同じような大きなボールを取り出す。
「まだ大丈夫!あきらめないんだから!」
パフュームが叫ぶとクリスタルが光った。
「そう……。プリキュアはあきらめない!」
輝くクリスタル。
「何事!もう力は奪ったはずなのに!容量を超えているでござるか?」
「どんな絶望でも!花は咲く!」
クリスタルにヒビが入る。
「そんなばかな!」
「神秘やで!」
輝きがパフュームに移る。
パフュームの腰にある大きな白いリボン。
「チェンジ!ブルームドライブ!」
光が集まり鮮やかな金色に変わる。
「シーック!」
怪物が巨大なボールを高速で投げる。
「はあ!」
パヒュームの前に光の壁が現れる。
ズン!
光の壁がボールを受け止める。
ボッ!
さらなる速度で跳ね返した。
ドン!
「シーック!」
直撃した怪物は波打ち際まで飛ばされて倒れた。
「いけるで!」
興奮して両の拳を突き上げるアルト。
※技バンク
リッタッチを手に取る。
リッタッチから輪が飛び出す。顔の大きさほどの輪。
「パフュームフープ!」
大きなハート。サイドに小さなハートが二つずつ。
金色の小さなハートが一つ光る。
フルーティーは反対側を掴む。
タンとタンバリンのように枠を叩く。
シャランと鳴る音と同時に大きなハートが輝く。
「プリキュア!サウザンド・フレーバー……」
振りかぶり、突き出す。
「スプライト!」
ハートからたくさんの粒が集まった光の帯が放たれる。
怪物に直撃。光が包む。
「はあああ!」
輪に腕を通し手首の辺りで回すパフューム。
金色の光が竜巻のように昇る。
「シーックシク……」
怪物は浄化され元のバッグとグラブに戻った。
「シックシクを倒しただと!ぬう、任務は遂行したのだ。退くが吉でござるか」
ポズーイは飛び上がるようにして一瞬でどこかへ消えた。
そして咲を覆っていたクリスタルが砕ける。
パフュームはすぐに移動し、倒れこむ咲を支える。
「大丈夫ですか?」
「ありがとう。立派なプリキュアだね」
疲れた顔をしながらも笑う咲。
「プリキュアだった人にそう言われるとうれしいです」
パフュームは感動して目を潤ませる。
「一件落着やが、ここはどこなんや」
「変わった精霊ね。なんの精霊?」
「わいは癒しの妖精アルトや」
「妖精?そう。ここは海原市夕凪よ」
「なんやて?」
考え込むアルト。
「あ、そうだ。今はキュアパフュームだけど、名前は森田千香。覚えていますか?」
「え?」
不思議そうな顔をする咲。
「あ、いいんです」
ちょっとしょんぼりするパフューム。
「私は日向咲。キュアブルーム」
「え?」
「なんやて?」
顔を見合わせるアルトとパフューム。
「どういうこと?アルト!」
「わいにもわからん!知らんプリキュアや!」
キュアパフュームとアルトの体が金色に輝き始め少しずつ浮かび上がる。
「なにこれ!」
「ここは違うプリキュアの世界かもしれん!戻るんや!あの方もせわしないで!」
あわてて咲に顔を向け、声を出す。
「あの!おかげでプリキュアとして戦えました!ありがとうございました!」
「こっちこそ!ありがとう!頑張って!千香ちゃんならいつだって絶好調ナリ!」
体力を奪われた体を元気一杯に奮い立たせて拳を突き上げる咲。
「ナリ!」
親指を立てて応えると輝きの中に消えた。
「きゃあああ!」
変身は解け、千香は光の中を漂う。
「あ、また!」
すこしはっきりと見える。サイドを三つ編みにした女の子。
「あなたは……だれ?」
向こうも同じように口を動かしているが聞こえない。
カッ
光が消えるとそこは元の森。少し暗くなってきている。
「と、とにかく帰ろう」
「せやな」
アルトの存在にあらためて驚く千香。
「うちペット飼えないかも」
「そんな!致命的やで!」
今度はアルトが驚く。
「がんばって話してみるよ」
「せやで、あきらめたらアカンで」
通りに出た。千香は夕日の帰り道を歩く。妖精さんはその後を付いて行った。
ED♪
「ガンバリードでビートハート」
※Cパート
「なあ、フェレットって目立つんかな?」
「普通のペットとしては少し珍しいかもしれないけど、なんで?」
「ほんなら、隠れとくわ。なんや追い掛け回されたことがあるって聞いたことあんねん」
アルトは急に物陰に隠れた。
「千香ちゃん」
「あ、ラブさん。お久しぶりです」
「半年ぶりくらいかな?元気そうで良かった」
少し声に張りがない。
「ラブさんは、少しお疲れ?ダンス大変なんですか?」
「大丈夫よ。好きなことしてるんだもん」
きりっとした目。かっこいい人。少し似てる。
「私も頑張りますナリ」
「ナリ?」
「ははは、なんでもありません」
頭をかく。
「今度また、ゆっくり話そうね。みんなで」
「はい」
ラブは自宅へ帰って行く。
「なんや、髪型は幼いけどカッコええ人やな」
「なに言ってるの。アルトもラブさんなら隠れなくても大丈夫なのに」
「わいも途中でそう思ったわ。それにラブはんとか言う人……」
「なに?」
「いや、なんでもあらへん。それにしても、おなかペコペコや」
「私も」
千香はタルトを抱き上げて走った。
予告
友達と課題とチョラピと夏休みも頑張らないと!
って思ってたら、またまた急にワープ?
なんだかかっこいいけど厳しそうな人に会っちゃった。
次回!
「くじけぬ心!完璧への道!」
またみてね
B
※アバン
どこかの暗い場所。広大な部屋に様々な機械が置いてある。
配線、配管、計器。試験管やフラスコが置いてある机もたくさんある。
ゴポゴポと泡の出ている筒状の巨大なケース。あやしげな煙が漂う。
中央は開けていて絨毯が敷いてある。
その先、数段の階段の上に6つの大きなモニターが囲む机。
椅子に座るものの影。背もたれで姿はよく見えない。
階段の下には跪く二人の男。
「新しいプリキュア。やはり我々の前にも現れたか」
つぶやくように言う影。
「バット、まだ未熟の様子」
笑みを見せるベノン。
「今なら拙者が討ち果たしてご覧に……」
はやるポズーイ。
「無理に戦うな。お前たちも完全ではないのだ」
顔を上げるベノン。
「なんと。これはお優しき言葉」
その瞬間、影が深く黒く輝く。
部屋が揺れ、フラスコが落ち、割れる。
汗をかいてうろたえるベノン。
「ソ、ソーリー。ワグ様」
「軽率だぞ兄者!」
ポズーイも身をすくめる。
「任務だけは果たせ」
『はっ!』
OP♪
「包んでSpiral Flavor」
CM〜
※Aパート
「くじけぬ心!完璧への道!」
夕凪中学校。今は夏休み。一部の部活が活動している。
校門で待ち合わせる制服の二人。荷物が多い。
「おはよう、みのり」
「おはよう、志乃」
二人は校庭に向かう。
「人物画って難しいよね」
「しかもテーマが動いてる人だからね」
校庭ではソフトボール部が活動している。
「枚数は多いけどスケッチだから大丈夫そう」
二人はよく見える木陰にレジャーシートを敷いて荷物を置く。
小さなクッションまで用意してある。
「好きなもの自由に描けるもんね」
まだ練習前のキャッチボールのようだ。全体に広がっている。
クッションや荷物にまぎれるチョラピ。
「ぬいぐるみ?あ、知ってる。ミミンガでしょ?」
「え?うん、まあね」
志乃はじっと見る。寝ているチョラピ。呼吸しているようなリズムで動く。
「なんか寝てるように見えるけど……、よくできてるね」
「そうなの。すごいでしょ」
冷や汗。
近くにボールが転がってきた。
みのりは拾って投げ返す。
パシッ!
いい音がした。
「おはよう、静」
「おはよう。もったいないなあ、みのり」
ユニフォームの部員が残念そうに言う。
「もうその話は終わったでしょ」
志乃が静に迫る。
「大丈夫だって。今更とったりしないわよ」
「みのりはうちの部員ですからね」
志乃がみのりを背中から抱きしめる。
「でも、伝説の先輩の妹だもん。欲しくなるよ」
「みのりはみのりですう」
口を尖らせてブーイング。
「それは分かってるけど。やっぱりセンスあるし」
静もそっぽを向いて惜しそうにグチる。
「あら、またやってるの」
ボブカットでメガネの先生。三人の担任だ。
「先生!」
「大人気ね。日向さん」
照れるみのり。
「みのりは絵のセンスもあるもん」
「日向先輩はどうだったのかな?」
「お姉さんは絵の方は……、どうだったかしら」
笑って誤魔化す。
昔、掲示板に張ってあったインパクトのある絵は忘れられないとは言えない。
「まあまあ、とにかく今日はスケッチするけど気にしないでね」
「みのりに見られたら緊張しちゃうかも」
「そんなに神経細くないでしょ」
「ほらほら、泉田さんも竹内さんも仲良くね」
「はーい」
先生は校内に入っていった。
「あ、そうだ。午後からの夏野菜畑のスケッチだけど、おばあちゃんのところに親戚が集まることになっちゃったんだ。私も行かなくちゃいけないし、また今度でいい?」
「うん、わかった」
子犬のようにうるうると訴える志乃。
「私がいなくても静にとられないでね」
「だから、もうあきらめたって言ってるでしょ。でも試合の応援には来てね」
「うん」
集合がかけられて、静は走っていった。
二人はソフト部の練習をスケッチする。
「今日は筆もノリノリナリ!」
志乃が先に帰ったころみのりも一段落し、荷物をまとめる。
「さあ、かえ……」
「ッピィ!」
突然大きな声を出すチョラピ。
慌てるみのり。
オーライという声が響いている。周りは気付いていない。
「どうしたの突然!」
チョラピはきょろきょろして身構えるように言う。
「みのり!もしかしたらまたワープするかもしれないッピ!」
「え?じゃあ、大空の木に行かなくちゃいけないの?」
そう言った瞬間、チョラピの体が光り始める。
「ッピ!」
「まさかこのまま?」
みのりは急いでチョラピと荷物を抱えて人気の無い校舎裏に隠れる。
カッ
「どうしてこうなるのー」
光に流れにのるみのり。
流れが前回よりもゆるい。
また近づいてくる女の子。
『あの』
互いの声が届いた。
驚いて次の言葉が出てこない。
その間にすれ違って離れてしまった。
白い建物の影。
光の球体から解き放たれるみのり。
チョラピと荷物が少し浮いて現れ地面に降りる。
スケッチブックがバッグからこぼれ落ちた。
それを拾いながら慌てて周りを見る。
「今度はどこ?」
敷地内から出る。病院だろうか。
見慣れてはいないが似たような景色。
「またクローバータウンかな?」
少し都会的なあたりだ。ビルも多い。
「どうしたの?」
「どうやって移動してるのか分からないッピ」
みのりも腕を組む。
「大空の木の力じゃないの?」
「前はそうだと思ったッピ。でも今は大空の木を通ってないッピ」
大きなバッグを肩にかけ、チョラピを抱き上げる。
「それは確かに困った問題だけど……。わかんないなら仕方ないじゃない」
「でも、またプリキュアが狙われてるに違いないッピ」
「そう、その方が問題」
大きな通りに出る。日差しが強い。
思わず遮るように手を前に出した。
アイキャッチ
CM〜
アイキャッチ
※Bパート
できるだけ建物の影を歩く。
未来的な流線型のデザインのビル。
ひさしの下に綺麗な女性がいる。
すらっとした長身。長い足。長いつややかな黒髪、白い肌。
「わあ!舞お姉ちゃんみたい」
通り過ぎる前に言葉が出た。
「誰みたい?」
聞こえていたらしい。
「知り合いの綺麗なお姉さんです」
「ふうん、そんなに完璧な人がいるの。会ってみたいわ」
自身に満ち溢れたオーラを放っている。
「やっぱりあんまり似てないかも」
「あら?そう?どうして?」
「いやあ、あはは……」
あなたは厳しそうですとは口が裂けてもいえない。
バッグからはみ出ているスケッチブック。
「夏休みの宿題?この辺じゃ見ない制服だけど」
「美術部の課題です」
「見せてもらってもいい?」
「いいですけど。たいしたものじゃありませんよ」
スケッチブックを渡す。
「お姉さんはここでなにをしてるんですか?」
「人を待ってるのよ。あら、上手じゃないの。ねえ、あたしも描いてくれない?」
「ッピ」
「ピ?」
突然声を出すチョラピ。
「あわわ……。すみません、ちょっと」
少し隅による。
「みのり。そんなことしてる場合じゃないッピ」
「そっか。でもプリキュアなんて、どうやって探したらいいの?」
「キュアピーチに聞いてみるッピ」
「桃園ラブさんだっけ?」
こそこそとしているみのりにスッと寄って聞き耳をたてる美希。
「ラブ?ラブの知り合い?」
声をかけられて驚き、内容で驚く。驚きっぱなしのみのり。
「え?ご存知なんですか?」
「ええ。友達よ」
電球が点灯する。ひらめいた。
「つい、この前お世話になったんですが、連絡先を聞かなかったので探していたんです」
「そうなの。じゃあ、教えてあげるわ」
「ありがとうございます!」
「そのかわり綺麗に私を描いてね」
「ええ?」
手すりにもたれて自然なポーズをとり動かない。有無を言わさない。
みのりは荷物とチョラピを置いて描き始める。まさに絵になる女性。
じっと見ると、自信たっぷりの表情の中に少し何かを心配するような部分がある。
しかしその理由を考えている場合ではない。
暑さの中で動かない女性。そしてプリキュア。急がなくてはならない。
しかし絶対に手は抜けないプレッシャーもある。そういう雰囲気。
みのりは緊張した。
「あ、和樹」
10分くらいした頃、帽子を被った青年が現れた。
「はわっ!」
こちらもすらっとしていて美しい。
みのりは心を掴まれそうになった。しかしどうも疲れているように見える。
「中で待っていればよかったのに。もしかしてずっと外で待ってたの?」
「いいのよそんなこと。大丈夫?」
「大丈夫。このくらいの暑さに負けてちゃ、姉さんも安心できないでしょ」
キャリーバッグを渡す。
「ご姉弟ですか。こんにちわ」
「こんにちわ。こちらは?」
人差し指をあごにつけて考える。
「そういえば名前も聞いてないわね」
「日向みのりです」
「そう、あたしは蒼乃美希。こっちは弟の和樹。どのくらい描けた?」
スケッチブックを覗く。
「姉さん、また無茶なこと頼んだんだろ」
あきれる弟。
「まだ、もやっとですけど」
「あら、いいわね。でもちょっと考えすぎかしら」
厳しい。
「さっき言ってた知り合いの綺麗なお姉さんが、とても絵の上手な人なんです。思い出しちゃって」
「そうなんだ。ちょっと意識しちゃったのね」
ビルのドアから人が出てきた。
「美希さん。悪いけど、こっちもう少し時間かかるから」
「はい」
また引っ込む。自動ドアにはヨツバスタジオと描いてある。
「美希さんはもしかしてモデルさん?」
「そうよ」
「わあ、だから綺麗なんですね。あれ?」
モデルだから綺麗なのか、綺麗だからモデルなのか。
「半分正解よ。磨き続けることが大事」
「ならなおさら中で待っててよ」
あきれたように言う弟。
「でもあなたの体のこと考えると……」
「もうそんなに弱くないよ」
カッ
突然道路の上が輝いた。
「きたッピ!」
「見ればわかるよ!」
道路の真ん中に降り立ったベノン。
「ふふふ……。ワット?」
迫ってくる車。
帽子を押さえながら大きく跳んでよける。
「まったくとんでもないところに……。ん?」
取り出した水晶が光っている。
「おお!近い!アンラッキーからラッキー!」
みのりたちの方に顔を向けてさらに驚く。
「新しいプリキュア!もう来ていたとは!ラッキーからアンラッキー!」
美希は警戒する。経験のある展開。
「なにあの人……。プリキュアって言った?」
「プリキュアの魂を狙っているッピ!」
もうチョッピも全開でしゃべる。
「なんだって!姉さん!」
「しゃべるぬいぐるみ……。間違い無さそうね」
「美希さんはプリキュアだったんですね?」
「そうよ。ラブも私も」
「いまは逃げてください。私が止めます!」
みのりはリッタッチを構える。
※変身バンク
「プリキュア!フィーリングソウルエナジー!」
天に掲げて叫ぶとみのりを光が覆う。
パネルをタッチすると四葉のクローバーが画面の上に飛び出した。
息を吹きかけるとクローバーが回転し輝く。
緑色の風がみのりを包む。
胸元には真っ白の大きなリボン。肩からボディ、スカートまで明るい緑色。
フリルは薄い黄色がなびく。
同じ緑を基調としたアームウォーマーにレッグウォーマー。
インナーのアームカバーとレギンス、ブーツは濃いピンク。
両膝とベルトの中央、手の甲には赤く丸いリンゴのポイント。
イヤリングにはさくらんぼのように小さく。
髪はオレンジ色に染まる。三つ編みはそのままに、髪留めは一枚の桜の花びら。
後ろ髪は少し伸びて垂らしたまま。
少しだけ頭の上に持っていって花の髪留めで留める。
小さく双葉のようにぴょこんとはねる。
リッタッチは腰元のケースに収まった。
「緑の四葉は命のしるし!世界を育む実り!キュアフルーティー!」
大きく手を天にかざす。はじける光。
「いざ!成敗なり!」
ベノンに向けて手をかざす。
「姉さん!今は!」
姉の手をとる和樹。
「うん!」
走り出そうとしてキャリーバックを手すりに引っ掛けて落としてしまう。
「うそ!」
水晶を持って飛び掛るベノン。
「させない!」
蹴りを放つフルーティー。
「アウチ!」
腕で押さえながら後退するベノン。
「バット、大事そうなものをディスカバリー!」
空の試験管を見せ付けるベノン。
放物線を描いた赤い液体がキャリーバッグに付着し光を放ちながら染み込んでいく。
「召喚!シックシク!我が呼びかけにこたえよ!」
「ッピー!危ないッピ!怪物になるッピ!」
チョラピが危険を知らせる。
「姉さん!もう離れた方がいい!」
「でも!」
キャリーバッグが膨らんで破裂する。
「うわっ!」
「きゃあ!」
和樹は強引に美希をバッグから離したが、衝撃に巻き込まれ飛ばされた。
「ワオ。大事なものは中身の方だったとは。グレイト」
「シーックシク!」
巨大な衣装の怪物。水色を中心としたブーツ、ショートパンツ、ペストに白いブラウスだろうか。
胴や腕、首は無く、大きなマスコットの手袋のようなものとベールのような薄い布の頭らしきものが浮いている。
そこには泣き顔のようなものが浮き上がっている。
「シックシク!プリキュアを足止めだ!」
「シーック!」
大きな手が迫る。
「はっ!」
跳んでよけるフルーティー。
「させない!」
ベノンの方向へ走る。
しかし、もう片方の手が腕があってはありえない方向から飛んで来る。
「きゃあ!」
弾かれるフルーティー。
地面に伏す和樹。
「和樹!しっかりして!」
「大丈夫」
起き上がる。
しかしそこにはベノン。
「ハロー!」
「姉さん逃げるんだ!」
「隠者の石よ!」
美希の足元が光る。
「きゃああ!」
美希は大きな六角柱のクリスタルに閉じ込められた。
「そんな!」
フルーティーは歯を食いしばる。
「シーック!」
また手が飛んで来る。
「はあああ!」
飛んで来る手を右、左とよけて飛び上がりどベールに拳を叩きつける。
バサッ
手ごたえがない。
服を蹴る。
ボスッ
埋まってしまう。
「え?」
また手が飛んできた。
「きゃ!」
ドン
地面に叩きつけられる。
「グッド!まだまだハーフボイルドだな!未完成だ!」
笑うベノン。
「未完成だからなに?」
水晶を内側から叩く美希。
「ホワイ!ソウルを奪われている最中だというのに!」
「完璧を目指して立ち上がりなさい!」
輝くクリスタル。ヒビが入るほどに強く。
「はい!」
輝きがフルーティーに移る。
フルーティーの胸にある大きな白いリボン。
「チェンジ!ベリードライブ!」
光が集まり鮮やかな青色に変わる。
「シーック」
様々な方向から飛んで来る二つの手を何度もかわす。
「えい!」
ボン!
飛んで来た手をかわしざまボレーシュートのように蹴る。
「シーック!」
蹴られた左の手袋が服の部分まで飛ばされる。そのまま落下するように落ちる。
同時に左側全体が崩れるように沈むが、すぐに持ち直す。
「もしかして!」
また二つの手が迫ってくる。
ボン!ボン!
順に見極め素早くかわして一つずつ蹴り、二つとも服にシュートを決める。
「なんという鋭い動き!」
ベノンが驚愕する。
服の怪物の全体が崩れた。
「やっぱり!手袋が本体!」
「フルーティー!」
チョラピが叫ぶ!
※技バンク
リッタッチを手に取る。
リッタッチから輪が飛び出す。顔の大きさほどの輪。
「フルーティーフープ!」
大きなハート。サイドに小さなハートが二つずつ。
ブルーの小さなハートが一つ光る。
フルーティーは反対側を掴む。
タンとタンバリンのように枠を叩く。
シャランと鳴る音と同時に大きなハートが輝く。
「プリキュア!スパイラルハーベスト……」
振りかぶり、突き出す。
「スプライト!」
ハートからたくさんの粒が集まった光の帯が放たれる。
怪物に直撃。光が包む。
「はあああ!」
輪に腕を通し手首の辺りで回すフルーティー。
青色の光が竜巻のように昇る。
「シーックシク……」
怪物は浄化され元の服とブーツに戻り舞い降りてくる。
フルーティーは服をキャッチした。
「ギリギリセーフ!間に合った!チャオ!」
ベノンは飛び上がるように一瞬でどこかへ消えた。
同時に美希を覆っていたクリスタルが砕ける。
「姉さん!」
和樹は倒れそうな姉に肩を貸す。
「大丈夫。ちょっと疲れただけ」
「あの!」
フルーティーが服を持っていく。
「すみませんでした。目の前にいたのに守れなくて」
「何言ってるの。このくらなんともないわ。それにこの大切な服も取り返してくれた」
「大切な服?」
「そう。友達とダンス大会に出たときの衣装。思い出の服について聞きたいって言われたから、お母さんに電話して和樹に持ってきてもらったの」
「友達……」
「あたしとラブ、それからブッキーとせつな……」
突然光り出し浮き始めるフルーティー。
「わ!また突然!」
「帰るッピ!」
声の方向に向くと、フラッピと荷物、そしてスケッチブックが光って浮いている。
「あの!私、帰ります!ありがとうございました!無理しないでくださいね!」
「無理?大丈夫よ!ほら!あたし完璧!」
腰と高等部に手を当て、体をくねらせてポーズをとる。
そして手を振る。
「あなたは立派なプリキュアよ」
フルーティーも笑って手を振った。
変身は解け、みのりは光の中を漂う。
浮いているスケッチブックを掴む。
近づいてきた人影。叫ぶ。
「私は日向みのり!」
黒いセミショートの女の子。
「私は森田千香!プリキュア!」
どちらも手を伸ばす。
「私も!」
届かない。
そのまま離れていく。
学校の校舎の陰。
光る大きな玉が弾けて実りは着地する。
「光の中を泳ぐ私と同じくらいのプリキュア……」
「きっとあの子はみのりと同じように今、戦っているのかもしれないッピ」
「うん。なんでだろう。私もそんな気がする」
みのりは夕日に染まる学校を後にした。
帰り道の階段。美しい景色。
みのりはスケッチブックを取り出した。
「綺麗な場所ッピ!描くッピ?」
大きなバッグから顔を出すチョラピ。
「ううん。違うの。本当にここは何度描いても描ききれないところだけど、そうじゃなくて……」
ささっと鉛筆で書く。それは人物。
「うーん」
首をひねる。階段を降りる。
「きっとまた会えるッピ」
「うん」
ED♪
「ガンバリードでビートハート」
※Cパート
スケッチブックを見直しながら歩く。
「あぶないッピ。前見て歩くッピ」
「そうだね」
前を見直すと横道から綺麗な女性が出てきた。
「みのりちゃん」
「舞お姉ちゃん!」
少しはかなそうな笑顔。
「あの頃の咲によく似てきたわ」
「でも美術部だよ。舞お姉ちゃんお疲れ?」
「大丈夫よ。でも咲とパンに元気もらいに来たの」
並んで歩く。
何も無いところでつまずきそうになる舞。
「最近、お母さんに似てきちゃったかしら」
照れ笑い。
「やっぱり美希さんとは違うかな?」
「え?」
「ううん。美大って美術部よりも課題が大変なんだろうな」
「それはそうだけど……。あら?」
みのりのスケッチブックの絵に気付く。
「その子、お友達?」
「お友達になりたい子……かな」
「そう。きっとなれるわよ。みのりちゃんなら」
「うん!」
思いはせて顔を上げる。大空を鳥たちが帰っていった。
予告
せっかく王子様見に来てたのにまたワープなの?
急に静かな場所に来てビックリ!
めくるめく美の魔法に感動!
次回!
「強く優しく美しく!大空を舞う想い!」
またみてね
C
※アバン
大きな木のまわりにいくつもの泉がある美しい場所。
しかし紫色のかすみのようなものがところどころに浮いている。
生命の賑わいはわずかばかりの呼吸しか聞こえない。
ただ、その巨木だけは力強くそびえている。
その根元にあるうろ。
そこに輝く何かがある。
誰かの声が聞こえる。
「すみません。私にもっと力があれば……」
「いいのですよ。あなたにはあなたの役割があるというのに、それ以上にもう頑張っていてくれているではないですか」
「ありがとうございます」
茂る葉のすき間からもれる光の数々。
「私はこの場所で成長を見守ることしかできませんから」
OP♪
「包んでSpiral Flavor」
CM〜
※Aパート
「強く優しく美しく!大空を舞う想い!」
水色にピンクの縁があるツーピース。走る千香。
手には木の枠の鳥かご。中にはアルト。
「お待たせ!千歳!」
短い金の髪。赤のTシャツに七分丈のデニンス。
少年に見える女の子。
「千香。あんまり振り回すとかわいそうだよ。その子がアルトくん?」
「うん。どうしても行きたいって言うから……」
「え?言うの?」
しまったという顔。
「あ、ううん。そう聞こえる気がしたの。あはは……」
「ねえ、君。どこかで会ったこと無い?」
籠に顔を近づける千歳。
「どうしたの?」
「ないいでもない。行こうか」
歩き出す二人。
「結局飼える事になったのはいいけど、あんまりちょろちょろされても困るからって言われてこの有様ってわけ」
「ふうん。そっか」
千歳はまだアルトを気にしている。
最初はキラキラと目を潤ませてかわいさアピールをしていたアルトだったが、たまらず顔を背けた。
「あれ、千香と……中内だっけ?」
大きな犬を連れたクラスメイトの男子。
「タケシ、まだ覚えてないの?もう転校してきて一年近く経つのに」
「クラス違うからな」
大きな犬が籠を覗く。
「ハッピー。食べちゃダメだぞ」
冗談をアルトは真に受けた。
「なんやて!」
籠いっぱいに後ずさるアルトの声。
『え?』
「あ、いや!なんやってーこというの!もう!」
籠を後ろに隠して必死に手を振り、無理矢理誤魔化す千香。
「あ?ああ……。まあ、いいや。じゃな」
タケシは犬の紐を軽く引っ張る。
「タケシは王子様見ないの?」
「そんなもん見てどうするんだ」
「お姫様だったら見るくせに」
「そのときは呼んでくれ」
さっと犬と共に去る。
「なかなかクールだね」
「タケシが?ないない。年上の女の人の前だと性格変わるんだから」
公園に新しくできたオブジェの除幕式。
四人の女神をかたどった像だ。
人ごみの奥に見える金髪の少年。
「あれが王子様!本物はやっぱりすごい!」
「小さな頃に四つ葉町に来たんだって。よくしてもらったからまた来たいと思っていたって新聞に書いてあった」
「私たちと同じくらいかなあ。ちょっと千歳に似てない?」
「え?」
「でも千歳は女の子なんだよね。ちょっともったいない」
くっついてくる千香をよける。
お偉いさんが一言二言話を終える。
王子は歓声に包まれながらもすぐ黒い車に乗ってしまった。
「ああ、もう帰っちゃうんだ」
「忙しいところ無理言って来たんじゃない?本当はお忍びで来たかったのかもしれないけど、新聞に出ちゃったら人が集まっちゃうもんね」
千香の眉間にシワがよる。
「忍び……」
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない。じゃあ、王子様と入れ替わってあげれば?」
「またそんなこと言って。もう知らない」
人ごみの解散と一緒にさっさと歩き出す千歳。
「ごめーん。待ってよ」
イベントのせいかいつもとは違う場所にある移動式のドーナツ屋。
今日はパラソルとテーブルが出ていない。
千香と千歳はドーナツと飲み物を持って少し離れたベンチに来た。
「綺麗な女の人だったね。ビックリ」
「カオルちゃんにあんな知り合いがいたんだね」
木陰のベンチに座る。アルトは籠の中からドーナツを見ている。
ゆったりと流れる時間。
「そろそろ一度実家に帰るよ」
「中学生で下宿って大変だね」
「でもレイカさんいい人だから。今日もこれからちょっとね」
「用事ってレイカさんかー。ちょっと妬ける」
口を尖らせて擦り寄ろうとする千香。
千香の頭を手でおさえる千歳。
「でも、この町に来てよかったよ。いろんなことを教えてもらった。千香にもね」
「やっぱり高校生になったら帰るの?」
「たぶん」
「寂しいよう」
またくっつこうとする千香を立ってよける。
「まだ一年半もあるじゃないの。もう行くわ。またね」
千歳は帰っていった。
「フラれちゃった」
「どういう人なんや。ちょっと違った不思議な気配がするで。もぐもぐ」
勝手に籠から出てきて余ったドーナツを食べているアルト。
「遠いところから来たって言ってた」
一陣の風が木陰すら薙ぐように通り過ぎる。
千香とアルトの体が光りだした。
「え?」
「なんや!急やな!」
千香は急いでドーナツと飲み物のゴミをくずかごに捨てると木の陰に隠れた。
アルトもそれについていく。
カッ
「またなのー?」
光に流れにのる千香。
流れが前回よりもゆるい。
また近づいてくる女の子。
『あの』
互いの声が届いた。
驚いて次の言葉が出てこない。
その間にすれ違って離れてしまった。
暑い太陽と潮風。しかし高台のようになっていて樹木も多い。
「わ!どこなの?違うところ?」
海が見える。町並みは見たことがあるようなないような。
「落ち着いて、深呼吸。リフレッシュ!」
いい空気。たぶん同じ。
ガードレールの上に乗るアルト。
「こないだは海の方で、今度は少し山の方やな」
「なるほど」
道路の真ん中。後ろは緩やかに登っている。さらに山となっていくようだ。
エンジンとタイヤの音。車が登ってきたようだ。
端によける。
初心者マークの入った軽自動車。
「あれ?」
なんと屋根に何かが乗っている。
数冊の冊子のようなもの。いまにも落ちそうだ。
「あ!」
案の定、風が吹いて落下した。
千香は反射的に籠を置いてそれらを拾い集める。
最後の一つが拾う前に風で開く。
「絵本?綺麗な絵」
止まった車の助手席からメガネをかけた若い女性が出てくる。
「もしかして次のプリキュアさんかいな?」
小声でつぶやくアルト。
「拾ってくれたのね。ありがとう」
「すごく綺麗な絵ですね」
拾った本を渡す。
「そうでしょう?これからその人に会いに行くの」
「描いた人ですか?」
「そう。ほら、すぐそこの家」
大きな家だ。何か変わったドーム状のものが付いている。
今度は細身の男の人が降りてきた。
「ごめんごめん。大丈夫だった?」
「もう。屋根の上にのせたまま走るなんて」
「本当にごめん。君が拾ってくれたの?ありがとう」
頼り無さそうに笑う。
「しょうがないんだから。ねえ、一緒に来る?」
「え?大丈夫なんですか?」
「友達だから大丈夫よ。きっと今もすごい絵を描いてるわ」
「いきます!あ、ちょっと待っててください」
籠を拾ってアルトのところへ。
「千香はんもあの人がプリキュアやと思たん?」
「え?あ、いや、うん」
曖昧な返事をしてアルトを籠に入れ、戻る。
「変わったお友達ね」
「はい」
アイキャッチ
CM〜
アイキャッチ
※Bパート
「いらっしゃい」
玄関から出てきた女性に息を呑む千香。
つややかな髪、白い肌、スレンダーな体つき。
服装はラフだが、デニムが長い脚に似合う。
「わあああ、美人!」
きりっとした目が千香を見る。
「こちらは?」
「落ちた絵本を拾ってくれたの」
「僕がうっかり屋根に置いたまま走っちゃって」
「そうだったの。こんにちわ。私は美翔舞」
「あ、森田千香です。こんにちわ!」
籠の中のけもの。
「あ、フェレット?」
「はい。アルトです」
「ちょっと変わってるね。描いてみたい」
ひざを折って覗く。
「じゃあ、いっぱい描いといて。あとでフェレットのお話つけるから」
眼鏡の女性はノリ気だ。
「作家さんですか?」
「ううん。ただの大学生よ。ボランティアで読み聞かせとかしてるの」
「お二人で?」
顔を見合わせる女性と運転手の男性。
「ま、まあね」
千香は察した。ニヤリと含んだ笑みを見せてしまったがそれ以上は聞かなかった。
アトリエのような部屋に案内される。
「もうすっかりアトリエなのね」
「お兄ちゃんあんまり帰ってこないから」
「和也さんはすごいな。あの人なら絶対、夢をかなえるよ」
壁にかけてある星空の絵。男性はその奥を見ているようだ。
「ここ家に丸いドームがあったでしょ?あれ、天体望遠鏡なのよ」
「え?す、すごい!」
「お父さんが天文学者でお母さんが考古学者。お兄ちゃんが宇宙飛行士で彼女は画家。すごいよね」
「私は画家じゃないしお兄ちゃんもまだ宇宙飛行士じゃないよ」
困ったように笑う舞。
数枚の絵を眼鏡の女性に渡す。
「私が描いたのと、もう一つ」
「あ、やってくれたんだ」
「わああ!綺麗!」
とても上手くかけている海の中の魚たちの絵。
もう一つはキャラクター化された動物の絵。
「うん。できたら送って欲しいって。保育園で使うって言ってた」
「わかった。送るわ。よろしく伝えておいて」
ガタっと物音。
「あれ?ごめん。布に引っ掛かっちゃった」
男性の腕時計がキャンパスを覆った布に引っ掛かっている。
「もう、なにしてるの」
「一回はずした方がいいかな」
舞が布をどける。
現れたのはこの町と思われる風景画。
暮れた夕日の赤が残る宵の空。照らし始める月。
空には山へ帰る鳥の影。地には風にそよぐ草花。
絶句。
すいこまれそうな絵に感嘆の言葉も出ない。
「ねえ、アルト」
「せやな。こっちやわ。間違いないような気がするわ」
「私も」
男女の二人組は帰ったが、アルトのスケッチともう一つの確信と共に千香は残った。
二人を見送った後、また一人。
「おかえりなさい」
「お邪魔してます」
「あら、お客さん?こんいちわ。モデル?」
また眼鏡をかけた女性。長い黒髪。綺麗な女性。
「お姉さんかな?」
「ごめんなさいね。また徹夜になっちゃって。疲れたから寝るわ」
靴を脱ぐとそのまま転んだ。
「また?気をつけてよねお母さん」
千香は目を皿にする。
「お母さん?わ、若い……。疲れ切ってるとは思えない……」
「ごめんなさいね。ゆっくりしていってね」
広いテラス。日も少し傾いて。木の陰に入る。
「じゃあ、アルト君。よろしくね」
「大丈夫かな……。舞さん?」
返事が無い。もうアルトとスケッチブックしか見えていないようだ。
さっと一枚のアルトが出来上がる。
「すごい!」
「ポーズ変えてもらおうかな」
緊張するアルト。
「ポ、ポーズて……」
二本足で立ち腰をくねらせ、前足を腰と後ろ頭にと不自然なポーズをとる。
「え?」
「ア、アルト!」
「あ、しもた。アカンか」
「アルト!」
「あ……」
完全にしゃべった。
カッ
ドームの上が光る。
「千香はん!来たで!」
「え?もしかしてラグナラボの?」
降り立つポズーイ。
「む!」
千香に気付く。
「む!」
水晶の発光に気付く。
「む!」
舞に気付いた。
「理解した!プリキュア!覚悟せい!」
「プリキュア?」
反応する舞。
「口寄せ!シックシク!いざ、参らん!」
赤い液体がドームに付着すると大きな光の柱が昇った。
展望と思わしき部屋がごっそりと家から外れる。
ゴーレムのような壁の体に手足。アンバランスに大きいドームの頭。左右に目。
「シーック!」
「家ごとシックシクにするにはちと力が足らんでござるか」
千香はリッタッチを構えた。
※変身バンク
「プリキュア!フィーリングソウルエナジー!」
天に掲げて叫ぶと千香を光が覆う。
パネルをタッチすると立体的な黄色い五芒星が画面の上に飛び出した。
息を吹きかけると星が回転し輝く。
青い色の風が千香を包む。
解かれてなびく髪。
肩と胸の辺りは薄いピンク。胸元には星のワンポイント。
ボディからスカートまでマリンブルー。
全体の端を薄いピンクのフリルがなびく。
腰元に真っ白の大きなリボン。
同じ青を基調としたアームウォーマーにレッグウォーマー。
インナーのアームカバーとレギンス、ブーツは黒。
両膝とベルトの中央、手の甲には赤く丸いオレンジのポイント。
イヤリングにはさくらんぼのように小さく。
髪はグレーに変わり左側に垂らしてまとめるルーズサイドテール。
肩のあたりに下がった髪留めは、丸いふちの中に赤い風車を模している。
リッタッチは腰元のケースに収まった。
「千の泉に香る星!ナチュラルフレッシュ!キュアパフューム!」
大きく手を天にかざす。はじける光。
「飛んでいけ!悪いの!」
天にかざした手をポズーイと怪物に向ける。
「プリキュアに、あんな感じの怪物……。どうして……」
困惑する舞。
「舞さん、ちょっと失礼します!アルト!」
「ほい!」
アルトはパフュームの腰にしがみつく。
パフュームは舞の背と脚に手を回し抱えて跳んだ。
「逃がさんでござる!」
ポズーイと怪物がその後を追う。
「どういうこと?プリキュアの戦いは終わってないの?」
「私にもわかりません!ただ舞さんがプリキュアだったなら、あの忍者から逃げないと!」
最初に移動してきた道路の辺り。
「アカン!」
アルトが叫ぶ。
ポズーイが追いついた。
「覚悟!」
空中で蹴りを放つ。
「きゃあ!」
パフュームは舞をかばった結果、背蹴られた。
衝撃でアルトが落下する。ガードレールを越え、木が多い崖の方に落ちる。
「アルト!」
身を翻して落下の衝撃からも舞をかばい下敷きになる。
「あたた……」
「ごめんなさい!大丈夫?」
「シーック!」
後から追いついてきた怪物が外壁の足で踏みつける。
「くっ……」
ズン
立ち上がり前に出て受け止めたパフューム。
「舞さん!逃げてください!」
「もう遅い!隠者の石よ!」
すぐ側に迫っていたポズーイ。水晶と舞の足元が同時に輝く。
「きゃああ!」
「そんな!」
舞は大きな六角柱のクリスタルに閉じ込められた。
「シーック!」
さらに踏みつけてくる怪物。
「そこまでにしいや!」
上からアルトが降ってきた。怪物のドームの頭に着地し目の辺りを走り回る。
「シック……」
ゴン
怪物は弾みで自分の頭を殴ってしまいよろける。
アルトが落下する。
「アルト!」
足から脱出したパフュームが走って滑り込みアルトを受け止める。
「よかった!」
「ええ出会いに感謝や!あんがとな!」
アルトは空に手を振る。
大きな鳥の影が去っていった。
「シーック!」
頭のドームが開く。望遠鏡が出てきた。
キュウウン……ドン!
望遠鏡から光の弾が飛んでくる。
パフュームはそれを大きく避ける。
「よし!任務完了!余計なことにならぬようこのまま破壊するでござる!」
怪物が舞を包むクリスタルに照準を向ける。
ポズーイはそこから離れた。
「いけない!」
パフュームはアルトをその場に置いて怪物と舞の間に走る。
「みんなも約束も守るって決めたんだから!」
クリスタルの中、震える足で立ち上がる舞。
「大切なものを守る想いがあれば……」
顔を上げ目を見開く。
「きっとどこまでも飛んでいける!」
輝くクリスタル。
「もう遅いでござる!ははは!」
ガードレールの上で笑うポズーイ。
ドン
大きな光の弾が炸裂する。
「まとめてやったでござるか!これはいい!」
舞い上がった砂埃と煙。
漏れる光。
煙が引くと同時に輝く光の壁が見える。
「なんと!」
パフュームの腰にあった大きな白いリボン。
「チェンジ!イーグレットドライブ!」
光が集まり鮮やかな銀色に変わっている。
パフュームは光をまとい体ごと突っ込む。
「やああ!」
ズン
光の塊が怪物の胸元にぶつかる。怪物は大きくよろめいて二三歩後退し尻餅を付く。
「シック!」
すぐに勢いをつけて起き上がった怪物。
横に回ろうとしたパフュームと併走しながら光の弾を放つ。
ドンドンドン
パフュームはそれを一つ二つと前に出ながら流れるようにふわりと避ける。
怪物の直前まで接近すると殴りかかってきた手もスケートのスピンのように避けて、そのまま回し蹴りをドームの頭に叩き込む。
「なんと柔らかで自然な動きでござるか!」
ポズーイが驚いている間に怪物は沈む。
※技バンク
リッタッチを手に取る。
リッタッチから輪が飛び出す。顔の大きさほどの輪。
「パフュームフープ!」
大きなハート。サイドに小さなハートが二つずつ。
銀色の小さなハートが一つ光る。
フルーティーは反対側を掴む。
タンとタンバリンのように枠を叩く。
シャランと鳴る音と同時に大きなハートが輝く。
「プリキュア!サウザンド・フレーバー……」
振りかぶり、突き出す。
「スプライト!」
ハートからたくさんの粒が集まった光の帯が放たれる。
怪物に直撃。光が包む。
「はあああ!」
輪に腕を通し手首の辺りで回すパフューム。
銀色の光が竜巻のように昇る。
「シーックシク……」
怪物は浄化され家の一部が元の位置に戻った。
「できる!面白そうだが、任務優先でござる」
ポズーイは消えた。
舞を覆っていたクリスタルが砕ける。
「舞さん!」
支えるパフューム。
「千香ちゃんがプリキュアか……。もしかして一人で頑張ってるの?」
「たぶんもう一人頑張ってる子がいます。まだちゃんと会えてないけど、そんな気がします」
「そう。よかった。きっと大切な存在になるわ」
「はい!」
「わいもおるで!」
走ってきたアルト。
「そうだね。今日はありがとう、アルト。あっ……」
光り出すパフュームとアルト。
「すみません。もう帰る時間みたいです」
「帰る?あなたは……」
「私の知ってるプリキュアにはキュアイーグレットはいません」
「世界が違うのかもしれんのや。まだよう分からんけどな」
少しずつ浮かぶ。
「そう。でも会えてよかったわ。世界が違ってもあなたは立派なプリキュア」
「ありがとうございます」
舞の優しい笑みに笑い返すパフューム。
「きっと大切な人たちはみんなつながってる。絆の力があればプリキュアは負けないわ」
「はい!またきっと会いに来ますから!」
大きく手を振って光に消える。
変身は解け、千香は光の中を漂う。
浮いている鳥籠をつかむ。
近づいてきた人影が叫ぶ。
「私は日向みのり!」
あの三つ編みの女の子。
「私は森田千香!プリキュア!」
どちらも手を伸ばす。
「私も!」
届かない。
そのまま離れていく。
公園のど真ん中。
「わわっ!」
幸い誰もいないが慌てて去る。
「待ってーな!」
公園を出たところでアルトを籠に入れる。
「やっぱりあの子はプリキュアなんやな」
「そうだね。早くちゃんと話したいな」
「同じプリキュアや。近いうちに……」
「うん。私もそう思う」
千香は前を見て家に向かった。
ED♪
「ガンバリードでビートハート」
※Cパート
夕暮れのクローバータウンストリート。
寄り添って歩く美男美女。目をそらそうとした千香。
しかし見覚えのある人。
「美希さんに和樹さん」
「あ、千香ちゃん。やっほー元気?」
少し美希の様子がおかしい。空元気だろうか。
いつもは美希の方が胸を張って堂々と歩いているが、今日は和樹より控えめだ。
「美希さんどうかしたんですか?」
「え?元気無さそうに見える?そんなないわよ!」
ふんぞり返る美希。
「あた」
勢いを付けすぎたせいで腰に負担がかかった。
「姉さん。無理しないで、少しくらい僕に頼ってよ」
「ありがと和樹……いたた」
「そういうわけだから、ごめんねまたゆっくり話そう」
和樹のスマイル。
「は、はい!」
去っていく二人。
「夕日で真っ赤やで」
「そ、そうだね!さ、帰ろう!」
千香は走り出した。
「ちょっと千香はーん!」
揺れる籠にしがみつくアルト。千香は構わず走った。
予告
ちょっとちょっと!チョラピ!
どういうこと?お姉ちゃんが?もうプリキュアってなんなの!
でも、悩んでられない!私もプリキュア!
次回!
「伝説と動物とあだ名と正体!」
またみてね
D
※アバンなし
OP♪
「包んでSpiral Flavor」
CM〜
※Aパート
「伝説と動物とあだ名と正体!」
「アイスが食べたいッピ」
「おなか壊すよ」
勉強机に座っているものの宿題は進んでいない。
スケッチブックと見つめる。
「まだその子のこと考えてるッピ?」
「だって分からない事が多すぎるよ。ちかちゃんか……」
階下から母の声が聞こえる。
「みのり、コロネ帰ってきたよ!」
「ほんとに?今行く!」
「ッピ……?」
外に出るとペットキャリーバッグを持った咲と舞。
「こんにちわ。みのりちゃん」
「あ、舞お姉ちゃん!いらっしゃい!」
コロネをキャリーバッグから出す。
「コロネお帰り!」
みのりはもふもふする。
「コロネもおじいちゃんだね。夏バテで入院なんて」
咲が少し寂しそうな顔をする。
心配するなとばかりにふてぶてしい顔でにゃあと鳴く。
「ちょっと大事な話があるから部屋使うね」
しばらく日陰で頭を撫でていたが咲と舞は部屋へ向かった。
「うん。私はもう少しコロネといる」
二人が通過するのを待って物陰に隠れていたチョラピが入れ替わりに出てくる。
「置いていかないでほしいッピ!」
「あ、ごめんねチョラピ。もう一人の家族、コロネだよ」
チョラピはコロネの目の前で固まる。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。目つきは怖いかもしれないけど……」
「コロネ様!」
チョラピの目がうるうるし始めた。
「え?」
「伝説のコロネ様ッピ!」
「コロネが伝説のなんだっていうの?」
渋い顔をしてガッツポーズをするように手を片手を前に出し語りだすチョラピ。
「その身に精霊の王女を宿し、プリキュアと共に戦いピンチを救った英雄」
「はあ?」
「そうやって語り継いでいくように教わったッピ。見た目も教えてもらった通りッピ」
当のコロネはチョラピを一瞥しても、何事もなかったように目を閉じる。
「本当かな?何かと間違えてるんじゃない?」
「本当ッピ!プリキュアの一人の飼い猫だったって聞いたッピ!」
そこまでは軽く冗談半分に聞いていたみのりだったが、急に表情を変えた。
「それって、6年くらい前かな?」
「こっちの時間はわかんないッピ」
コロネの前にしゃがんでいたみのりはすっと立ち上がる。
「プリキュアって正体ばれたらどうなるの?」
「え?そんなのわかんないッピ。でも……」
「でも?」
「いつか普通の女の子に戻るッピ。だったらやっぱり知られない方がいいッピ」
咲と舞がいるであろう部屋の方を向いて目を閉じ考える。
そしてチョラピを抱き上げた。
「行こうかチョラピ」
「ッピ?」
みのりは階段を上がり部屋をノックする。
「お姉ちゃん。私も大事な話があるんだけど」
みのりはドアを開けた。
咲と舞はみのりのスケッチブックを真剣な顔で見ていた。
「みのり、この子はお友達?」
「え?」
千香のスケッチ。
「まだ、よく知らないんだけど……」
「それにそのミミンガみたいな子は……」
舞がじっとみのりの抱えているチョラピを見る。
「ッピ!」
ついに声を出してしまった。
『やっぱり!』
二人の声が揃ったとき、みのりの体が光り始めた。
「うそ!ここで?」
移動の合図。
「あの光って……」
「うん!千香ちゃんと同じだ!」
心配そうに見つめる咲と舞。
「大丈夫ッピ!みのりも立派なプリキュアッピ!」
「すぐ戻ってくるから!」
カッ
光の中に消えた。
「みのりがプリキュアなんて……」
「千香ちゃん、キュアパフュームの言ってた子ってみのりちゃんだったのね……」
「でもどうして?私たちはここにいるのにみのりがどっかいっちゃうわけ?」
「千香ちゃんはどこから来たのかしら?今度のプリキュアは私たちとは違いすぎる……」
二人は当時のことを思い出す。そして出会った場所と精霊たちを思い出す。
「大空の木に行こう!」
「そうね。あの子はフラッピとチョッピによく似てる」
咲と舞はトネリコの森へ向かった。
「うーん」
もう慣れたもので考え事をしながら流れにまかせる。
千香が流れてきた。あちらも何か考え込んでいる。
すれ違う直前まで言葉が見つからず見詰め合っていた。
「頑張ろうね!」
「うん!こっちはまかせて!」
エール。それだけの会話だった。
公園。最初に来たところによく似ている。
「お姉ちゃんたちがプリキュアかぁ……。だったらこんな移動しないでも良かったんじゃないかな?」
「それだと千香ちゃんと出会えなかったッピ」
きらきらとした川面の太陽を見る。
「それもそうだね。ラブさんや美希さんにも会えなかったかもしれないか」
「ラグナラボは二つの町に来てプリキュアを狙ってるッピ。きっと他にもとんでもないことを……」
「よし!」
胸を張って仁王立ち。
「とにかく!今できることをやろう!全力でノリノリナリ!」
「ノリノリッピ!」
風が吹く。
「……って言ってもどうしたもんでしょうねチョラピさん」
「今度は手がかりがあるッピ!」
「そ、そうね!ラブさんと美希さんには会ったから、せつなさんと……」
「ブッキーさんッピ!」
止まる。そして頭を抱える。
「どう考えてもあだ名だよ!ブッキーさん?どうやって探せって言うの!」
いい香りがしてきた。
「ん?」
「おなかすいたッピ」
チョラピを抱えて香りの方に歩いていく。
車とテーブルとイス。ドーナツと書いてある。
店主は男性。客はいない。
「お譲ちゃん、どう?カオルちゃんのドーナツ。おいしいよ」
「薫ちゃん?」
その名前は憧れのきれいなお姉さんと同じ。
しかし目の前にはサングラスにエプロンの変わったおじさん。
「何もそんなに驚くこと無いじゃない。おじさん傷ついちゃう」
「すみません。知り合いのお姉さんと同じ名前で……」
「あら、それはショックかもね。ぐは」
いい笑顔というより、なにかすごいインパクトのある笑顔だ。
「お詫びに一つサービス」
「え?」
差し出されたドーナツひとつ。みのりは戸惑いながらも食べる。
「おいしい!」
「でしょ?」
「うちパン屋だからこういうの食べなれてるんだけど、それでもすごくおいしいです」
「おやおや、厳しい審査に通ってよかったよかった」
「じゃあ、これとこれと、あとジュースください」
「はいよ」
ついテーブルに落ち着いてしまった。
死角を利用してチョラピも一緒に食べる。
「おいしいッピ!」
「ね」
「もっとほしいッピ」
「はいどうぞ。サービス」
「ありがとうッピ」
差し出しされたドーナツを受け取るチョラピ。
「あ!チョラピ!」
おそるおそるカオルちゃんを見る。
「大丈夫、おじさん細かいこと気にしないから」
すっと車に戻る。
「なんかすごい人だね」
「あの人に聞いてみるッピ」
「うん。私もそんな予感がする」
しっかりと味わって食べ終わると席を立ってカオルちゃんのところへ。
「あの。私、人を探してるんです」
「ん?どんな人?」
「せつなさんていう人とブッキーさんていう人。それしか分からないんですけど」
「知ってるよ」
「やったッピ!」
もう堂々としているチョラピ。
「せっちゃんはどこにいるか知らないけどブッキーは山吹動物病院の娘さんじゃない?」
「山吹だからブッキー?」
チョラピと顔を見合わせる。
「前はよくここに来てたよ。ラブちゃんとか美希ちゃんとか」
「そうそう!その人たちです!」
「みんな大人になっちゃって来てくれる回数が減ったのは寂しいけど、こんな風に新たな出会いもあるよね」
いい笑顔できめるカオルちゃん。
「ありがとうございました!」
「あ、ちょっと」
みのりはそんな顔を見ることなく深く礼ををして走って行った。
「場所言ってないんだけどねえ……」
公園の出口。
少し呼吸を整える。もう日が暮れ始めた。
「さあ、行こう!ノリノリナ……」
「どっちに行くッピ?」
「あ!場所聞くの忘れた!」
「みのり……」
あきれるチョラピ。
「ワン!」
「わあ!」
「ピィ!」
驚くみのりとチョラピ。
大型の犬。いつの間にかそこにいた。
アイキャッチ
CM〜
アイキャッチ
※Bパート
じっとこちらを見て尻尾を振っている。もう吼えるわけでもない。
「コロネの毛でも付いてたかな?」
「こらー!ハッピー!」
追いかけてくる少年。同じ歳くらいだろうか。
「悪かったな。大丈夫?」
「うん。なんともないけど。大きな犬だね」
しゃがんで首を抱え、自分の方に引き戻す。
「うちは大きな犬が好きなんだよ。苦手?」
「そんなことないよ。うちは猫だけど」
「じゃあ猫の臭いでも付いてたのかな?ハッピーが女の子に吼えるなんて珍しい」
首輪に紐をつける。公園の中で遊ばせていたのだろうか。
「ハッピーっていうんだ。幸せそうな名前だね」
「まあね。そういう町だから。ほら、病院行くぞ」
ぎょっとするみのり。
「え?どこか悪いの?」
「いや、夏バテになる前に検診」
「そっか。よかった」
安心する。そして思い出す。
「もしかして山吹動物病院ていうところ?」
「そうだけど?」
「本当に?良かった!私もそこに行きたいんだけど場所がわからなくて」
「もしかして、それ?」
「え?」
指を指されたチョラピ。冷や汗。
「いや、ただのぬいぐるみか。結構変な生き物扱ったりするんだよね。じゃあ、行こうか」
「う、うん。よろしくね。私は日向みのり」
「俺はタケシ。中二」
「私も」
「へえ。どこの中学?俺は四つ葉中学」
「私は夕凪……」
「ゆうなぎ?聞いたこと無いな。遠いところから来たのか」
「うん。まあね。山吹動物病院てどんなところ?」
「そりゃあ、親切でいいところさ」
犬のような絵が描かれた建物にはすぐに辿り着いた。
なかなか分かりやすい。
入り口から人が出てきた。
ナース服を着たふわふわのサイドテールの女性。
背は小さいくて顔も幼いが、ところどころが大人の女性らしい。
「あ、タケシくん。ごめんね。ちょっとバタバタしてて……」
「何かあったんですか?」
「えーっと。ちょっとね。ハッピーのことはお母さんに頼んであるから」
「え」
残念そうなタケシ。
「その子は?」
みのりに気付く。
「ここに来たいみたいだから連れて来たんだけど……」
みのりから見て、今までとだいたい同じくらいの年齢の女性。
「あの。少し相談というかお話があるんですけど」
「私に?動物のことかな?」
「いえ、違います。ブッキーさんのことです」
「え?」
見知らぬ少女にブッキーと呼ばれた祈里。
みのりは真剣に祈里を見つめる。
胸に抱いたチョラピは一瞬いのりにウインクした。
目をぱちくりするいのり。そして何かを感じ取る。
「じゃあ、歩きながらでいいかな?」
「はい」
「じゃあね。祈里さん。また」
病院に入っていくタケシ。
「いのりさん?」
「私は山吹祈里」
「私は日向みのりです」
「みのりちゃん?いのりとみのりか。似てるね」
「はい」
笑い合う。すぐにみのりは祈里の優しさを感じていた。
少し歩いて病院から離れる。
「あの、ラブさんと美希さんてご存知ですか?」
「ラブちゃんに美希ちゃん?知ってるけど?お知り合い?」
「あたりッピ!」
チョラピがみのりの腕の中から飛び跳ねる。
「きゃ!」
おどろく祈里。
「さっきのは見間違いじゃなかったのね。これはなんていう動物かしら?」
次の瞬間にはらんらんと目を輝かせる。
「動物じゃないッピ!チョラピは精霊ッピ!」
「精霊?」
頭を撫でる。そして昔、妖精さんと言っていた存在を思い出す。
「じゃあ、みのりちゃん。もしかして千香ちゃんとアルトくんがどこにいるか知ってる?」
「千香ちゃん?アルトくんは知らないですけど、千香ちゃんは……」
「みのり!来たッピ!」
チョラピが叫んだ。
先ほどまでみのりたちがいた場所に現れたベノン。
「近いな。動物病院とはちょうどいい。ベリーマッチ」
入り口のドアが開く。
「む?ベアー?いや、人か」
恰幅のいいヒゲのおじさんと若い男性。
「助かりました山吹先生。こういうの見てくれる人がいて」
「きちんと責任を持って育てておられるようでなにより。逃がさないように気をつけてくださいね」
「そりゃあもちろん。大変なことになっちゃいますからね」
男性はペット用にしては無骨で大きな箱を持っている。
「大変なことか。ナイスナイス。結構だ」
「はい?」
「それは何が入っているのかな?」
顔を見合わせる二人。
ベノンは真夏にコートまで着てる奇妙な男。
しかし少年のように笑う若い男性。
「ふふ。驚かないでくださいよ。実は……」
こそこそと耳打ちする。
「ほう!それはグッド。モアベター」
興味があるように見え、好意的にとる二人。
「興味ありますか。あなたは?」
「美しき猛毒の錬金術師さ。グッナイ」
ベノンが薙ぐように腕を振ると黒い風が二人の男性を通り抜ける。
すると二人は眠るようにゆっくりとへたり込み倒れた。
「お父さん!」
ラグナラボの出現を意味する光で戻ってきた祈里とみのり。
「安心したまえ。眠っているだけさ。今はまだ数人分でもポッシブルはデリートすべきでない」
「何言ってるの?」
言葉遣いだけでなく意味もわからない。
「これほどのアヴィリティがありながら、プリキュアには有効でないとは皮肉なものだ」
「プリキュア……やっぱり。じゃあ、あの人……」
祈里は事態を少しずつ理解する。
「さあ、今日のシックシクは一味違うよ。生物に宿らせるのさ!」
「生物?」
「ふふふ」
箱のフタを開けるベノン。
「とにかく!好き勝手にはさせないよ!」
みのりはリッタッチを構える。
※変身バンク
「プリキュア!フィーリングソウルエナジー!」
天に掲げて叫ぶとみのりを光が覆う。
パネルをタッチすると四葉のクローバーが画面の上に飛び出した。
息を吹きかけるとクローバーが回転し輝く。
緑色の風がみのりを包む。
胸元には真っ白の大きなリボン。肩からボディ、スカートまで明るい緑色。
フリルは薄い黄色がなびく。
同じ緑を基調としたアームウォーマーにレッグウォーマー。
インナーのアームカバーとレギンス、ブーツは濃いピンク。
両膝とベルトの中央、手の甲には赤く丸いリンゴのポイント。
イヤリングにはさくらんぼのように小さく。
髪はオレンジ色に染まる。三つ編みはそのままに、髪留めは一枚の桜の花びら。
後ろ髪は少し伸びて垂らしたまま。
少しだけ頭の上に持っていって花の髪留めで留める。
小さく双葉のようにぴょこんとはねる。
リッタッチは腰元のケースに収まった。
「緑の四葉は命のしるし!世界を育む実り!キュアフルーティー!」
大きく手を天にかざす。はじける光。
「いざ!成敗なり!」
ベノンに向けて手をかざす。
「召喚!シックシク!我が呼びかけにこたえよ!」
箱の影から赤い光が拡散し昇る。
同時に巨大化したもの。
「きゃあああああ!」
目にしただけで叫ぶフルーティー。
「フルーティーどうしたッピ!」
チョラピが声をかける。
怪物は舌を出す。
「ヘビはイヤ!」
目を閉じ腕を前に出し顔を背ける。腰が引けている。
「そ、そんなに怖いッピ?」
「怖いんじゃなくて、なんかイヤなの!」
「なんでッピ?」
「わかんないよ!確かに昔は大丈夫だったような気もするけど……」
恐る恐る直視する。
巨大なヘビ。神話の怪物のようだが、そんなことは関係ない。
「スネークの恐ろしさがよく分かっているようだね!錬金術といえばスネーク!」
そんなことも関係ない。
「どうしようー!やだー!」
もはや普通の女の子。見て取ったベノン。
「チャンスは有効に!隠者の石よ!」
祈里の足元が光る。
「きゃああ!」
祈里は大きな六角柱のクリスタルに閉じ込められた。
「フルーティー!」
チョラピが叫ぶ!
「あ!祈里さん!どうしよう……。私のせいだ……」
震えながらヘビの怪物とクリスタルの中の祈里を見る。
「よし!シックシク!足止めをしておけ!ふぬ!」
ベノンはクリスタルを担ぐ。
「場所をチェンジすればいいのだ!エクセレントアイディア!バアイ!」
家を飛び越すほどの跳躍で屋根や電柱の先を次々と渡っていく。
「フルーティー!追いかけるッピ!」
「そんなこと言われても……」
そのとき、病院のドアが開いた。
病院の中から出てきたタケシ。
「なんだ?でかいヘビ!」
ありえない大きさの怪物に驚く。
「シーック!」
巨大な割れた舌先が前に出した手の指先に触れた。
その瞬間、フルーティーの中で何かが弾けた。
「いやあああ!」
フルーティーの胸のリボンがほんの一瞬だけカラフルに色が乱れる。
球状の光に包まれ、無我夢中で怪物を突き飛ばす。
ドゴン!
まるで漫画で星になるように怪物は大空に吹き飛んだ。
「あれは!プリキュア!プリキュアじゃないか!」
タケシが思わず叫ぶ。
「プリキュア……。プリキュアだもん!」
チョラピを抱えて跳ぶ。飛んでいった怪物とベノンの方へ。
日が落ちる。白かった月が光を帯びる。
川原。堤防の下が広くなっている。
「よし、いいスペースだ」
その場所に着地したベノンは祈里の入ったクリスタルを立て水晶を見る。
「少し集まりが悪いか。この状態で無理矢理移動するのはノーグットのようだ」
祈里が衰弱する。
「しかし時間はある。このままじっくりと……」
急に大きな影に入った。
上空を何かが通過する。
ドッゴーン!
ザアアー!
川面に叩きつけられたヘビの怪物。衝撃で水しぶきが舞い上がる。
「ア、アンビリーバボー!ホワイ!ホワイ!」
慌てるベノン。
追いついたキュアフルーティー。
「見つけた!」
堤防の上から駆け下りる。
しかしつまづいて転ぶ。チョラピは腕から飛び上がった。
「あ、あれ?力が……」
立ち上がることもままならない。
「やっぱりさっきのは良くない力の使い方だったッピ」
「うん……。なんとなくわかる」
奇妙な構えで警戒していたベノン。
「こんなところまで吹き飛ばしたからにはそれなりのパワーを使ったのか。シックシク!」
「シーック!」
川から上がってくる怪物。月光にリンクする巨大な影。
「どうにかしなくちゃ……」
怪物がフルーティーに迫る。
思わず目をつぶるフルーティー。
しかし怪物は動かない。
「え?」
「アタックだ!ファイだト!シックシク!ホワイ!」
わめくベノン。
「人のぬくもりを覚えているのね……」
祈里がクリスタルの中でつぶやく。
「ホワッツ?そんなファンタジーはありえない!ましてや攻撃された相手に!」
「警戒している相手を驚かせてしまったことを分かっているのよ……」
クリスタルが輝き出す。
「ノー!有り得ない!」
「有り得ないかしら?」
「まさか……。パワーと同時に知識まで強化されたのか?それはタブーだ!敵になる前に!」
ベノンの手に黒い霧が集まり始める。
「その子を救って!」
一帯を覆うほど柔らかな光が拡散する。
「ぬおお!」
ベノンが苦悶する。
輝きがフルーティーに移った。
立ち上がるフルーティー。
フルーティーの胸にある大きな白いリボン。
「チェンジ!ベリードライブ!」
光が集まり鮮やかな黄色に変わる。
「ごめんね。分かってあげられなくて……」
リッタッチを手に取る。
「今、戻してあげるから!」
※技バンク
リッタッチを手に取る。
リッタッチから輪が飛び出す。顔の大きさほどの輪。
「フルーティーフープ!」
大きなハート。サイドに小さなハートが二つずつ。
イエローの小さなハートが一つ光る。
フルーティーは反対側を掴む。
タンとタンバリンのように枠を叩く。
シャランと鳴る音と同時に大きなハートが輝く。
「プリキュア!スパイラルハーベスト……」
振りかぶり、突き出す。
「スプライト!」
ハートからたくさんの粒が集まった光の帯が放たれる。
怪物に直撃。光が包む。
「はあああ!」
輪に腕を通し手首の辺りで回すフルーティー。
黄色の光が竜巻のように昇る。
「シーックシク……」
怪物は浄化され元のヘビに戻った。
「ラストのパワーでどうにか集まったが……、計算違いばかり……ネクストリベンジ!」
ベノンは悔しそうに去った。
祈里を覆っていたクリスタルが砕ける。
倒れそうになる祈里は足を前に出して一歩一歩ヘビまで近づく。
実際には特別大きくはない。ウナギくらいだろうか。
「よかったね」
「すごい。強くて優しくて……」
「今日は危なかったッピ」
フルーティーは手を握り締める。
「すみません。私、取り乱しちゃって……」
「いいのよ。私にも苦手な動物がいたわ。大丈夫」
力んだ手に優しく触れる祈里。
突然光り出し浮き始めるフルーティー。
「え?も、もう?なの?」
「もう帰るみたいッピ」
「これって……、千香ちゃんと同じ?」
「祈里さん!きっとまた会いに来ます!本当にありがとうございました!」
手を離す。そして笑顔。
「あなたには勇気がある。きっと大丈夫。私、信じてる」
フルーティーとチョラピは光の中に消えた。
「おーい!」
「お父さん」
山吹先生と飼い主の男性。そしてタケシがやってきた。
「うちのペットは?」
「大丈夫ですよ」
地面で丸くなっているヘビ。
「ああ、よかった!」
男性は箱にヘビを入れる。
「大丈夫か、祈里。なんだか疲れてるみたいだが」
「大丈夫よ」
タケシは辺りを見回す。
「確かに見たんだけどな……」
タケシは首をひねる。
光の中を流れるみのり。
「ちょっと反省かな……」
「仕方ないッピ。みのりはきっとまた成長したッピ」
チョラピのはげましは少し引っかかる。
「なんかくやしいー」
チョラピの顔をこねくり回す。
「ピ!ピピピ……」
光の向こうから千香が来た。千香も難しい顔をしている。
「早く一緒に頑張れるようになりたいね……」
「私ももっと相談とかしたい……」
ぴょこんと出てきたフェレット。
「大丈夫や!あのお方はきっと分かってくれるで!」
「もしかして君がアルト?」
「せや!癒しの妖精さんやで!」
「その子は?」
「チョラピは恵みの精霊ッピ!」
『あ!』
離れていく。
『もっと聞きたいことあるのにー!』
大空の木の前で祈るように待ち続けていた咲と舞。
カッ
木の穴が光る。
「よっ!」
上手く着地するみのり。
「うわ!真っ暗だ!」
辺りはすっかり夜。
「みのり!」
森が震えるほど大きな咲の声。
「お姉ちゃん!」
走ってきて抱き寄せる。
「よかった!おかえり!」
「ごめんね。ただいま」
ED♪
「ガンバリードでビートハート」
※Cパート
月明かりに照らされる帰り道。
「みのりがプリキュアか……」
「お姉ちゃん、何回同じこというの?お姉ちゃんたちに出来たんだから私だって」
「知ってるから余計に心配なのよ。みのりちゃん」
「そうそう。私の心の力なんていくら奪われても、みのりを危険に巻き込むなんて……」
「でも誰かがやらなきゃ」
抱えていた腕を伸ばしチョラピの顔を見る。
「もしかして、それで別の世界と入れ替えを?」
「みのりは強くなったッピ。プリキュアはみんなすごいッピ」
チョラピはなにか感動するように目を輝かせている。
「別の世界か。どうだった?」
「すごくいいところだよ。幸せな町。プリキュアの人たちもいい人だった」
「そりゃあ、プリキュアだもんね」
「でもシックシクとかいう怪物はやっつけられたけど、三回ともちゃんと守りきれなくて心の力の一部を持っていかれちゃったみたい」
『え?』
顔を見合わせる咲と舞。みのりは焦る。
「やっぱり私、ダメなのかな?千香ちゃんはどうだった?」
「あ、うん。だいたい同じだと思う。私たちも水晶に閉じ込められたりして……」
「それより今、三回って言った?」
「うん。今日も途中ですれ違って……」
「どうして?私と舞だけじゃないの?」
「え?向こうには四人いるみたいだけど」
「咲、もしかして……」
パンパカパン。
「満!」
駆けつける三人。外のイスに座って月の光を浴びている。
「大丈夫よ。ちょっとだけ嬉しいのは何故かしらね」
笑顔。しかし咲や舞よりも大幅に弱っているように見える。
「でも次は多分……」
「薫お姉さん?」
鼓動。
予告
アルトが妖精さんってバレちゃった?なんで?
あのときのプリキュア?やっと会えたと思ったのに!またなの?
大丈夫!今は私もプリキュアだから!きっと頑張れる!
次回!
「伝わる輝く!心の強さ!」
またみてね
E
※アバン
千香の部屋。壁に飾られた額の中に色紙が入っている。
「おかしいな。あんなにいっぱい買ってきたのに」
戻ってきた千香。
「アルト、私がお土産に買って来たドーナツ知らない?」
床で寝ているように見えたアルト。
「うぐぐぐぐ……」
「アルト?」
苦しんでいるようだ。
「大変!えっと!動物病院でいいのかな?」
「よ、妖精さん……やで。ガックシ」
OP♪
「包んでSpiral Flavor」
CM〜
※Aパート
「伝わる輝く!心の強さ!」
山吹動物病院。
クマのような先生。深刻な顔をしている。
「祈里。ちょっと来てくれ」
二人で何か話している。
「この話は祈里の方がいいだろう」
「うん」
先生は部屋の外に出てしまった。
しばらくして戻ってきた祈里。
「千香ちゃん、落ち着いて聞いてね」
深刻そうな祈里の顔。
「ま、まさか深刻なんですか?アルトのことだからどうせ食べすぎだって思ってたのに!」
頭を抱える。
「あら、よく分かったわね。その通りよ」
「え?」
「食べすぎは良くないわね。何食べたの?」
「たぶん、ドーナツです。なくなってたし」
アルトは顔を前足で隠して恥ずかしそうにしている。
「やっぱりドーナツなのね」
「あの、本当にそれだけですか?なんだか……」
一呼吸置いた祈里。息を呑む。
「この子はフェレットじゃないわね?スイーツ王国の妖精さん?」
「な……」
「なんでや!」
思わず起き上がったアルト。
「アルト!大丈夫なの?」
「おかげさんでな。でもなんでわかったん?」
「あなたたちにはおへそがないでしょ?」
「え?そうなの?」
アルトのおなかを見る。
「おへそてなんや?」
「本当にただのお友達ならそれでいいの。でももし大変なことになっているのなら、私たちにも教えてくれない?」
顔を見合わせる千香とアルト。
「あんさん、プリキュアやな?」
祈里はアルトから千香に目線を移す。
そして一度目を閉じてから真っ直ぐ視線を向けて言った。
「そうよ」
千香は戸惑う。
「あのときの……。あのときのプリキュア?」
頷く祈里。
「そっか、だからあのとき……。じゃあ、ラブさんや美希さんも!」
「ずっと隠しててごめんね」
「どうして謝るんですか?あのとき、すごく元気をもらえて私は……」
一歩祈里に近づこうとしたとき、千香の体が光りだす。
「なんや!今かいな!」
「千香ちゃん?これって……」
体が浮き始める。
「私、もう行かなくちゃ!祈里さん!できるだけ皆さんと一緒にいてください!」
「気をつけるんやで!」
「え?えー!」
カッ
光の中に消えた。
「ど、どうしよう!」
慌てる祈里。
なぜか部屋の隅や棚、ゴミ箱を調べる。
「えっとえっと!」
やっと電話に辿り着く。
「もしもし?ラブちゃん?大変なの!」
「ブッキー!もしかして前に話した変な人が来たの?」
近ごろは電話でしか話していないが、ラブからも美希からも奇妙な電話があった。
「違うの!千香ちゃんとアルトくんが光の中に消えちゃって!」
「光の中?それって私たちが見たのと同じかも!」
「とにかく、こっちからそっちに向かうから!」
「分かった!美希たんもそろそろ来るから、予定より早いけど商店街の通りで会おう!気をつけてね!」
部屋を出る。そこにクマ父。
「どうしたんだい」
「そ、それが……」
いきなり消えたと言うわけにもいかない。
「それより、そっちが済んだならこっちを手伝ってくれ」
大きな箱を持った飼い主が一人。
「よ、よろしくお願いします」
汗をかいて必死そうだ。
「そういうわけで、急ぐよ。なに、すぐに終わる」
「う、うん」
目の前のできることを放置するわけにもいかない。
祈里はヘビの口から孫の手を引っ張り出す。
「よし」
「よかった!ありがとうございます!」
「よかった。あ!お父さん!」
祈里はまだ慌てている。
「悪かったね。用があったんだろ?もう大丈夫だ」
「うん」
再び部屋を出たところでもう一つ思い出す。
「お母さんどこ?」
「え?いないかい?」
今度は母を捜す。廊下でぶつかりそうになる。
「お母さん!ちょっと大事な用ができちゃったの!この後のハッピーのことお願いしてもいい?」
「いいけど、そんなに慌ててどうしたの?」
「後で話すから!ごめんね!」
祈里はドアを出た。
光の中。
「うーん」
もう慣れたもので考え事をしながら流れにまかせる。
みのりが流れてきた。あちらも何か考え込んでいる。
すれ違う直前まで言葉が見つからず見詰め合っていた。
「頑張ろうね!」
「うん!こっちはまかせて!」
エール。それだけの会話だった。
海の見える坂の上。
「そっか。あんなに近くにいたんだ」
「なんや。みんな知り合いだったんかいな」
遠くを見つめる。海の向こうに見える記憶。
「そうだね。どっちにもすごく元気をもらってお世話になっちゃった」
「でも、せやったらわざわざこっちこなくてもええのにな」
「ううん。来れて良かったよ。ここはすごく素敵なところ」
大きく深呼吸。
「わいもここにいると力がみなぎるんや」
胸を張るアルト。
「それに、みのりちゃんに会えた。まだよく話してないのに、うれしい」
「せやな……。て、のんびりしとる場合とちゃうで」
「そうだね。咲さんか舞さんを探すしかないかな?」
ぐるりと見渡す。舞の自宅の場所にあたりをつける。
「出会いは運命やからな。前もその前も会えたわけやし。プリキュアは引かれ合うんとちゃう?」
「そうだといいけどね」
アルトが何かに気付く。
「ん?なんやいい香りが……」
香ばしい。お腹を刺激する。
「本当だ」
「これも運命の出会いやで」
さっさと走り出すアルト。
「ちょっと!」
追いかける。
一軒のパン屋さん。賑わっている。
「パンパカパンとはええ名前やないの」
「本当!すごく魅力的!」
「ほな行こか」
アルトを捕まえる。
「待って。お店の中はダメ。外で待ってて」
「そんな」
「お腹を壊さない程度に買ってきてあげるから」
「はい」
先ほどの件を反省するアルトはしぼんだ。
アイキャッチ
CM〜
アイキャッチ
※Bパート
中はいろいろなパンが並んでいる。
「わあ、迷っちゃうな」
キラキラと目を輝かせて迷っていると、お店の奥さんと思われる女性が話しかけてきた。
「いらっしゃい。あんまり見ない子ね。中学生?」
「はい。お腹が空いて吸い込まれちゃいました」
照れる千香。
「あら、じゃあ今焼きたてのパンができるから食べていったら?」
「え?」
「庭にテーブルとイスがあるから。あとで飲み物も持っていってあげる」
「え?でも」
「心配しないで。サービスよ」
「いいんですか?ありがとうございます!」
笑顔のお礼。
また新しい客が来る。髪の長い女性。
「こんにちは日向さん」
「あら、明日香先生」
「先生なんてやめてくださいよ」
千香は何気ない会話がふと気になった。
「今……」
「いらっしゃいませ。焼きたてのパンです」
奥から綺麗な若い女の人が出てきた。
三角巾とエプロンをしているが、似たような髪形をしているせいか親近感がある。
数年後の自分を想像する。
「満ちゃん。この子に焼きたてのパンと飲み物お願いしていい?」
「はい」
奥さんは客の女性と話し始めた。
「いらっしゃい。一人?」
「いえ、外にもう一人」
正確には一匹だ。
「ちょっと待ってね」
お盆にチョココロネとジュースとおしぼりが二つずつ。
千香はそれを受け取る。
「今からオススメのパンを持っていくからテーブルで待っててね」
「はい。ありがとうございます!」
外に出ると庭の手前でアルトが身構えている。
「なにやってるの?アルト」
いきなり四つんばいになって頭を下げるアルト。
「恐れ入りましたで師匠」
「はあ?」
建物の角の先を見ると風格のある猫。
「ほ、本当になんだか師匠っぽく見える……」
「ほな、お世話になりますわ」
「なに?」
「まあ、ゆっくりしてけってことや」
「そうなの?」
千香はイスに座る。アルトも登る。
「チョココロネおいしー!」
「ふわふわモチモチやで」
日が落ち始めている。まわりも赤く染まる。
「ねえ、アルト。私たちが最初に会ったところ、病院だったでしょ?」
「よう覚えとるで」
「私、小さい頃入院してたんだ」
「どっか悪かったんか?」
思い出す。あの頃の大きな思い出。
「うん。手術が必要なくらい」
「ほんまか!」
心配そうに千香を見るアルト。
「今は大丈夫なんだけどね」
「そうやったんか」
「小さい頃は手術が怖くてね」
「そら誰だって怖いわ」
前足を組んで唸る。
「でもね。そのとき町に出てくる怪物たちを倒すプリキュアが大活躍してたの」
「ピーチはんたちやな」
「そう。それでね。プリキュアが応援してくれたら手術も大丈夫だって思ったの」
「ほう。せやけどそれは……」
「うん。そんな簡単じゃないよね。でも偶然病院に来てたラブさんたちがプリキュアにお願いしてくれるって言ったの」
閃いたようにポンと手を打つ。
「なんや。それが本人たちやったんか」
「でも約束を守ってくれた。途中で怪物と戦って、それでも来てくれたの」
「さすがプリキュアやな」
「うん。それがプリキュアなんだね」
目を閉じる千香。アルトも何度も頷く。
「あ、でもね。実はもう一人元気付けてくれた子がいてね」
話の途中だったがパンがやってきた。
「お待たせ。あら?もう一人って……」
「あ、すみません。こんなんで……」
「こんなんて……」
聞こえないようにつっこむアルト。
「お姉さんもパンを作ってるんですか?」
「私はただのアルバイトよ。でも、ときどき教えてもらってるわ」
「やっぱりパン屋さんになりたくて?」
「そうね。まだまだだけどね。これと、これと……あとメロンパン持って来るから」
「そ、そんなに?」
いくつか置いてまた取りに行ってしまった。
「なんや……。なんやろう」
「どうしたの?」
「あの人、なんかわいと同じような気配がすんねん」
「なにそれ?」
「なんちゅうんやろか。そこらの人よりも自然の気配が濃いんや。」
「じゃあ、もしかしてプリキュア?」
「いや、他のプリキュアの時はそんな感じはせえへんかった」
悩むアルト。もやっとした表情。
「ねえ、気になることと言えばなんだけど。さっき中でパン屋の奥さんが日向さんって呼ばれてたの」
「日向さん?」
「みのりちゃんて日向っていってたよね?」
「そうやったな。あれ?最初に会った咲はんも日向やなかった?」
「偶然にしては、雰囲気もなんだか似てたし……」
「兄弟、いや姉妹か。姉妹でプリキュアかいな!……できすぎやない?」
「でもどこかで繋がってたら……」
満が戻ってきた。
「メロンパンができたわ。私はこれが一番好き。私も一つ食べるわ」
「わあ、輝いてる」
「遅くなっちゃったかしら。食べたら送っていくわね」
エプロンを畳む。Tシャツとデニム。ラフだが美しい。
「あの、聞きたいことがあるんですけど」
「私に?」
「日向みのりちゃんって知ってますか?」
「え?みのりちゃんならこのパン屋さんの子だけど?お友達だったの?」
「も、もしかして咲さんも?」
席を立つ千香。
「ええ。咲とみのりちゃんは姉妹で……。今はいないけど……」
ズンズンと迫る。
「もしかして舞さんもご存知ですか?」
「ええ、咲と舞は友達だけど……」
目も前まで迫る千香。
「例えば、あんなのが突然しゃべりだしたらどう思います?」
「どうっていわれても……。ねえ、落ち着いて?」
アルトも呆然と見つめている。
「はっ!深呼吸……。リフレッシュ」
我に返る千香。
「ねえ、そっちのお友達ってやっぱり何か特別なの?少し雰囲気が私の知り合いに似てるわ」
「もうええやろ。わいはアルト。妖精さんや」
しゃべり出したアルト。
「妖精さん?私は霧生満。よろしくね」
慌てない満。メロンパンを手に取る。
「あんさん、どっからどうみても普通の人間なのに。なんやろうか。ちょっと気になるわ」
少し困った顔をする満。
「私は森田千香。お姉さん、プリキュア?」
「え?」
「えらい直球やな」
「私は……」
カッ
空が輝く。
光を帯び始めた月を背負い、ポズーイが現れる。
「無駄な演出決め込んできおったで!」
「偶然じゃない?」
ポズーイもすぐに千香とアルトに気付く。
「ほう。目の前とはちょうどいいでござる。そしてそれらしき者もいると」
水晶を出すポズーイ。
「む?どういうことでござるか?」
庭に下りてくるポズーイ。
「満さん。逃げてください」
「人の形はしてるけど……なんなの?」
昔感じたことのある気配と似ているがさらになにかが違う。
「それはこちらの台詞」
「なにを……?」
「いや、そこはたいした問題ではない。問題はプリキュアだったかどうかだが……」
「プリキュアだったかどうか?何が目的?」
満は戸惑いながらも千香を隠そうと動く。
「間違いなく戦士の心。だが、今までと違うでござる。いや、プリキュアに匹敵するのなら構わん!」
「なんだかよく分からないけど、させない!」
満の前に出る千香。
「おっと、今日は兄者より授かった知恵を披露しよう!生命体への作用でござる!」
「生命体への作用?」
「左様!」
「それ言いたいだけちゃうの?はっ!まさかわい?」
アルトは一人で慌てる。
「老いてはいるが、その風格。ふさわしいでござる!」
ポズーイは試験管を出す。視線は斜め下。
「師匠!」
「コロネ?いけない!」
赤い液体がコロネにむかって飛ぶ。
満はとっさに手を伸ばす。持っていたメロンパンで受けた。
赤い光。
メロンパンが変形する。
「な!なんだと!」
満が手を離すとメロンパンが巨大化する。
手と足とが生え、鋭い目のようなものが浮かび上がった。
「シックシク!」
「なにこれ……。ウザイナーみたい?」
驚く満。そしてポズーイ。
「し、失敗でござる!なんと軟弱!」
「なんかいけそうな気がするで!」
普段よりいくらか小さい。叫ぶ怪物。
「シーックシク!」
「なんの声かしら?」
人の声が近づいてくる。
「沙織さん!明日香さん!いけない!」
満の声が届くか届かないか。
「シーック!メローン!」
ドン!
メロンパンの形をした両手を地面に叩きつける。
「え?」
「なに!」
波紋のように駆け抜ける衝撃。
その場にいる全員の意識を奪う。そして眠るように倒れる。
宵の静寂。
「なんなの?」
「むう?」
すぐに目を覚ます千香とポズーイ。
「なんや?」
「今のは?」
続いてアルトと満が起きる。
角の向こうで倒れている店の奥さんと客。
満は慌てて駆けつける。アルトも続く。
「寝てるだけ?よかった……」
周りを見ると他の客も皆倒れている。
笑い出すポズーイ。
「ふはははは!まさかこれほどとは!よほど思いの込められたものらしいでざるな」
「そうよ!簡単に踏みにじっていいものじゃないのよ!」
千香はリッタッチを構える。
※変身バンク
「プリキュア!フィーリングソウルエナジー!」
天に掲げて叫ぶと千香を光が覆う。
パネルをタッチすると立体的な黄色い五芒星が画面の上に飛び出した。
息を吹きかけると星が回転し輝く。
青い色の風が千香を包む。
解かれてなびく髪。
肩と胸の辺りは薄いピンク。胸元には星のワンポイント。
ボディからスカートまでマリンブルー。
全体の端を薄いピンクのフリルがなびく。
腰元に真っ白の大きなリボン。
同じ青を基調としたアームウォーマーにレッグウォーマー。
インナーのアームカバーとレギンス、ブーツは黒。
両膝とベルトの中央、手の甲には赤く丸いオレンジのポイント。
イヤリングにはさくらんぼのように小さく。
髪はグレーに変わり左側に垂らしてまとめるルーズサイドテール。
肩のあたりに下がった髪留めは、丸いふちの中に赤い風車を模している。
リッタッチは腰元のケースに収まった。
「千の泉に香る星!ナチュラルフレッシュ!キュアパフューム!」
大きく手を天にかざす。はじける光。
「飛んでいけ!悪いの!」
天にかざした手をポズーイと怪物に向ける。
「プリキュア?あの子が?」
驚く満。
「シーックシーック」
怪物は踊っている。
「あの攻撃さえどうにかすればなんとかなりそうね」
「シーック!」
両腕を振り上げる。
「満さん!アルト!」
瞬時に二人を抱えて跳び上がる。
「とうっ!」
ポズーイも跳んだ
ドン!
地面を叩く。しかし何も起こらない。
「ほう、気付いたか」
「振動でしょ」
屋根の上に降り立つ。
「少し離れていれば大丈夫だと思います。こんなところですみません」
「大丈夫よ。昔は空だって飛んだわ。頑張って!」
キュアパフュームはポズーイを睨みつけ再び怪物の前に立つ。
「分かっていないようでござるな!本来なら我々やプリキュアのような存在に効果はないはずの力!」
「やあああ!」
ど真ん中にパンチ。
「シーック!」
よろける怪物。
「それが、遠巻きの攻撃で効果があった!ならば!直接当ればタダではすまないということでござる!」
「シーック!」
拳を振るう怪物。
「当らなければ問題ないわ!」
右に左によける。
「やあ!」
「シック!メローン!」
怪物は自分に拳を当てた。
「え?」
振動するメロンパンボディ。
そこに蹴りが当たる。
「あっ……」
互いによろける。
「メローン!」
怪物の拳がとんできた。
ドン
「きゃ!」
両手を畳んで防御したパフューム。僅かに後退する程度の威力。
しかしパフュームは前のめりに倒れた。
「勝負あり!」
ポズーイは屋根に跳ぶ。
拳を握り構える満。
「なんや!あっちいけ!」
前に出て立ちふさがるアルト。
「邪魔でござるよ」
頭をつかまれ放り出される。
「アルト!」
落下するアルト。
「隠者の石よ!」
「きゃあああ!」
満はクリスタルに閉じ込められた。
ポズーイの持つ水晶が光る。
「なんという、様々な力が融合した存在。どうだ?場合によっては我らと共に……」
「お断りよ……!」
鋭い目。
「いい目だ。もったいない。しかしやはり衰弱がプリキュアより激しいようでござるな」
満は崩れるように両膝を突いた。
「ナーゴ」
低い声が聞こえる。
立ち上がるパフューム。
「シック」
「なにごと?」
優しく微笑む。
「聞こえたよ。ありがとう」
「さすがやで師匠」
アルトを背に乗せているコロネ。
「シック」
身構えるシックシク。
「深呼吸。リフレッシュ!」
辺りが明るくなる。
「あなた知ってる……?」
「もう力はいただいた。言い残すことがあるなら聞くのもよいでござろう」
「プリキュアはね。どんなに小さな希望も命の力に変えられるのよ!」
降り注ぐ光。
ポズーイの体から煙が出る。
「な!なんとお!」
クリスタルから距離をとる。しかし何も変わらない。ポズーイの力を奪う。
「これは!」
上空を見るポズーイ。そしてパフュームを見る。
パフュームの腰にあった大きな白いリボン。
「チェンジ!ブライトドライブ!」
光が集まり鮮やかな黄緑色に変わっている。
「何をしているシックシク!プリキュアは触れることすらできん!早く倒すでござるう!」
「シック!」
ズン!
地面を叩く。同時に跳ぶパフューム。
「シック!」
下で振りかぶる怪物。
「よし!」
落下中に飛んでくるパンチ。
「やっ!」
キュン
パフュームの足元が光り空中で跳ねる。
「い、いまのはなんでござるか!」
飛び越えて怪物の裏へ着地。
「シーック!メローン!」
自分を撃つ。全身を振動させて突っ込む怪物。
「そうだ!それでいい!」
静に片手を前に出すパフューム。
現れる光の円。
覆いかぶさるように跳んでくる怪物。
「光よ!」
ドン!
大きな光の弾が怪物を撃ち屋根より高く吹き飛ばす。
「なん……だと!」
※技バンク
リッタッチを手に取る。
リッタッチから輪が飛び出す。顔の大きさほどの輪。
「パフュームフープ!」
大きなハート。サイドに小さなハートが二つずつ。
黄緑色の小さなハートが一つ光る。
フルーティーは反対側を掴む。
タンとタンバリンのように枠を叩く。
シャランと鳴る音と同時に大きなハートが輝く。
「プリキュア!サウザンド・フレーバー……」
振りかぶり、突き出す。
「スプライト!」
ハートからたくさんの粒が集まった光の帯が放たれる。
空中で怪物に直撃。光が包む。
「はあああ!」
輪に腕を通し手首の辺りで回すパフューム。
黄緑色の光が竜巻のように昇る。
「シーックシク……」
元に戻ったメロンパン。パフュームはそれをキャッチする。
「月の力を使うだと……!信じられん!」
ポズーイは体を動かしにくそうにしながらも去った。
満を覆っていたクリスタルが砕ける。
すぐに屋根の上に跳んで満を支えるパフューム。
降りてイスに座らせる。顔色が悪い。
「アルト!どうしよう!いつもより元気ない!」
「なんやて!」
満の手を握る。駆けつけるアルト。
「少し休めば大丈夫よ」
「でも……」
「私はさっきの人と同じだったの」
静かに語る。
「私と双子の姉妹の薫は、プリキュアを倒すためにこの町に来た」
「え?」
「でもね、咲と舞は私たちのことを知っても友達だって言ってくれた」
「……素敵」
こぼれ出る言葉。
「この世界は私たちの思いに応えてくれたわ」
「まさか、世界樹と精霊の奇跡かいな!」
「なにそれ?」
「わいも話に聞いただけなんやけどな。しかも最近」
光りだすパフュームとアルト。
「なんや!時間かい!」
「私、帰らなくちゃいけないみたい!ありがとうございました!パンおいしかったです!」
浮き始める。それに驚く満。しかしすぐに笑顔に変わる。
「また食べに来てね」
「来ます!絶対!すぐに!」
光の中に消える。
目覚める人々。
「あら?地震だったのかしら?」
「夢?」
沙織は満に声をかける。
「満ちゃん?あの子は?」
立ち上がって笑顔で答える。
「さっき帰りました。また来るそうですよ」
「そう。よかった。満ちゃん?どうかした?疲れたかな?」
「いえ、大丈夫です。でも少しだけ休んでいきますね」
「無理しないでね」
「はい」
満はイスに座り月を見上げた。
光の中を流れる千香。
「今日はちょっと油断しちゃったかな」
「見かけがあんなんやったからな」
「アルトも危ない目にあわせちゃったね」
「わいは多少の危険は覚悟しとったで。へっちゃらや」
光の向こうからみのりが来た。みのりも難しい顔をしている。
「早く一緒に頑張れるようになりたいね……」
「私ももっと相談とかしたい……」
ぴょこんと出てきたアルト。
「大丈夫や!あのお方はきっと分かってくれるで!」
「もしかして君がアルト?」
「せや!癒しの妖精さんやで!」
「その子は?」
「チョラピは恵みの精霊ッピ!」
『あ!』
離れていく。
『もっと聞きたいことあるのにー!』
動物病院の前。
「千香ちゃん!」
到着と同時に声をかけられる。
そこにはラブと美希。
「プリキュア……なんだね?」
ラブの問いに頷く。
「あんさんたちもやな?」
前に出るアルト。
「タ、タルト?」
「え?でもなんか違うような……」
「わいはア、ルトや」
アを強調する。
「もしかしてタルトとアズキーナの?」
美希の顔が引きつる。
「ま、そういうことですわ」
『えー!』
千香は首をかしげた。
ED♪
「ガンバリードでビートハート」
※Cパート
ラブの部屋。
祈里も合流する。千香はお泊りすることになった。
「えっと、何から話そうか」
さすがのラブも言葉が詰まる。
千香は立ち上がって頭を下げた。
「ありがとうございました。すごく力になりました。手術の時も、そして今も」
涙を溜める千香。
「千香ちゃん……」
ラブは落涙。
「元気になってよかったわ。でも、ちょっと心配事ができちゃったけど」
祈里も涙を拭う。
「それだけに今、私たちにできることが少なそうなのが残念ね」
「みのりちゃんのことは?」
クッションに座りなおす千香。
「まだよくわからないけど、私の行った場所はみのりちゃんの場所だったみたい」
「みのりちゃんの町?どんなところ?」
「こらラブ」
「海が綺麗で空気が濃くて、生きてるって感じられるところです。あとパンがおいしかったかな」
「いーなー。そっちのプリキュアもフレッシュな感じだね。クローバーできそう?」
「ラブちゃん……」
「プリキュアは二人だったそうです」
「そうなの?じゃあ、今日は?こっちはもう三人とも……」
「プリキュアを倒しに来た人だったそうです。でも友達になっちゃったんだって。やっぱりすごい」
『え?』
顔を見合わせる三人。
「私もプリキュアをずっと応援してたから分かるかも。あの、ところでパッションさんは?」
「やっぱり次はせつな……」
ラブは電話を手に取った。
予告
みんなに送り出されてノリノリで来たのに!ここはどこ?
なんだか会うのは大変そうだけど、困ってたら集まってくれるいい人ばかり!
そんなときにやってきたラグナラボ!小さなシックシクがいっぱい?どうしよう!
次回!
「歩き始めた国!志を守れ!」
またみてね
F
※アバン
夕凪町にある保育園。
「ごめんなさいね。アルバイトなのに泊まってまで」
エプロンをしたおばさんが謝る。
そして長い髪をバックにし、おでこが特徴的な女性が一人。
「いえ。大丈夫です。では失礼します」
「お疲れ様、ゆっくり休んでね」
女の子が一人。おばさん先生の足の後ろから顔を出して手を振る。
「かおるせんせい。さようなら」
「はい、さようなら。またね」
笑顔とおでこがまぶしい。
門を出たところに4人。手を振る。
「薫お姉さん!」
「みのりちゃん!みんな!」
全員で迎えに来た。
「行こうか」
「うん!」
OP♪
「包んでSpiral Flavor」
CM〜
※Aパート
「歩き始めた国!志を守れ!」
月の綺麗な夜。パンパカパンにやってきた薫。
「こんばんわ」
「久しぶりね、薫ちゃん。満ちゃんが良くなるまでゆっくりしてね」
「すみません」
みのりと咲の部屋。
満はベッドで寝ていた。
「久しぶりね咲。焼けてるわね」
「薫も子供の相手をしてると美白じゃいられないみたいね」
腕と顔は少し焼けている。
「舞、この前の絵本。すごく良かったわ」
「よかった。安藤さんのおかげかな」
ベッドの隣へ。
「満、大丈夫なのね?」
「うん。そばにいたこの子のおかげかな」
みのりの頭の上にいる生き物。
「この子がチョラピ?」
「ッピ!よろしくッピ!」
「本当にプリキュアなのね……」
沈黙。
「なにがあったの?」
「なにから話していいのかわからないけど……」
「じゃあ、私たちの話からしようか」
それからみのりは咲と舞がプリキュアとして頑張っていたときの話を聞いた。
妖精との出会いや怪物との戦いは似たような部分もあった。
思わず泣いたり笑ったり。それはまさしく伝説だった。
話はみのりと千香の話に。半身を起こす満。
「泉の郷に何かあったの?襲ってきたのは何者なの?」
「わかんないッピ」
みのりも知恵熱が出そうなほど考えてみる。
「ラグナラボという組織がプリキュアの心の力を狙ってる。それだけしか……」
「目的は?ダークフォールとは違うのかな?」
「どうして入れ替わったりするのかしら?」
「わかんないッピ」
チョラピがしょんぼりし始めた。
「ま、そんなに焦る事無いよね。ははは……」
咲のフォロー。慌てたみんなはチョラピを元気付けて話は終わった。
「みのりちゃんとチョラピにお呼びがかかったら、ラグナラボとかいう人たちも来る」
「そうね。そして千香ちゃんも来る。交代でみのりちゃんと一緒にいれば連絡できるわ」
「薫を守って、千香ちゃんを助ける。できるかわからないけどやるしかない」
姉たちの横顔はまさにプリキュア。みのりはまた頑張ろうと心に決めた。
それから、二、三日。四人は交代でみのりと一緒にいた。
ある朝、チョラピがみのりをたたき起こした。
一枚の輝く大きな葉っぱを持っていた。神秘的なほど瑞々しく青々としている。
「きっとなにかあったッピ!」
「何かって?」
「わかんないッピ!でもわかるッピ!大空の木に行くッピ!」
強引なチョラピ。押し切られた。
みんな集まり、薫を迎えに行った。
そして大空の木。
大きな葉が光り宙に浮く。
「お久しぶりですみなさん」
聞こえてきた声。
みのりだけが首をかしげる。
『フィーリア王女!』
声が揃う。
「再び皆さんを巻き込んでしまいました。申し訳ありません」
「それより泉の郷は大丈夫なんですか?」
「何か特殊な力に囲まれています。泉の郷全体が眠るように封印されています」
「フラッピ、チョッピ……フープ、ムープも?」
心配する舞。
「眠らされています。まるで時が止まっているように」
「そんな……」
「ある協力者のおかげでチョラピやアルトさんをプリキュアの元へ送ることができました。それだけしかできなかったとも言えます」
そのとき聞き覚えのない幼い声がした。
「フィーリア王女!時間です!そろそろ移動しないと!」
「分かりました」
急に慌しくなった。
「申し訳ありませんみなさん!またすぐに必ず説明します!」
「みのりさん。あなたには何も説明のないままで申し訳ありません」
「大丈夫です。きっとなんとかしてみせます!」
「みのり!」
咲と見つめ合うみのり。無言で頷く。
「薫お姉さん……本当は私が守ってあげたいけど……」
「みのりちゃん。大丈夫。きっと大丈夫」
みのりとチョラピが光だし浮き始める。
「行ってきます!」
「気をつけてね」
「頑張って」
「無理しないでね」
「負けるんじゃないよ!みのり!」
光の中に消える。
光の流れに乗る。
「よし!全力でノリノリナリ!」
正面を見据える。
しかし千香が流れてこない。
「あれ?おかしいな」
そのまま光の外へ出た。
摩天楼。
不思議な光のライン。
未来的なその場所に見覚えはない。
「どこここ!」
「クローバータウンじゃないッピ!」
うろたえる二人。
「千香ちゃんともすれ違わなかったし!どうなってるの?」
「わからないッピ……」
「全力でノリきれなーい!」
頭を抱える。
チョラピを抱えてきょろきょろとしながら歩く。
普通に人は歩いている。しかし都会に耐性のないみのりは少し怖気づく。
周辺の造りは美希にあった場所の非ではない。未来的すぎて都会と言ってもいいのかすら分からない。
「みのり、空を見るッピ」
「え?」
晴れ渡って青い空。
「ありがとうチョラピ」
みのりは少し元気が出た。
「どうかしたの?」
同じくらいの歳の女の子。薄い桃色の髪にヘアバンド。
地味なブルーのジャージ。部活でもしているのだろうか。
「あの、ここはどこですか?」
そんな質問にきょとんとする。
「幸せを探す国、ラビリンスよ」
「幸せを探す国?ラビリンス?」
また少し不安になる。聞いたこともない。
「どこから来たの?」
「海原市の夕凪町っていうところから……」
「夕凪町?知らないわね」
頭の中から考えを搾り出す。
「クローバータウン、四つ葉町は?」
「クローバータウン?留学するの?」
「留学?」
「それならせつなさんに……」
「せつなさん?そう、せつなさんに会いたいの!」
思わずチョラピを放り出して女の子の手を握る。
「ひどいッピ」
「あ、ごめんチョラピ」
女の子はチョラピを見たがそれほど驚きもしない。
「でも、そんなに簡単に会えないと思うけど」
「そうなの?困ったな」
すると人が集まってきた。
「どうかしたのかい?」
「せつなさんに会いたいんだって」
女の子を中心に会議が始まる。
「せつなさんに?忙しい人だからな」
「誰かどうにかできそうな人はいないか?」
「とにかく、中央塔に行くしかないな」
「国王に言った方が早くないか?」
大事になってきた。
「え?王様?なにもそこまで……」
慌てるみのり。
「国王なら町でアンケートとったりしてそのへんで見かけるけど」
「国王ってそういうもんじゃないの?」
「とにかく、せつなさんは中央塔で間違いないだろうから後は……」
半笑いで首をかしげるみのり。
「なんだか感覚が違うみたい。どう思う?チョラピ」
「チョラピはそういうことはわからないッピ。でもみんな真剣に考えてくれてるッピ」
「そうだね。ちょっと変わってるけどいい人たちだね。あれ?この場合私が変わり者なのかな?」
高い塔が見える。頭一つ抜き出ている。
「あれが中央塔だよ」
解説してくれる女の子。
「高いね」
「前は三倍くらいあったんだよ」
「ええ?」
さすがに慌てる。
ふと香ばしい匂い。
この香りは記憶にある。
道の反対側に店がある。
「ドーナツ?」
「うん。ラビリンスの名物だよ」
「そっか。カオルちゃんのドーナツかと思った」
集まった人たちがざわつく。
「君、カオルちゃんさんを知ってるのかい?」
「カオルちゃんさんて……。知ってますよ。少しだけ」
「クローバータウンから来たの?」
「ちょっと違いますけど、お世話になったので……」
「すごい!カオルちゃんさんは偉大なるドーナツを発明なさった方だ!」
なかなか彼らとの調子が合わない。不思議な話ばかり。
「なんか誤解があるみたい……」
「でも、なんだか楽しそうッピ」
そんな言葉にきょとんとする人々。
「楽しそう、か」
「ついこの前までこの国は幸せを知らずに、いや幸せを捨ててただ生きる国だったんだ」
「食事がおいしいと思うことすら失われていたんだ」
「え?」
「大変な話だったみたいッピ」
未来的な街との矛盾した内容の本当の意味。
少しみのりには難しいが耳を傾ける。
「それは人の心を恐れた自分たちのせいでもあったけど、ドーナツと伝説の戦士に救われたんだ」
「伝説の戦士!」
もはやドーナツは耳に入らない。
「それから国王はドーナツをみんなに伝えたんだ。それから国王はドーナツこくお…」
「みのり!来たッピ!」
突然チョラピが叫ぶ。
ズズン!
中央塔から煙が出ている。大きな穴が開いていた。
アイキャッチ
CM〜
アイキャッチ
※Bパート
塔の方に走る。民衆も共に駆けつける。重要な場所だということは誰にでも分かる。
塔から黒い塊が落ちてきた。
「シックシク!」
黒い球体から手と足が生えている。表面には鋭い目のようなものが二つ。
そして中央には数字が書いてある。サイズはいつもより小さい。
「みのり!いつものやつッピ!」
「そんな!じゃあ、せつなさんは!」
黒い怪物は落ちてくると柱のようなオブジェの天辺にしがみついた。
背中にも数字がある。
「なんなの?」
「数字が減ってるッピ」
「え?」
みのりが確かめるとちょうど0になった。
ドン!
「きゃあ!」
「うわ!」
走って塔に近づこうとしていた人たちが爆風に煽られる。
「大丈夫ですかみなさん!」
「爆発したッピ!信じられないッピ!」
「なんて危ないものを……許せない!」
上空に見える黒い物体。たくさん塔にしがみついている。
「まだいっぱいあるッピ!」
「みんな逃げて!」
避難する人々。
「間に合わないかもしれないけど!なんとかしないと!」
リッタッチを構える。
※変身バンク
「プリキュア!フィーリングソウルエナジー!」
天に掲げて叫ぶとみのりを光が覆う。
パネルをタッチすると四葉のクローバーが画面の上に飛び出した。
息を吹きかけるとクローバーが回転し輝く。
緑色の風がみのりを包む。
胸元には真っ白の大きなリボン。肩からボディ、スカートまで明るい緑色。
フリルは薄い黄色がなびく。
同じ緑を基調としたアームウォーマーにレッグウォーマー。
インナーのアームカバーとレギンス、ブーツは濃いピンク。
両膝とベルトの中央、手の甲には赤く丸いリンゴのポイント。
イヤリングにはさくらんぼのように小さく。
髪はオレンジ色に染まる。三つ編みはそのままに、髪留めは一枚の桜の花びら。
後ろ髪は少し伸びて垂らしたまま。
少しだけ頭の上に持っていって花の髪留めで留める。
小さく双葉のようにぴょこんとはねる。
リッタッチは腰元のケースに収まった。
「緑の四葉は命のしるし!世界を育む実り!キュアフルーティー!」
大きく手を天にかざす。はじける光。
「いざ!成敗なり!」
フルーティーは落ちてくる黒い怪物を睨みつけた。
「プリキュアだ!」
少女は叫んだ。
「伝説の戦士だ!」
周囲が声をあげる。
また落ちてくる怪物。
「どうするッピ!」
「うまく打ち上げる!人がつかまったら大変!」
構えるフルーティー。しかし表情は決意と共に不安に満ちていた。
塔の内部。
穴の空いた壁から入ってきたコートの男。ベノン。
手には輝く水晶。
「ナイストゥミーチュー」
スーツを着た男が二人。身構える。
そして中央に黒髪の綺麗な女性。カジュアルなスーツ。
「もしかしてラグナラボとかいう組織の人かしら?」
「自己紹介はノーサンキュー?他のプリキュアから聞いたのかい?」
「でも、こんな派手に来るとは思ってなかったわ」
大きな穴。覗き見るようにしている何体かの怪物。
「こちらも少し驚いている。この世界は波長が合うらしい」
「どういう意味?」
「ここはまるでプリキュアと反するパワーが渦巻いていたようだ」
「な!」
驚く三人。
「かなり浄化されているが地の底にまだそんな気配が渦巻いているよ」
「私たちもまだまだってことね」
「そんな!せつなさんは頑張ってますよ!」
かばう男たち。
「おかげで私のパワーを直接使ったシックシクがあれほど凶悪に、それもメニーメニーできあがった」
一歩踏み出すベノン。
「ではそのパワー、いただくとしよう」
「させるものか!」
前に出るスーツの男二人。
「ユーたちでは無理だよ」
ベノンが払うように手を大きく振る。
黒い風が吹きぬける。
「うっ?」
二人は倒れた。
「さて、いつにも増してすごいソウルを感知している。イフまだ現役なら……」
せつなは両手を合わせる。
「させるわけナッシング!隠者の石よ!」
せつなの足元が光る。
「きゃああ!」
せつなは大きな六角柱のクリスタルに閉じ込められた。
落下してくる黒い怪物。
「最初はあれね!」
方向を見定めて落下前に体当たり。
花火のように打ち上がり空中で爆発する。
「やったッピ!」
すると次々と落ちてきた。
「いっぱい来たッピ!」
「数字の小さい奴から打ち上げる!」
フルーティーは次々と蹴り上げる。空中で爆発する。
それに巻き込まれるほかの怪物。
すると爆風で横に飛んだ怪物の一体がビルに跳ね返り、チョラピと少女の方へ。
「こっちにきたッピー!」
「いけない!間に合って!」
全力で走る。
しかし落下と共に数字が減る。
人にしがみつかれたら引き剥がしてる時間はない。
少女の目の前まで落ちてきた。
「うおおおお!」
ゴン!
大きな拳に打ち上げられる怪物。
はるか上空で爆発した。
目を開けるチョラピ。
がっしりとした体格の男が立っている。
「国王!」
「国王だ!」
白いマントに鎧のような服。確かにある意味で王様か将軍のような格好だ。
「あの人が国王?なんかすごい!」
「いったいどうなってるんだこれは!君はプリキュアか!」
「はい!」
大きな影ができる。しかし黒い怪物ではない。
「隼人!」
「みのりちゃん!」
なにか白くて羽の生えた生物が降りてきた。
乗っていたのはラブ、美希、祈里。そして同じ歳くらいの短い金の髪をした女の子。
さらにスタイルのいい長い髪の人物。どうやら男性らしい。
国王と同じような服装をしている。
「遅いぞ瞬」
「まさか、これほどとは思わなかったよ」
フルーティーに顔を近づける長細い生き物。
「ニッコニコ」
フルーティーは少し下がる。
「蛇じゃないから大丈夫よ。ホホエミーナっていうの」
祈里の言葉を信じて恐る恐る撫でる。
「よ、よろしくね」
「ニッコニコ」
フルーティーもなんとか笑顔になれた。
「久しぶり!ちゃんと国王様してる?」
「もちろんだ!ドーナツも日々研究しているぞ!」
「それでいいの?」
それが国王の仕事なのかと疑問に思うプリキュアたち。
「こっちはもう数も少ない。まかせて行け!」
「お願いします!」
女の子が降りてくる。
「千香を、よろしくね」
驚いたフルーティー。
「うん。きっと大丈夫だから」
両手で握手して、フルーティーはホホエミーナに乗った。
塔の上階に向かって飛ぶ。
塔に空いた穴から赤い光が漏れた。
「結構なサプライズだね。まさかクリスタルを自力で破るとは」
砕けたクリスタル。しかしせつなは力の大半を持っていかれよろける。
「あなたは一体……」
「しかしもう、やるべきことは終わっている。用はナッシング」
「せつな!」
ラブが叫ぶ。
穴から入って来るホホエミーナ。
「来たか。ん?あれは……」
ホホエミーナに興味を示すベノン。
全員が部屋に降り立つ。
「また酷いことしてるのね?」
フルーティーがベノンの前へ。
「私のミッションはこれでラストだよ。これで弟がミッションを終えればベースが出来上がる」
「ベース?」
「さて、底力を出される前に行くか」
捕まえようと前に出る瞬。
「逃がすと思ってるのかい?」
「私はユーたちよりも手軽に飛べる。が、その前にいい乗り物だな」
「何?」
ベノンは高速で移動し瞬に殴りかかる。
ドッ!
「くっ!」
腕を十字にして受ける瞬。引かない。
「グレイト。やはり強い。しかし!」
「ぐわっ!」
瞬が膝を突く。攻撃を受けた腕から煙が出ている。
「瞬!」
「毒?酸か?気をつけろ!」
「ふふ。それがプリキュアに効くのなら初めからそうしてるさ」
「なに?」
「ユーは時も場所も相性もバッドだったな」
「やあ!」
フルーティーの蹴りをひらりと避ける。
「はっ!」
かわしざまの裏拳。
「きゃ!」
少し飛ばされるが身を翻して着地。
「やはり効果ナッシング。ショッキング」
「同じ攻撃なのに?」
驚く瞬。
「しかし、今ならこいつも奪えそうだ」
試験管の中の赤い液体が沸騰してあわ立っている。
「召喚!シックシク!我が呼びかけにこたえよ!」
「ミー!」
赤黒く光るホホエミーナが叫ぶ。
ほとばしる閃光と稲妻。いつもと様子が違う。
「ハハハ!エクセレント!」
「シックワメーケ!」
凶悪な姿。純白の翼は黒く染まり、口は裂けるように大きく。
足こそ無いものの、まるで翼竜そのもの。
それに乗るベノン。
「さあ、追いつけるかな?間に合うかな?キュアフルーティー」
「どういう意味!」
「もう一人のプリキュアは私たちブラザーズ相手にいつまでもつか。シーユーバッドステージ」
ベノンと乗っ取られたホホエミーナは光に包まれて消えた。
「もう一人?千香ちゃんの方に行ったの?」
ラブが気付く。
「まさか!千香ちゃんが!お姉ちゃんたちが危ない!早く帰らないと!でもどうしたらいいの!」
「でも、また入れ替わったらフルーティーが一人ッピ!」
「それでもじっとしていられない!」
輝く葉っぱを出すラブ。
「どうにかならないの?」
「あれって……」
ここに来る前に同じものを見た。
「す、すみません。今の私では次の転送にあと十分以上は力を溜めないと……」
「それじゃ間に合わない……」
手を握り締める。
「キュアフルーティー。手を出して」
「え?」
せつながよろめきながらフルーティーの両手を握る。
「もっとゆっくり話したかったわね」
「大丈夫です!これからいっぱい話せますよ!」
少し固い笑顔。
「そうね。でもなぜかしら。プリキュアはいつでもあたたかい。それだけでわかる気がする」
「せつなさん?」
「私はプリキュアと戦い、プリキュアに救われ、プリキュアになった」
「え?」
「あなたは、私を支えてくれた人たちに似ている。凍っていた心も包み込む純粋な強さ」
僅かに赤く光る手。
「あなたならできる。精一杯がんばるのよ」
フルーティーの胸にある大きな白いリボン。
光が集まり鮮やかな赤色に変わる。
「わかる……。これって……」
頷くせつな。頷くフルーティー。
「チョラピ!帰るよ!」
「帰れるッピ?」
チョラピを抱える。
「あの!」
腕を押さえる瞬。
「気にせずに行きたまえ。しかし一つだけ」
「え?」
「やつら自身はプリキュアの何かの力に弱いのかもしれない。君は同じ攻撃をうけても平気だった」
「それって……」
「しかしプリキュアの力に近いホホエミーナは奪われた。やつらの道具には十分に注意するんだ」
「はい!」
「ホホエミーナのことは気にするな。負けるんじゃないよ」
頷く。
「みなさん!お世話になりました!」
「がんばって!幸せゲット!」
「プリキュアは負けないわ!」
「自分を信じて!」
「みんな応援してるから!」
「パッションドライブ!夕凪町へ!」
カッ
赤い光に消えた。
ED♪
「ガンバリードでビートハート」
予告
憧れのプリキュアの話。おっどろきの連続!
分からないこともいっぱいあるけど、勇気をもらって頑張ります!
でもでもでも!想像以上の大ピンチ?
次回!
「希望との再会!トネリコの森の戦い!」
またみてね
G
※アバン
公園を歩く。
ラブ、美希、祈里。そして千香、アルト。
「ラブ、いつまでその髪型なの?」
そういう美希は動きやすそうなパンツルックながら今日も完璧。
「だって大輔が……」
「まあ、幸せなのねラブちゃん」
いつも元気なラブがこの話になると少し大人しくなる。
「美希たんだって気合入ってるじゃない」
「そんなことないわよ。あたしはいつだって完璧。あ!瞬!」
長髪を縛った細身の男。こちらもモデルか芸能人のように見える。
「やあ、久しぶりだね」
OP♪
「包んでSpiral Flavor」
CM〜
※Aパート
「希望との再会!トネリコの森の戦い!」
朝早くから支度する千香。
「外国に行くなんて楽しみ」
「外国やのうて、パラレルワールドやで」
「似たようなものじゃない?火星人とか出てくるわけでもないんでしょ?」
「妖精さんはみんなかわいいで。そもそも、みのりはんとこもパラレルやないの」
「そうなのかな。実感無いけど、ああいうところも素敵だよね」
笑顔でアルトを見ると光り輝いている。
「え?まさか!」
自分を見る。しかし、いつもの光は無い。
もう一度よく見ると、光っているのはアルトではなくその前の空中に何かがある。
ひらりと一枚の輝く大きな葉っぱ。
「なに?」
「これは!」
アルトは葉っぱを手にとって表や裏を見たり振ったりしてみる。
「なんやろ。でも大事なもんな気がするわ」
「とにかくそれ持って行こう。プリキュアに関係してるならなおさら相談できる方がいいから」
アルトを抱えて家を出る。
「いってきます!」
「みなさんにご迷惑かけないようにね」
「うん」
母も面識がある分、ラブたちと過ごす事には安心している。
しかし実際はプリキュアとして戦っている千香。後ろめたさはある。
「今日あたり何かありそうな気がすんで」
「私もちょっと嫌な予感がする」
予定の時間には余裕がある。しかし気持ちが早って小走りになった。
公園で三人と待ち合わせ、瞬と出会う。
ラブの家で聞いたプリキュアの戦い。
千香はプリキュアが大好きで知っていることも沢山あった。
もちろん正体を知らないまま、やはりラブたちも大好きでよく知っていた。
しかし、戦っていたものの正体と、もう一つ。
キュアパッション。
いつの日か四人で行動していた。ラブの新しい友達、東せつな。
タケシがよく話していた。
そして千香と知り合う前に帰っていったらしい。
「戦っていたのは管理国家ラビリンス。せつなはそこの幹部だったの」
ラブはあっさりと言った。きっとそこには壮絶なやりとりがあったに違いない。
そして夕凪で会った満のことを思い出す。
「友達になれたんですね?」
「うん」
伝説の戦士の戦い。パラレルワールドすべてを管理しようとする存在。
そして管理国家ラビリンスは解放され、自分たちの手と足で幸せを探す国になった。
瞬を先頭に森に入る。
「ここは確か……」
「最初にラグナラボの忍者と会ったところやな」
「なに?本当かい?」
驚く瞬。
「はい。それから、最初に夕凪町に飛んで行ったのもここでした」
ラブが頭をひねる。
「えっと、ここは特別な場所で、次元の歪みが……なんだっけ?」
「とにかく、パラレルワールドへの扉を開きやすいらしいわよ」
苦い顔をする瞬。
「しかし多用しすぎたかな?不必要に扉が開くのもよくないが……」
足音がする。
「おそくなりました、南さん」
金髪のショートカット。
「え?千歳?」
「千香?」
お互いを見て驚く。
「あ、ラブさん、美希さん、祈里さん。どういうことですか?なんで千香が……」
「実はいろいろあって、私たちのことを話したの」
「何かあったんですね?最近、プリキュアを見たっていう噂もあるし……」
「まあ、そういうことや」
千歳を見て話すアルト。
「なつかしいわ。とてもおいしいドーナツをくれたあの子達にそっくり」
千歳はしゃがんで目線を合わせ、じっとアルトを見る。
「もしかして千歳は……」
「私、ラビリンスから来たの」
「そっか。なんか運命だね」
何かが変わるわけでもない。むしろ肯定的に事実を捕らえる。
その笑顔はいつか見たプリキュア。
「ありがとう。ねえ、千香が、プリキュア?」
「うん。だけど、噂のプリキュアは私じゃないの」
「どういうこと?もう一人戦ってる子がいるの?」
「おわっ!」
アルトが急に声を出した。
大きな葉が光り宙に浮く。
「お久しぶりですみなさん」
聞こえてきた声。姿は見えない。
「え?」
「誰?」
久しぶりといわれても声にほとんど聞き覚えが無い。
いや、正確にはみんな心のどこかでその声は分かっていた。
しかし、その記憶とはかけ離れた調子のしゃべり方。
「お疲れ様やでシフォンはん」
「シフォン?」
顔を前に出して驚くラブと美希。
「シフォンちゃん?」
頬に手を当てて驚く祈里と千香。
「はい、以前は大変お世話になりました」
うまく言葉が出ない。衝撃的。
「な、なんか……」
「うん、すごい礼儀正しい」
「立派になって……」
落ち着きを取り戻す。目を潤ませる祈里。
「そういえばタルトがシフォンには別の使命があるとか言ってたわね」
「そうね。だから会えなくて寂しかったわ」
「じゃあ、もしかして今がその使命を果たすときなの?」
ラブは気を張った。
「そうです。私の無限のメモリーと世界をつなぐ力を使うときが来ました」
「本来はそういうことだったのか」
驚く瞬。
「あ!」
「え?」
「フィーリア王女!時間です!そろそろ移動しないと!」
「わかりました」
突然の誰かとの会話。
「申し訳ありませんみなさん!またすぐに必ず説明します!」
千香を見るラブ、美希、祈里。
「シフォンちゃん」
「千香ちゃん。ごめんね。何も説明しないままで」
「いいよ。立派になったシフォンちゃんが頑張ってるんだもん。私も頑張る」
千香とアルトが光りだし浮き始める。
「やっぱりラビリンスには行けへんかったな」
「うん、なんとなくわかってたけど。千歳」
「千香……」
祈るような千歳。
「きっとみのりちゃん、キュアフルーティーが来てくれる。せつなさんはきっと大丈夫だから」
「うん。千香も戦うんでしょう?絶対に無事に帰ってきてね」
「うん!」
千香はラブたちの方を見た。
みんなプリキュアのような目をして頷く。千香もそれを受け取って頷いた。
光の流れに乗る。
「きっと大丈夫。深呼吸!リフレッシュ!」
正面を見据える。
しかしみのりが流れてこない。
「あれ?おかしいな」
そのまま光の外へ出た。
辿り着くと目の前に4人。
「あ、どうもみなさん」
いきなりの遭遇に驚いてギクシャクする。
「あなたが千香ちゃんね」
長い髪をバックにした長身の女性。冷静で優しそうな笑顔。
見た目は違うが満に雰囲気が似ている。
「はい。薫さんですね。よろしくお願いします」
「こちらこそ。あら、なにか心配事?」
気がかりなことがある表情を見抜かれた。
「途中でみのりちゃんとすれ違わなかったんです。いつも交代するみたいにすれ違うのに」
「え?」
冷静だった薫の表情が一変する。
もちろんみんな驚いている。特に姉である咲。しかし薫はそれ以上に。
「向かうところがラビリンスやったからやないの?」
「あ、そうかも」
「どういうこと?」
アルトを持ち上げて目の前で尋ねる薫。
「こっちの精霊たちの国やわいの王国みたいに、違う世界の人間にプリキュアがおるんや」
「つまりいつもみたいに行き違いじゃないからっていう、単純に場所の問題なのね?」
「多分そうやろ」
安心したのか大きく息を漏らす薫。
「それより、なんやここは。すごい力を感じるで」
「あ、あの葉っぱ」
「あれ?わいのは向こうに置いて来てもうたんやけど、チョラピはんのか?」
大空の木の葉が共鳴して光る。
アルトは薫の腕から降りて木を見上げる。
「こらすごいわ!世界樹の共鳴体やないの!」
「なにそれ?」
「シフォンはんらが無事やったってことはラグナラボに対抗する効果があったんやな」
「この光が?この木にそんな力があるの?」
「それだけやなくて、プリキュアと光る葉っぱ。全部合わせた感じがするわ」
「なんかわかる気がするかも」
大きさやうろを見ればそれなりに老いているようにも見える大空の木。
しかしあふれ出る生命力。千香は元気をもらう。
「来たで!」
ズズン
トネリコの森の鳥たちが飛び立つ。
アイキャッチ
CM〜
アイキャッチ
※Bパート
大きな影。
「揃っているようでござるな。その者が最後の一人か」
怪物の上にポズーイ。驚く咲。
「ひ、ひょうたん岩?」
ひょうたんの形をしているが無骨。鋭い目。とってつけたような簡素な手に対して重厚な足。
「こいつの上に乗ってみるとなにやら強い力を感じたでござる」
「シックシク!」
ある程度の距離を保って止まる。
「なるほど、近寄り難い。そちらも対策はほどこされているでござるな」
見合う。
千香はリッタッチを構える。
※変身バンク
「プリキュア!フィーリングソウルエナジー!」
天に掲げて叫ぶと千香を光が覆う。
パネルをタッチすると立体的な黄色い五芒星が画面の上に飛び出した。
息を吹きかけると星が回転し輝く。
青い色の風が千香を包む。
解かれてなびく髪。
肩と胸の辺りは薄いピンク。胸元には星のワンポイント。
ボディからスカートまでマリンブルー。
全体の端を薄いピンクのフリルがなびく。
腰元に真っ白の大きなリボン。
同じ青を基調としたアームウォーマーにレッグウォーマー。
インナーのアームカバーとレギンス、ブーツは黒。
両膝とベルトの中央、手の甲には赤く丸いオレンジのポイント。
イヤリングにはさくらんぼのように小さく。
髪はグレーに変わり左側に垂らしてまとめるルーズサイドテール。
肩のあたりに下がった髪留めは、丸いふちの中に赤い風車を模している。
リッタッチは腰元のケースに収まった。
「千の泉に香る星!ナチュラルフレッシュ!キュアパフューム!」
大きく手を天にかざす。はじける光。
「飛んでいけ!悪いの!」
天にかざした手をポズーイと怪物に向ける。
「プリキュアの心の力を奪って何をする気なの?」
パフュームは思い切って直接聞いてみた。
「崇高なるワグ様のお考えだ。我らは任務を果たすのみでござる」
口が堅いほうでないポスーイがそう言う。本当に知らないのかもしれない。
「騙されてるんやないの?」
容赦ないアルト。
「それはない。なぜならば我らはワグ様の……いや、余計な問答は無用!」
ひょうたんの怪物は頭のフタのようなものを外す。
「シッーック!」
ゴオオ!
ものすごい風で吸い込み始める。
「なんの!」
四人は互いを支え合ってふんばる。
「うまくいけば一気に……」
パフュームはタイミングを図り吸い込まれないように少しずつ近づく。
「あーれー」
「え?」
何かが飛んで行った。
「当然、一番軽いものが飛んで来るでござる」
ポズーイはしっぽを掴む。
怪物はフタを閉めて吸い込むのをやめた。
「アルト!」
逆さまのアルト。目を回している。
「このまま吸い込めば岩と一体化するでござる。出てきてもらおうか。額の君」
冷笑の薫。
「ひたいのきみ……。仕方ないわね」
「薫さん!」
「いいのよ。手を出して千香ちゃん」
「え?」
千香の手を握る。
「飛ばしてやりなさい」
薫は怪物の前へ。
ポズーイが怪物の頭から降りてくる。
「邪魔だな。持っていろシックシク」
ポズーイはアルトを怪物に渡そうと放り投げた。
「風よ!」
「なに!」
吹き抜ける風。
「なわわわー!」
アルトは風に乗る。
飛び上がりアルトを抱くパフューム。
パフュームの腰にあった大きな白いリボン。
光が集まり鮮やかな藤色に変わっている。
「だが!隠者の石よ!」
薫の足元が光る。
「ぐっ…!」
薫は大きな六角柱のクリスタルに閉じ込められた。
「よし!時間をかせげシックシク!」
着地と同時に離れるアルト。
「シック!」
再び頭のフタを開ける。
「ウィンディドライブ!はああ!」
風の塊を投げる。
「シック?」
風を吸い込んだシックシクは風船のようにふくらむ。
「シーック!」
逆流した風を吐きながら飛んで行った。
「か、簡単にやられすぎでござる!」
咲、舞、満がクリスタルにしがみつく。
「な!どけ!」
「どくもんですか!」
クリスタルにみるみる亀裂が入る。
「力が集中しすぎているでござる!これでは回収する前に!」
パフュームの蹴りが飛び込む。
「たあ!」
「ぬお!」
よけて距離をとる。
ポズーイの手にある水晶の光がわずかに弱まる。
「任務失敗なのか!」
カッ
空で何かが光り、落下してきた。
ズドン!
『きゃあ!』
爆風と砂煙。
「なにをしているブラザー!早くミッションを果たせ!」
「兄者!かたじけない!」
ポズーイは薫の閉じ込められたクリスタルを抱えて離れる。
「はあ!」
風で砂煙をよける。
「大丈夫ですか!」
「なに?今の?」
起き上がる咲たち。
「シックワメーケ!」
翼竜のような怪物。
翼を羽ばたかせて飛んだ。
旋回し爆風を巻き起こして飛ぶ。
「はあ!」
風と風がぶつかる。何度も往復してくる怪物。
受け流すたびに大空の木から光が失われ、咲たちの体力を削る。
「だめだ!このままじゃ!」
周りを心配する。動けない。
「え、えくせれんと……。だが、これはハードだ……。おっと」
帽子を押さえてしがみつくベノン。落ちそうになる。
一瞬、動きが鈍る。
「今なら!」
飛ぶパフューム。
「やあ!」
ドン!
腹部を蹴り上げる。
「ノー!叩き落とせ!」
「シックワメーケ!」
尻尾を振る。
「やあ!」
足に集めた風。空中で跳ねる。
「アンビリバボー……。ん?」
下の様子が変わる。
「シーック!」
ひょうたん岩の怪物が戻ってきた。
咲たちに迫る。
「踏み潰してしまえシックシク!」
「シーック!」
「だめ!」
飛んで割って入る。
ズン!
大きな足を受け止める。
「プリキュア!プレスエンドだ!」
さらに後ろから押しつぶそうと飛んでくる。
「くう……!」
千香が目を閉じる直前、赤い光が輝いた。
「とりゃあ!」
ドン!
「ノー!ノオー!」
蹴り上げられる翼竜の怪物。ベノンは放り出される。
すぐに岩の怪物の軸足を持ち上げる。
「ふぬぬ!やあ!」
「シック!」
バランスを失った怪物。それを投げる。
『シーック!』
ズズン!
翼竜の怪物は岩の怪物の下敷きになった。
パフュームは力が抜けて座り込む。
「遅くなってごめんね。やっと会えたね」
変身した姿を見るのは初めて。でもわかる。いつか来ると期待した瞬間。
「うん。ありがとう」
差し出された手を握り立ち上がる。
「もう、みのり。待ちくたびれたわよ」
砂埃にまみれた咲。しかしまだ笑顔は残している。
笑顔を返すフルーティー。
「新手だと?」
「ホワッツ!追ってきたと言うのか!」
慌てる兄弟。
「返してもらうわよ」
急にポズーイの背後に立つ。
「なんだと!」
振り返るともうそこにはいない。
クリスタルと共に元の場所へ。
「今のどうやったの?」
「わかんないけど、できちゃった」
咲、舞、満が薫のクリスタルに触れる。
すぐにクリスタルは割れた。
「すぐに大空の木の根元に運ぶッピ!」
チョラピが薫にしがみつくと、少し顔色がよくなった。
「むむ……。ミッションは?」
「完了している」
手元で光る水晶。
「シックワメ!」
「シーック!」
怪物同士がもめている。
「ノー!何をしている!敵は向こうだ!」
互いに前を見据える。
「行こうか。キュアパフューム」
「うん。行こう。キュアフルーティー」
走る二人。
「シックワメーケ!」
「シック!」
飛び立とうとする怪物。頭のフタを開ける岩の怪物。
『シーック!』
尻尾が頭の吸い込み口に詰まる。
もがいている間に蹴りで飛び込む二人。
『やあああ!』
ドン!
パフュームは翼竜の怪物を蹴り、空を追いかける。
フルーティーは岩の怪物を蹴る真っ直ぐに蹴って吹き飛ばす。
すぐに空を旋回し戻ってくる怪物。
何度もパフュームに襲い掛かるが、空を跳ねて避ける。
あきらめて空からフルーティーに突撃する怪物。
フルーティーは怪物の頭の上に瞬間移動し跳び箱のように両手で叩く。
「シックワメ!」
なんとか落下せず耐える怪物。
「はあ!」
飛んできたパフューム。風の塊が怪物の背を叩く。
「ワメ……」
ズズン!
完全に落下して動きを止める。
「シック!」
起き上がった岩の怪物。
頭から吸い込もうとするが突然頭の上に現れたフルーティーがフタを押さえつける。
「シック!」
怒った怪物は思いっきり殴りかかるが、そこにはもういない。
ゴン!
自分の頭を殴って沈んだ。
「圧倒的ではないか!」
「プリキュアの本当のパワーはチームで発揮されると聞いてこともあるような……」
驚く兄弟。
※技バンク
リッタッチを手に取る。
リッタッチから輪が飛び出す。顔の大きさほどの輪。
「パフュームフープ!」
大きなハート。サイドに小さなハートが二つずつ。
藤色の小さなハートが一つ光る。
フルーティーは反対側を掴む。
タンとタンバリンのように枠を叩く。
シャランと鳴る音と同時に大きなハートが輝く。
「プリキュア!サウザンド・フレーバー……」
振りかぶり、突き出す。
「スプライト!」
ハートからたくさんの粒が集まった光の帯が放たれる。
※技バンク
リッタッチを手に取る。
リッタッチから輪が飛び出す。顔の大きさほどの輪。
「フルーティーフープ!」
大きなハート。サイドに小さなハートが二つずつ。
レッドの小さなハートが一つ光る。
フルーティーは反対側を掴む。
タンとタンバリンのように枠を叩く。
シャランと鳴る音と同時に大きなハートが輝く。
「プリキュア!スパイラルハーベスト……」
振りかぶり、突き出す。
「スプライト!」
ハートからたくさんの粒が集まった光の帯が放たれる。
怪物に直撃。光が包む。
「はあああ!」
輪に腕を通し手首の辺りで回す二人。
藤色の光が竜巻のように昇る。
「シーックシク……」
翼竜の怪物は浄化され一枚の白い羽になった。
赤の光が竜巻のように昇る。
「シーックシク……」
岩の怪物は浄化され海へ飛んでいく。
「ミッション優先だが、あの技で追われるのはノーサンキューだな」
「ラボへ戻れ兄者。奥の手があるでござる」
薫の力を封じた水晶を渡す。
「奥の手?そんなものが?」
「プリキュア!スウィーツ王国で待つ!」
ベノンとボズーイは光をまとって消えた。
「スウィーツ王国やて!」
「アルトの国?」
パフュームは白い羽根を拾う。
「あいつ、なにするつもりや……」
震えるアルト。
「いきなさい二人とも」
支えられる薫。
「薫お姉さん……」
「あなたたちはプリキュア。絶対に守れるわ」
砂埃にまみれ疲労している4人。
「でも私、みなさんをそんなにしてしまって……」
「大丈夫よこのくらい。あなたは十分に守ってくれた」
満の言葉に大空の木が呼応してきらめく。
「ふたりなら何でもできるわ」
舞の言葉に伝わるもの。
「ふたりなら……」
「さあ、胸を張っていけばいつだって絶好調ナリ!」
手をつなぐ二人。
肩に登るチョラピとアルト。
『いってきます!』
「スウィーツ王国へ!」
光の中に消えた。
ED♪
「ガンバリードでビートハート」
予告
アルトの国、スウィーツ王国。住民たちは朝の眠りから覚めないまま眠っていたの。
そこに現れた女の子。明かされ始めるプリキュアの秘密。
そこに今までにない怪物が襲ってきた!
次回!
「ふたりはプリキュア!絆の力!」
またみてね
H
※アバン
手をつないで光の中を飛ぶ。
その先に見える輝き。
着地した場所。
お菓子の城のようなものが見える。
「ここが……」
「スウィーツ王国」
OP♪
「包んでSpiral Flavor」
CM〜
※Aパート
「ふたりはプリキュア!絆の力!」
城下町だろうか。デザインは派手で賑やかなイメージがある。
「なんだろう。変な感じ。合ってないっていうか」
「うん。不思議なくらい静かだね」
まったく声も物音もしない。
「みんな眠っとるからや。普通はプリキュアが来たらパレードやで」
城の扉の前でアルトにそっくりの妖精がもたれかかって眠っている。
「門番はんや。逃げるときに余裕が無くてそのまんまにしてもうた。うんせ」
運ぼうとするアルト。
パフュームは門番を抱き上げる。
「すまんなあ」
「ううん。風邪ひいちゃうもんね」
王宮の中。
「こっちに休憩場があるんや」
小さなベッドがズラリとならんでいる。ほかにも妖精が眠っている。
空いたところに門番を寝かせる。
「夜にやたらと眠い言うてみんな早めに寝たんや。次の日は誰も目覚めんかった」
静けさがその不気味さを物語る。
「あとは起きとったわいをあの忍者が追いかけてきたわけやが……」
ポズーイは先に移動した。しかし目立った動きはない。
「まだ、来てないのかな?」
「今のところ何も無いみたいだけど……」
千香の変身が解ける。
へたり込んだ。
「千香はん?」
「ごめんね。ちょっと気が抜けちゃったみたい……」
みのりの変身も解ける。
「少し休もうか」
「ほなこっちや」
少し上等な部屋。ベッドが4つ。
「イスじゃサイズが合わへんから、ベッドに座ってや」
「うん。ありがとう。アルト」
ベッドに座る。みのりはチョラピを抱えて正面のベッドに座った。
「チョラピは?同じような感じ?」
「泉の郷は郷そのものが眠ったように暗くなっていったッピ」
「郷そのもの?」
「世界樹に向かったら、その前にあの帽子のやつがいたッピ。なにか考えているみたいだったッピ」
「考えてた?」
「それから見つかって、逃げようとしたときに光が……」
カッ
光る部屋の隅。
慌てる一同。
「あ、すみません。驚かせてしまいましたね」
お団子の髪の女の子。スモックのような服。幼稚園くらいだろうか。
「また会える日を待っとったで!」
アルトも少し肩の力が抜けたようだ。
「シフォンちゃん?」
「千香ちゃん。お久しぶりです」
「この子がシフォンちゃん……」
みのりは普通の女の子が出てきて逆に驚いてしまう。
「ビックリしたよ!クマのぬいぐるみみたいだったのに!」
「え?ぬいぐるみ?」
チョッピを見て想像するみのり。
「私もいろいろと勉強して、今のこの姿が適切だと体が判断したのでしょう」
「なんだかすごいねシフォンちゃん」
「すごくなんてありません。力の使い方もうまくできないし、いろいろと正しかったのかどうかも……」
落ち込むシフォン。
「あなたは何も間違ってないよ」
「そうよシフォンちゃん」
「でも、結局プリキュアの心の力を奪われてしまいました。それをラグナラボがどうするつもりなのかもわからないんです」
シフォンも追い詰められていたようだ。
「せやけど!あいつらは力を奪ったプリキュアを始末しようとしとったで!」
「やれるだけのことはしたッピ!本当なら戦えるはずがないくらいの力しかないのにがんばったッピ!」
かばうアルトとチョラピ。
「プリキュアとして半人前だったから期待に応えられなかったのかもしれないけど……」
千香はプリキュアの戦いを知っている。憧れには及ばないと思っている。
「そんなことはないです!未完成のリッタッチで無理をさせてしまって……」
立ち上がるみのり。
「じゃあ、これからみんなでがんばろう!」
注目が集まる。
「みのりさん……」
「まだ、結果は出てないよ。私もシフォンちゃんのおかげでプリキュアが分かってきたし」
「私の……おかげ?」
「私たちはこれから、伝説の戦士プリキュアになればいいよ!みんなで!」
「そうだね。まだ悩むことなんてない。まだ、これから!」
立ち上がる千香。
「ありがとう」
シフォンは目を潤ませて感謝した。
「みのりちゃんは立派なプリキュアだね」
「え?」
「私の憧れてたプリキュアたちみたい」
「千香ちゃんだって立派なプリキュアでしょ?」
みのりはきょとんとする。再び座る千香。
「……私ね、看護師さんになりたいの」
「え!すごい!今からそんな目標があるんだ!私なんか何も考えてないや……」
「小さい頃に入院してから自然とそうなっただけだけど」
最近はよく思い出し、よく話す。
「そうなんだ。病院なんてあんまりお世話にならないから、入院てちょっと怖そう」
「うん。でもプリキュアに励まされて勇気をもらった。だから勇気を分けてあげられる、人を励ますことのできる人になりたい」
「立派だなあ」
何度も頷き感心するみのり。
「でも、考えすぎちゃって今も励まされちゃったのが少しくやしいかな」
控えめな笑顔。憧れについていけてないと思ってしまう。現実を知るほどに。
「何も考えてないよりずっといいよ。千香ちゃん勉強できそうだもんね」
「目標もあるし、それなりには頑張ってるけど……」
「私なんて毎日、絵を描いてるだけでなにも考えてないかも」
ため息と共に座る。
「絵をかけるなんてステキじゃない」
「でも、お姉ちゃんと同じでそんなに勉強できないからちょっと落ち込む。スポーツでは絶対かなわないし」
マウンドの姉の姿がちらつく。
「みのりちゃん、運動も得意なの?すごいじゃない」
ちょっと考え込むみのり。伸びをしながらも目が空を泳いだ。
「ソフトボール部か美術部か迷ったとき、お姉ちゃんと比べられることが怖いと思ったことがあるの」
「え?」
「そんなことないって自分に自身が持てるようにずっと描いてた。それが良かったのか悪かったのかわからない」
「それって……」
「絵が嫌いになっちゃうかもしれないと思ったけど、それでも嫌いにならなかった。やっぱり絵を描くのが好きだってわかった」
シフォンは静かに話を聞いている。
「やりきってみてわかること……頭で考えてもだめだよね」
「私みたいに考えなさすぎなのもだめだよ。調子乗りすぎて失敗したり、あはは……」
頭の後ろに手を当てて照れ笑い。
「私でもみのりちゃんの力になれるかな?」
千香は顔を前に出して聞く。
「大丈夫、側にいてくれるだけで勇気をもらえるよ」
満天の笑顔か格好いい。
「ほら、ずるいなあ」
「えーなにが?」
みのりは千香に抱きついた。
「あのう。よろしい?」
アルトが挙手をして話しを始めようとする。
「ラグナラボが来る前に聞くことがいっぱいあるッピ」
「あ、ごめん!つい」
調子に乗りすぎたと思ったみのりはベッドの上で正座する。
「いいんです。お互いをよく知ることはとても大切ですから。私の方も今、やっと準備ができました」
光る葉っぱ。
「もう一度フィーリア王女と世界樹の力を借りて、今からプリキュアの皆さんにも話を聞いてもらいます」
「やっぱり何かプリキュアを必要としてる理由があるんだね」
千香にとって目の前のシフォンの姿はとても大きな意味があるように見える。
「最初に私の使命をお話します。私は無限のメモリー。大きな力を身に宿し、あらゆる世界に配ることができます」
「力を配る?」
話が長くなりそうだと思ったみのりは足を崩す。
「はい、生まれたての私はその力を悪用されてしまいましたが、プリキュアに助けていただきました」
「ラブさんたちね」
頷くシフォン。
「世界には希望や奇跡の力を育てる大きな存在があります。今回は泉の郷の世界樹がその時期を迎えました」
「初めて聞いたッピ」
目を大きく見開いて息を呑むチョラピ。
「それ自体は木の形をしているとも限らないのです。時に女神の姿をしていたり、使命を見失い悪しき力に傾いたという話もあります」
「なんやそら」
「他の世界にもいくつかあると言われていますし、その力を使い切ったものもあるそうです」
「すごく壮大な話っていう感じがするけど……」
「大きな力は邪悪な者達にも目に付きやすいのです。一度滅ぼされそうになったとも聞いていますが……」
滅びの力。みのりはそんな話を最近聞いた。
「もしかしてそれも?」
「はい、プリキュアは本当にすごいですね。そして今、世界樹には花がつき始めています。いずれたくさんの実がなるでしょう」
「世界樹の実?おいしいのかな」
みのりに視線が集まる。照れ笑い。
「世界樹の実。それこそが伝説の戦士のきっかけ」
「え?じゃあ、もしかして……」
「私たち、その世界樹の実の力でプリキュアやってるの?」
シフォンは首や手を振り否定する。
「いいえ、そのあたりはもっとたくさんの積み重ねがありまして……」
「積み重ね?」
頭のお団子を握って頭の中を整理するように悩むシフォン。
「例えば、アルトくんやチョラピさんのようなサポートする方々、リッタッチのような力を引き出すもの」
互いを見合っている。
「さらにはプリキュアに選ばれた人の想い。世界そのものの力の形。あとはその先にある力……」
「その先にある力?」
「そこはよくわかりませんが、例えば人々の想いやその世界そのものの力を引き出すなど様々です」
「そ、そんなことできるの?」
「普通はできません。だから奇跡と呼ぶのでしょう」
「奇跡……」
今以上の奇跡がある。二人は想像もできない。
「じゃあ、プリキュアになれる人を生み出すッピ?」
「え?私たちって世界樹の実から生まれたの?」
「そうじゃありません」
「それはそうだよね。あはは……」
みのりは余計なことを言ってしまったと小さくなる。
「本当ならプリキュアに選ばれる人は特別じゃないんですよ。みなさん頑張ってくれますから特別に見えるだけです」
「プリキュアとしての成長ってことかな。私たちも成長したかな」
なぜか腕を曲げてポーズをとるみのり。千香は少し気になる。
「でも、本当ならって?」
「今回は特別かもしれません。思いを継がれたプリキュアなんて」
「みんな身内みたいなもんやしな」
思い返すプリキュアたち。
「話がそれてしまいましたね」
「世界樹の実だっけ?それじゃ、その世界樹の実ってなんなの?」
「可能性です。一つの世界に一つ世界樹の実が弾けて作用し、プリキュアの可能性を探し出します」
「えっと……?」
目が点になるみのり。
「その世界にあふれる力を使って必要なときにプリキュアへと導く」
「運命ッピ」
「偶然とは思えんことばかりやしな」
何かに気付いたように戸惑う千香。
「そんなの!まるで神様じゃない!」
「プリキュアへの道を示しているんです。そこに誰が歩いてくるのかまではわかりません」
「でも、もし……」
「千香ちゃんが戸惑うように運命や使命に翻弄されてしまうプリキュアがいないとも限りませんが……」
千香がみのりを見る。目が合うとみのりはにっこりと笑った。
「ごめんなさい。ちょっと憧れが行き過ぎちゃったみたい」
「私は、プリキュアでよかったよ」
「うん。私も」
「ありがとう。二人とも」
シフォンは真剣に考える千香と受け止めるみのりに感謝した。
「でも思ったよりすごい話で驚いちゃった……」
「このようなことは何度も繰り返されてきました。しかしこの時期にあのような存在が現れるなんて……」
それは間違いなく襲ってきた者たちのこと。
「ラグナラボ……」
「もし世界樹の実が配れなかったら、これからプリキュアは生まれなくなるってこと?」
「次にどこかで世界樹のような力が目覚めるまで何年もの間、そういうことになるでしょう」
プリキュアがいなければ、みのりも千香もこうしていられなかったこもしれない。
「大変……」
「じゃあ、ラグナラボはプリキュアを消すために来たッピ?」
蒼白のチョラピ。
「わかりません。それにしてはいろいろと手の込んだことをやっていますし……」
ラグナラボの行動は単純ではない。
「プリキュアの力を集めてるッピ」
「わけわからんな」
沈黙。そこに重低音。
ズズン!
「来たッピ!」
アイキャッチ
CM〜
アイキャッチ
※Bパート
全員で城を出る。
「どこ?」
「あっちです!なにかおかしい!」
シフォンの先導で走る。
「なんやこらああ!」
不気味な気配の森。ショックを受けるアルト。
「どうしたの?」
「こんなはずあらへんのや!もっと癒しの森のはず……っは!」
「今度は何?」
「確かタル王記第32章や!魔人が復活したときに森が恐ろしく姿を変えたて……」
全員がきょとんとする。
「タル王記?魔人?」
「とにかく森の奥に大変なやつが封印されとんねん!」
「どうして言わなかったッピ!」
「まさか知っとるとは思わなかったんや!それに前に来たプリキュアがもう一度封印したんやで!そう簡単に……」
森から出てきた巨大な影。
臼の頭に杵を持った腕が四本。武士のような甲冑を着ている。
「シックウーッス!」
「あわわ……あれ?本で見たんとちゃうで!」
ガサッ
「あれは!」
ボロボロのポズーイが出てきた。
「言うことを聞かせるのは無理でござるか……。もういい!勝手に暴れまわるでござる!」
「なにをしたんや!こんなんやないはずやで!」
「いつもどおりでござる」
空の試験管を指先でクルクルと回す。
「やるっきゃないよね!」
「うん!」
構える二人。
※変身バンク
『プリキュア!フィーリングソウルエナジー!』
天に掲げて叫ぶとみのりと千香を光が覆う。互いに背をもたれる。
パネルをタッチすると四葉のクローバーと黄色い五芒星が画面の上に飛び出した。
息を吹きかけるとクローバーと星が回転し輝く。
緑色の風がみのりを包む。
胸元には真っ白の大きなリボン。肩からボディ、スカートまで明るい緑色。
フリルは薄い黄色がなびく。
同じ緑を基調としたアームウォーマーにレッグウォーマー。
インナーのアームカバーとレギンス、ブーツは濃いピンク。
両膝とベルトの中央、手の甲には赤く丸いリンゴのポイント。
イヤリングにはさくらんぼのように小さく。
青い色の風が千香を包む。
解かれてなびく髪。肩と胸の辺りは薄いピンク。胸元には星のワンポイント。
ボディからスカートまでマリンブルー。
全体の端を薄いピンクのフリルがなびく。腰元に真っ白の大きなリボン。
同じ青を基調としたアームウォーマーにレッグウォーマー。
インナーのアームカバーとレギンス、ブーツは黒。
両膝とベルトの中央、手の甲には赤く丸いオレンジのポイント。
イヤリングにはさくらんぼのように小さく。
みのりの髪はオレンジ色に染まる。三つ編みはそのままに、髪留めは一枚の桜の花びら。
後ろ髪は少し伸びて垂らしたまま。
少しだけ頭の上に持っていって花の髪留めで留める。
小さく双葉のようにぴょこんとはねる。
千香の髪はグレーに変わり左側に垂らしてまとめるルーズサイドテール。
肩のあたりに下がった髪留めは、丸いふちの中に赤い風車を模している。
リッタッチは腰元のケースに収まった。
「緑の四葉は命のしるし!世界を育む実り!キュアフルーティー!」
「千の泉に香る星!ナチュラルフレッシュ!キュアパフューム!」
大きく手を天にかざす。はじける光。
『ふたりはプリキュア!』
「飛んでいけ!悪いの!」
「いざ!成敗なり!」
天にかざした手をポズーイと怪物に向ける。
「今のうちに去るでござる!」
背を向けて光の中に消えていていくポズーイ。
「ひ、卑怯ッピ!」
「こんなんした責任とりい!」
大きな声に怪物が再び暴れ始める。
「シックウス!」
杵を振り下ろす。
ズン!
左右に分かれてよける二人。
「ウスウスウスウス!」
四本の腕からもぐらたたきのように次々と杵が振り下ろされる。
「わっ!」
「たっ!」
細かくよけていく二人。
怪物の下に潜り込み、怪物の膝の裏を蹴る。
「ウス?」
後ろに倒れる怪物。
「ウス!」
しかし二本の腕でブリッジのように体を支えると、余った腕で杵を振るう。
離れる二人。
起き上がった怪物の杵で頭を叩くとモチのようなものが出てきた。
ムチのように伸びたモチが何本にも別れとんでくる。
二人はそれをよけるが、さらに怪物の甲冑の胴の辺りが開き、黒い弾が飛んでくる。
「これじゃ近づけない!」
弾幕の中、逃げまわるチョラピたちに気付く。
「あわわわ!」
「怖いッピ!」
「いけない!」
チョラピたちの前で黒い弾を叩き落すフルーティー。
「やあああ!あ?熱い!あっついー!あんこ?」
次々に崩れる溶岩のような弾。手にへばりつき火傷しそうな熱を伝える。
「フィルーティー!危ないッピ!」
「え?きゃ!」
手を冷まそうとしている間にモチのムチにぐるぐる巻きにされ捕まった。
「フルーティー!」
パフュームはムチを切断しようと蹴りを放つが伸びて粘るだけ。しかもくっついた。
「そんな!」
足をとられて逆さ吊り。
「シックモチ!」
さらに杵で頭部を叩くと巨大なモチが風船のように出てくる。
さらに重なるようにもう一つ。
「鏡餅ッピ?」
「めでなくないで!あんなん押しつぶされるわ!」
怪物自身よりも巨大に見える鏡餅がプリキュアたちの上空に解き放たれた。
もがくフルーティー。
「ぬううう!ダメ間に合わない!」
逆さ吊りのまま目を見開くパフューム。
リッタッチを手に取る。
※一部省略上下反転バンク
リッタッチから輪が飛び出す。顔の大きさほどの輪。
「パフュームフープ!」
大きなハート。サイドに小さなハートが二つずつ。
タンとタンバリンのように枠を叩く。
シャランと鳴る音と同時に大きなハートが輝く。
「プリキュア!サウザンド・フレーバー……」
振りかぶり、突き出す。
「スプライト!」
ハートからたくさんの粒が集まった光の帯が放たれる。
空中で鏡餅に直撃。光が包む。
消滅する巨大な鏡餅。
降り注ぐ光がモチのムチを固め、ヒビが割れる。
「たあ!」
力を込め、脱出するフルーティー。
「シック!」
降り注ぐ光を嫌がる怪物。
※技バンク
リッタッチを手に取る。
リッタッチから輪が飛び出す。顔の大きさほどの輪。
「フルーティーフープ!」
大きなハート。サイドに小さなハートが二つずつ。
タンとタンバリンのように枠を叩く。
シャランと鳴る音と同時に大きなハートが輝く。
「プリキュア!スパイラルハーベスト……」
振りかぶり、突き出す。
「スプライト!」
ハートからたくさんの粒が集まった光の帯が放たれる。
「シックウウウウッス!」
四本の杵が合体し巨大な杵になった。
それを振りかぶり一気に振り下ろす。
ズドン!
光の帯が叩き潰された。
「うそでしょ!」
「そんなアホな……!」
ズン!
這うように手を地面につけ、前のめりになる。
「効いたんだったらいいけど……」
フルーティーのところに来るパフューム。どちらも疲労している。
「違うみたいね。何かしようとしてる……」
「ウオオオオッス!」
重い叫び声が響く。
「強いッピ……怖いッピ……」
おののくチョラピ。アルトと抱き合って震える。
怪物の臼の頭がプリキュアたちに向いている。
中からうごめくモチがはみ出し、次第に黒く色を変え沸騰し始める。
だんだんと量を増し、巨大なねばりのあるマグマの手のようになった。
「力を……」
シフォンが願うように声を出す。
「力を合わせればきっと!」
どちらからともなく手をつなぎ前を見る二人。
「不思議だね」
「うん。こうしてるときっと大丈夫な気がする」
※半バンク
二人に集まる光が粒子になって舞う。
光る粒が螺旋状に集まり小さな円になる。
フルーティーフープとパフュームフープが浮き上がり光の円をはさんで筒になる。
つないだ手を上に向ける。筒が二人の腕に入り、つながった手の先だけが出た。
そしてその手にさらなる光が集まる。
『心に実る命の香り!包み込め!』
ダンスを踊るように振りかぶる。
『プリキュア・スパイラル・フレーバー…』
足を踏み出して手を前に。
『アライブ!』
放たれた光から。巨大な光のつる。緑色に輝き伸びるように流れ走る。
三つ編みのように重なり合い葉のようなものがところどころに出る。
ザアア!
輝く葉の集まった先が怪物が放ったマグマの手を覆い押し戻す。
「シックモーチ!」
そのまま怪物に直撃。つるが巻き付いて毛糸の玉のように丸まる。
パアアアン!
はじけると中から洋ナシのような光の実。中で浄化される怪物。
そのまま森の中心へ飛んでいくと森全体が光に包まれ美しく変化した。
「よかったで。ホンマに。まだ完全に元通りってわけやないが」
再び静かなスウィーツ王国。
「結局追いかけられなかったッピ」
消えてしまったポズーイ。手がかりもない。
「いいよ。やっるけるよりも守ることが大事」
「次は世界樹のところ?泉の郷?」
二人の変身が解ける。
「ラグナラボにもなにか準備があるようですし、すぐにはやって来ないでしょう」
「じゃあ、みんなも心配してるし」
「一度帰ろうか」
焦りと安心する気持ちが混ざり合う。それでも二人は少しほっとした。
「変化があるようでしたらお知らせします。新しく光の葉を渡しておきますね」
前のものよりも小さい。若葉だろうか。
「もしかしてお話できる?」
「わあ、眠れないかも」
テンションンの上がる二人にあきれるアルト。
「しっかり休みいや」
くすくすと笑うシフォン。
「アルトくんは?」
「国は心配やけどどうにもらならんしな。千香はんとこ戻るわ」
「わかりました。ゆっくり休んでくださいね」
それぞれ光に包まれた。
ED♪
「ガンバリードでビートハート」
※Cパート
暗い研究室。
「次の戦いは我らが悲願の時。覚悟はいいな?」
黒い影が語る。跪きながら面を上げる二人。
「オフコース」
「待ちわびました」
大型のケースに手が触れる。
「もうすぐ、もうすぐ手に入る」
ケースの中には小さな影が浮いていた。
予告
少しだけもどった日常。たくさんのことを話すとますます頑張れる気がしてきた!
やってきたベノンとポズーイの本気!でも世界樹を背にして負けられない!
そしてついに現れた錬金術師バクター・ワグ。一体何者なの?
次回!
「ベノンとポズーイ!最後の作戦!」
またみてね
I
※アバン
大空の木のうろから光が飛び出す。
「みのり!お帰り!」
咲たちにもみくちゃにされるみのり。
「ただいま。まだ何も終わってないけど、スウィーツ王国はなんとか」
よろけながら近づく薫。
「無事でよかった」
「薫お姉さんも」
互いを抱きしめる。
ところ変わってもう一つ空からゆっくりと降りてくる光。
「千香ちゃん!」
「あれ?ここは?」
見た事のない場所。ビルに囲まれた広場。
「千香!」
金髪の少女。
「え?千歳?なんで?」
見たことのない場所、見たことのない人。そして見知った人。
立ち上がった黒髪の女性。ひどく疲労している。
「せつなさんですね?」
「はじめまして千香ちゃん」
すぐにそこがラビリンスだと分かる。
「いっぱい話すことがありそう」
OP♪
「包んでSpiral Flavor」
CM〜
※Aパート
「ベノンとポズーイ!最後の作戦!」
ベッドの上。光る若葉。
「じゃあ、ラビリンスに泊まってるの?」
「もともとそういう予定だったからね。千歳は実家に帰ったみたい」
「千香ちゃんはプリキュアのこと知ってたんだよね?」
「ファンだったから知ってるつもりだったけど、実際はちょっとかな」
「私なんか全然知らなかったよ。不思議なことはいっぱいあった気がするけど」
たくさんのことを語り合う。
プリキュアのことだけではない。
友達のこと、家族のこと、学校のこと。
それから二人はいつの間にか眠りに落ちた。
思い思いの一日。
宿題をする。掃除をする。
絵を描く。アクセサリーを作る。
ご飯を食べる。話す。笑う。
夕刻の窓辺。
「どうしたッピ?」
「たった一日のことが」
「すごくいっぱいに感じた」
「なんとなくわかるわな」
もう一日経つと、ラビリンスから大空の木のうろに小さな道ができた。
「やっぱりちょっと無理があるみたいだ。今日一日。一人か二人が精一杯だね」
瞬はそんなことを言った。
二人は少しだけお互いの町を行き来した。
四つ葉町の公園。
「どうもカオルちゃんて慣れないなあ……」
「薫さんとイメージ違いすぎるもんね」
ドーナツ屋でそんな話をする。
「二人を見てるとなんだか安心する」
不意に千歳はそう言った。みのりは遠慮なく聞く。
「やっぱり留学ってプレッシャー?」
「うん。ちょっと特別に見られるし。でも特別な仲間がいるとほっとする」
「私も入院生活から戻るとき不安はあったよ」
「優しく接してくれる人ってありがたいね」
犬を連れた少年。
「あ、タケシだ」
「よう。あれ?そっちはこの前の……」
タケシはみのりに気付いた。
「あ、祈里さんのところまで連れてってくれてありがとう。なに?どういう関係?」
「優しく接してくれる人?」
千歳はそんなことを言う。
「まあ」
両手を頬に当てるみのり。
「何の話だ」
「ちょっと特別でも普通に接してくれるっていう話」
「特別?留学でも入院でも遠くから来ても、そんなの特別じゃないだろ」
「じゃあ、理想は?」
千香も面白半分で聞く。
「プリキュアっぽい人」
『え?』
声が揃う。
「なんだよ。笑うなよ」
「笑ってないよ」
みんな微笑んでいた。
夕暮れの海が見える屋根のついた休憩場。
パンパカパンのパンを食べる二人。
「綺麗だなあ……。なんて素晴らしいところなんだろう」
「見慣れてるけど、私も大好きだよここ」
後ろから声がかかる。
「大変!静!」
「どうしたの志乃」
「二人で取り合ってる間にみのりが浮気してる!」
振り返るって諌める。
「ちょっと!変なこといわないでよ志乃!」
「友達?」
「うん。ソフト部の静と美術部のちょっと騒がしい志乃」
「こんにちは。森田千香です」
ずいと迫る志乃。
「こんにちは。みのりと同じ美術部です」
「ちょっと志乃。千香ちゃんは遠くから来たのよ」
「遠距離か……」
腕を組んで考える。静は志乃をどかす。
「ごめんね変なので。私たちはクラスメイトで友達」
「みのりちゃんが愛されてるんだなって思えるよ」
みのりと静を寄せて無理矢理三人でスクラムを組む志乃。
「私たちはみのりとずっと一緒だからね」
「いいなあ」
素直な笑顔。驚く志乃。
「ちょっと似てる?」
「え?」
強引に千香も引き込む志乃。
「認めましょう。千香ちゃんもみのり隊の一員です」
「なにそれ」
あきれるみのり。笑う千香。
「ありがとう」
大空の木のうろの前。
「またね」
「うん、また」
帰る千香。互いの表情がほんの一瞬曇る。
引っかかっていた言葉があった。しかし互いに秘める。
さらに次の日の早朝。
みのりも千香も満ち溢れた命の気配に目覚める。
ラビリンス。肩からポシェットをかけて外に出てきた千香とアルト。
「どうしたの?千香ちゃん。随分早いね。ふわ……」
あくびをしながらついてきたラブ。
宙に浮いた女の子が現れた。
「世界樹に花が咲きました」
「え?シフォン?本当に?」
驚くラブ。
「はい、お久しぶりです。ゆっくりお話できないのが残念です」
「また会えるんでしょ?」
「はい、きっと」
ラブは千香を抱きしめる。
「応援してる。絶対大丈夫」
そして強い目で見つめる。
「みんなの幸せをゲットしてきます!」
「みんなっていうのは千香ちゃんも入ってるんだよ?」
「はい」
応える千香。
「千香ちゃん」
「うん。行こうか」
パンパカパンの前。
スケッチブックとチョラピを抱えて誰もいない店を外から見つめる。
コロネがゆっくりとやってきた。
みのりはコロネの頭を撫でる。
「私も無茶ばっかりだったから、無理するなとは言えないけど……」
いつの間にか起きて来ていた咲。
「あきらめずに頑張って。みんなも自分も守って、そして必ず無事に帰ってきなさい」
大きく頷いた。
「よし!絶好調なり!いってきます!」
みのりは光に包まれた。
光の流れの中、途中で合流するみのりと千香。
「いよいよだね」
「どんなことになっちゃうのか予想できないけど……」
少なからずどちらにも不安が募る。
大きく息を吸い込む千香。
「深呼吸!リフレッシュ!」
ラブのような強く駆け抜ける目。
「よっしゃ!全力でノリノリなり!」
気合を入れる。咲のような強く一歩を踏みしめていく目。
光が途切れる。草原の丘。
「ここが泉の郷?すっごい!」
「うわ!綺麗!」
たくさんの泉と草木。そよぐ風に青空。空気は涼しくて潤っている。
その場所一体が静かに呼吸しているようだ。
「でも……」
「うん、やっぱりおかしなくらい静かだね」
みんなチョラピを見る。
「チョラピはん……」
「同じッピ」
スウィーツ王国と同じことが起きている。
「参りましょう」
シフォンが案内する方向。すぐに目に付いた巨大な生命体。
「大空の木?」
「いえ、世界樹です」
その周りごと輝いているように見える。
張り出した根の真ん中あたりがさらに光っている。
「ようこそいらっしゃいました」
「フィーリア王女ですね?」
大きさは今のシフォンとほぼ変わらないくらい。それが妖精たちの王。
「はい。みのりさん、おなつかしい限りです。立派になりましたね」
そんなことを言われても覚えがない。
「あ、コロネに乗り移ってたって本当なんですね?」
「はい。彼はお元気ですか?」
「最近は大人しいです。でも相変わらずの顔つきですから」
「そうですか。本当にお世話になりました」
無駄に冷や汗のようなものをかいてゴクリと息を呑むアルト。
「師匠、やっぱりすごい方なんやな」
「コロネ様はプリキュアと一緒に戦った英雄ッピ」
チョラピは何故かふんぞり返って自慢するように言う。
「世界樹の実を育て、プリキュアという存在に恩返しができると思った矢先。またお世話になってしまうなんて……」
申し訳無さそうに語るフィーリア王女。
「プリキュアに恩返しをするっていうなら私たちも同じですよ」
「薫お姉さんと満お姉さんも助けてもらったみたいだし、精霊たちにも恩返し」
ハイタッチするみのりと千香。
「ありがとうございます。もう少しで準備も整うと思うのですが……」
たくさんの見たこともない花が咲いている。
「本当ならもう実がなってもいいころですが、やはり精霊や妖精が眠らされた影響でしょうか」
シフォンは不安そうに花を見つめる。
「分かりません。しかし、私には世界樹が自分でその時期を遅らせているようにも思えるのです」
「どっちにしてもラグナラボのせいやな。なんなんやラグナラボて」
「世界樹の実の秘密も知ってるのかもしれないッピ」
全員が悩む。
「世界樹の周りはすでにプリキュアに近い力が満ち溢れています。彼らもそれで近づけない様子でした」
「なんとなくわかります」
降り注ぐ光。それがカーテンのように世界樹を包む。
「それでも、あきらめる様子もなく実に淡々とプリキュアに狙いを定めました。まるで最初からわかっていたかのように」
シフォンが何かに気付いた。
「皆さん!ラグナラボが来ます!」
みのりはスケッチブックを、千香はポシェットを木の根の上に置いた。
『あの、これ預かってもらえますか。大事なものなんです』
ピッタリと声が揃った。互いに驚く。
するすると地面からつるが伸びてきた。籠のように荷物を囲む。
「お預かりします」
光と同時にベノンとポズーイが現れる。
「ハロー」
「いよいよでござるな」
アイキャッチ
CM〜
アイキャッチ
※Bパート
特に変わった様子は無い。
「まだ実が生っていないでござるな」
「プリキュアを無理矢理養分にしてしまえばいい」
笑うベノン。怒るみのり。
「言ってくれるわね」
「だいたい目的はなんなの?」
千香の問いに前に出るベノン。
「兄者?」
ポズーイも戸惑う。
周囲に広がった世界樹の輝き。その境目の前にベノンが立つ。
静かに右手を伸ばすと手が燃えるように光り、煙のようなものを上げて消えた。
「わあ!」
みのりは大きく驚く。千香は声も出ない。
「なんや!」
「前もあんなかんじだったッピ」
すぐに黒い霧が集まり再び手が形成される。
「戻った!」
「どうなってるの?」
驚くことばかり。
「パンチやキックでやりあっているうちはいいが、プリキュアの技をまともに食らえばこの有様だよ」
「対してこちらの技は効かない。なんとも相性の悪い相手でござる」
「そういえば……」
みのりも千香もいくつか思い当たる場面があった。
「皮肉なことにこの素晴らしいパワーはマッチしない。だが欲しい!」
「なんのために?」
ある程度予想できた答えを千香が聞く。
「世界を都合よく作り変えるためでござる」
淡々と応えるポズーイにみのりが食って掛かる。
「そんなことだろうと思った!させるもんですか!」
二人がリッタッチを取り出すと、ベノンも何かを出した。
黒く角ばったサッカーボールのような多面体。
「八人分も集めてまだ未完成なのはあきれたでござるな」
思い当たる数字。
「八人分?」
「じゃあ、それはプリキュアの力?」
ベノンは片手で掴み腕を伸ばす。ポズーイも腕を伸ばし反対側を掴む。
「ラストミッション!リターン!」
「応!」
二人の体が黒い霧になり、ボールを中心に渦を巻く。
次第に集まって大男になった。
外見はそのままコートを着た忍者。
ボールのような物体は胸の中央に収まる。
「合体した!」
「また変な道具持ってきて……」
思い出す水晶や赤い液体。千香はそれに近いものだと思った。
「ノー!我々は元々一つの存在!」
「一つの?」
「じゃあ、あれは……」
突撃してくる大男。
ドン!
「ぬううう!」
バチッ!
無理矢理開いてこじ開けるように光を裂く。
世界樹を包んでいた光がはじけ飛ぶ。
「ッピー!」
「なんやて!」
「プリキュアの力を集めていたのはこのためなのですか?」
「世界樹の光の影響を同じ力で和らげる?そんなことが思いつき、本当にやれるなんて!」
体から黒と白の煙が出ている。
「カモン。プリキュア」
リッタッチを構える。
※変身バンク
『プリキュア!フィーリングソウルエナジー!』
天に掲げて叫ぶとみのりと千香を光が覆う。互いに背をもたれる。
パネルをタッチすると四葉のクローバーと黄色い五芒星が画面の上に飛び出した。
息を吹きかけるとクローバーと星が回転し輝く。
緑色の風がみのりを包む。
胸元には真っ白の大きなリボン。肩からボディ、スカートまで明るい緑色。
フリルは薄い黄色がなびく。
同じ緑を基調としたアームウォーマーにレッグウォーマー。
インナーのアームカバーとレギンス、ブーツは濃いピンク。
両膝とベルトの中央、手の甲には赤く丸いリンゴのポイント。
イヤリングにはさくらんぼのように小さく。
青い色の風が千香を包む。
解かれてなびく髪。
肩と胸の辺りは薄いピンク。胸元には星のワンポイント。
ボディからスカートまでマリンブルー。
全体の端を薄いピンクのフリルがなびく。
腰元に真っ白の大きなリボン。
同じ青を基調としたアームウォーマーにレッグウォーマー。
インナーのアームカバーとレギンス、ブーツは黒。
両膝とベルトの中央、手の甲には赤く丸いオレンジのポイント。
イヤリングにはさくらんぼのように小さく。
みのりの髪はオレンジ色に染まる。三つ編みはそのままに、髪留めは一枚の桜の花びら。
後ろ髪は少し伸びて垂らしたまま。
少しだけ頭の上に持っていって花の髪留めで留める。
小さく双葉のようにぴょこんとはねる。
千香の髪はグレーに変わり左側に垂らしてまとめるルーズサイドテール。
肩のあたりに下がった髪留めは、丸いふちの中に赤い風車を模している。
リッタッチは腰元のケースに収まった。
「緑の四葉は命のしるし!世界を育む実り!キュアフルーティー!」
「千の泉に香る星!ナチュラルフレッシュ!キュアパフューム!」
大きく手を天にかざす。はじける光。
『ふたりはプリキュア!』
「飛んでいけ!悪いの!」
「いざ!成敗なり!」
天にかざした手を大男に向ける。
「いくぞ!」
えぐるほど地面を蹴り大きな拳を振るう大男。
「だあ!」
ズバン!
フルーティーは拳を両手で受け止める。
「はっ!」
横からパフュームの蹴り。
ガッ!
片手で受け止め、掴んで放り投げる。
両腕が伸びたところを狙い今度は懐から蹴り上げるフルーティー。
頬をかする。
「ぬぐうっ!」
腕を振り回しラリアートのようにフルーティーを吹き飛ばす。
着地した二人。
「やあああ!」
右と左から拳をたたきつける。
「ふんぬ!」
両手で同時に受け止める大男。
膠着。
「どんな世界にしようというの?」
右からパフューム。
「希望を幻想にする世界!プリキュアをただの伝説にする世界!それがラグナラボの世界だ!」
左からフルーティー。
「まるでプリキュアを目の敵にしてるみたいね」
「ジャストイット!その通りだ!お前たちは我々にとって不安の結晶だ!」
不意に力を下にそらす。バランスを崩して前に倒れ込む二人。
腕を交差し、勢いをつけて広げる。
ドッ!
二人は飛ばされながらも腕を畳んでガードする。
着地したパフュームが顔を上げる。
「どうして!あなたたちさえなにもしなければ戦うことなんて!」
「天敵を叩くチャンスがあるのに黙っていられるか!」
たまらず声をあげるフィーリア王女とシフォン。
「この世界樹を破壊しても、またどこかでプリキュアへの可能性は目覚めますよ!」
「そうです!今、一時的に力を失っても完全になくなるわけじゃありません!」
睨みつける大男。
「そんなことは分かっている!だから奪うのだ!」
「奪う?壊すんじゃなくて?」
漂う光を感じるフルーティー。相変わらず大男からはいくつか煙が出ている。
「全宇宙そのものに匹敵するパワーを備えていると聞く!そんな強力なパワーがあると分かっていて奪わずにいられるものか!」
雄たけびを上げるように世界樹に向かって叫ぶ。
「結局は自分の都合のいい世界を力で手に入れるってことなの?」
構えるパフューム。
「力があれば次は簡単に叩き潰せる。世界もそれに馴染むように作り変える!」
両手の指先から出る黒い煙が手裏剣のような形に変わる。
あわせて十枚の手裏剣を掴み、二人に投げる。
「そんなの、させるわけにはいかない!」
前に走りながらよける二人。
蹴りにいくフルーティー。パフュームは下から両手で突く。
どちらも片手で受け止める大男。
「どうした!こんなものではないだろう!」
フルーティーの足を掴んでそのままパフュームに叩き付ける。
「きゃあ!」
のけぞるほど両腕を上げ二人に向かって振り下ろす。
ズン!
土煙があがる。
「フルーティー!」
「パフュームはん!」
くぼんだ土の上。
片膝をついたまま受け止める二人。
「このまま終わるのならそれでもいい」
さらに沈む。
「このまま終わるはずが……」
「ないでしょう!」
二人の白いリボンが輝く。
じりじりと押し返し立ち上がる。
「ぐっ……」
バチン!
押し込んでいた両腕が弾かれる。
『たあ!』
互いに背を向けるように同時に蹴り上る。
さらに手のひらに白く輝く光を集め飛び上がり、下から突き上げる。
大男は上空に浮き飛ばされた。
「ぬうう!」
大男は空中で全身から黒い霧を巻き上げ始める。
二人はゆっくりと手をつないだ。
※半バンク
二人に集まる光が粒子になって舞う。
光る粒が螺旋状に集まり小さな円になる。
フルーティーフープとパフュームフープが浮き上がり光の円をはさんで筒になる。
つないだ手を上に向ける。筒が二人の腕に入り、つながった手の先だけが出た。
そしてその手にさらなる光が集まる。
『心に実る命の香り!包み込め!』
ダンスを踊るように振りかぶる。
『プリキュア・スパイラル・フレーバー…』
足を踏み出して手を前に。
『アライブ!』
放たれた光から。巨大な光のつる。緑色に輝き伸びるように流れ走る。
三つ編みのように重なり合い葉のようなものがところどころに出る。
ザアア!
輝く葉の集まった先が大男を包む黒い霧を浄化する。
「この力……!」
そのまま大男に直撃。つるが巻き付いて毛糸の玉のように丸まる。
パアアアン!
はじけると中から洋ナシのような光の実。中で浄化される大男。
「ミッションコンプリートにて候……」
大男の全身が黒い霧になり浄化され消えた。
「勝ったで!」
「消えちゃったッピ」
胸を押さえるパフューム。
「なんか……」
「うん。あんまり喜べないね」
フルーティーは手を見つめて握る。
「エレメントですか?」
シフォンがフィーリア王女に何か聞いている。
「ええ。実体のないものに無理矢理に体を作ったような……そうでなければ消えてしまうなんて……」
再び空を見たアルトが何かに気付く。
「なんやあれ?」
「どうしたッピ?」
ボールのような黒い物体が落ちて来た。
ボスン!コロン。
それだけはそのまま残っていたようだ。
注目を集める。
ガチャ
「動いたで!」
「え?」
物体は宙に浮き音を立てて形を変える。
ガチャガチャ
元の丸い部分を胴体に目のついた頭らしき部分が出てくる。
手足に耳まで生えたペットロボットのような形になる。
「チョラピっぽい?」
「チョラピはあんなに怖くないッピ」
確かに目つきは悪い。
「ようやく準備が整った」
「しゃべった?」
「違う!後ろ!」
パフュームが指を刺す。
物体の後ろに黒い霧が集まる。
薄汚れた白衣を着た髪の長い不気味な女性が現れた。
顔は蒼白。髪に隠れた目だけが暗くも鋭い。
「何……?この嫌な感じ……」
「胸の奥が苦しい……」
二人とも目をそらせない。
「私はラブナラボの室長、錬金術師バクター・ワグ」
うっすらと聞き覚えのある名前。
「聞いたことあるッピ!」
「黒幕やな!」
構えるプリキュア。
「世界樹の力、いただきに来た」
暗い声が響く。
ED♪
「ガンバリードでビートハート」
予告
ついに現れた最後の敵。その正体と恐ろしい目的が明かされる!
黒い妖精の力!構えるバクター・ワグ!
信じられないことばかり!でもあきらめるわけにはいかない!
次回!
「脅威!バクター・ワグの計画!」
またみてね
J
※アバン
ふらりと体を揺らし、世界樹を見るワグ。
「計画通りここまで来た。長かった」
「仲間を失うことも計画通りなの?」
フルーティーは不気味な目を睨み返す。
「それはこいつらのことか」
両手から黒い霧。
その霧がベノンとポズーイの形を作り出す。
「どういうこと?」
二人とも息を呑む。
「言わなかったか。我々は元々一つだと」
「じゃあ……」
「そうだ。ベノンもポズーイも私だ」
理解できないことばかり。
「あなた……なんなの?」
パフュームは尚、問う。
「私がなにか、教えてやろう」
ワグは突然体を黒い霧に変え高速で移動、フルーティーの前で再び上半身だけを戻し幽霊のように迫った。
OP♪
「包んでSpiral Flavor」
CM〜
※Aパート
「脅威!バクター・ワグの計画!」
「フルーティー!」
叫ぶパフューム。
覆いかぶさるワグ。
「やあああ!」
ボス!ボスボス!
フルーティーは夢中で拳を振るうがまるで手ごたえがない。
「効いてない!」
そのまま黒い霧がフルーティーを覆い始める。
「わっ……」
「じゃあこれなら!」
※技バンク
リッタッチから輪が飛び出す。顔の大きさほどの輪。
「パフュームフープ!」
大きなハート。サイドに小さなハートが二つずつ。
タンとタンバリンのように枠を叩く。
シャランと鳴る音と同時に大きなハートが輝く。
「プリキュア!サウザンド・フレーバー……」
振りかぶり、突き出す。
「スプライト!」
ハートからたくさんの粒が集まった光の帯が放たれる。
飛ぶようにその場を離れるワグ。
「理解が早いな」
霧の一部が消滅する。
「わああ!」
振り払うようにフルーティーも続く。
※技バンク
リッタッチを手に取る。
リッタッチから輪が飛び出す。顔の大きさほどの輪。
「フルーティーフープ!」
大きなハート。サイドに小さなハートが二つずつ。
タンとタンバリンのように枠を叩く。
シャランと鳴る音と同時に大きなハートが輝く。
「プリキュア!スパイラルハーベスト……」
振りかぶり、突き出す。
「スプライト!」
ハートからたくさんの粒が集まった光の帯が放たれる。
ワグと光の帯の間に黒い妖精が立ちはだかる。
バチッ!
消滅する光。
「あ!」
「十分なパフォーマンスだろう?」
パフュームは同じようなベノンの行動を思い出す。
「ベノンって人がやってたのと同じね。そしてその黒い妖精……」
「そうだ。ついにノウンも完成した」
ワグが手を出すと黒い妖精はその手の上に乗る。
「ノウン?名前があるのね」
「大切なものには名前をつけるのだろう?」
「それが分かっていて、他の人の大切なものを奪おうというの?」
フルーティーは構えなおす。
「そうだ。そうされたくなければ力を手に入れるしかない。お前たちのように」
困惑。力の入っている自分たちを見つめなおす二人。
「確かに私たちは守るために戦ってるけど……」
「あなたは誰に何を奪われるというの?」
「私は弱い。全てを滅ぼす力も、全てを管理する力もない。そんな力をもっているやつらを恐れるほどに弱い」
そんな話を思い出す。
「それって、プリキュアが倒してきた相手?」
「そして、全てが滅んでも管理されても私は消滅してしまうだろう」
「あなたは……」
ワグから黒い霧が立ち上る。
「私はストレスの集合体。生命が受けるストレス。それが私の力であり私自身」
「ストレス?」
ワグの目がどんどん深く光を失っていく。
「考えたよ。そして反する力を利用する道具は完成した」
ノウンの目が赤く光る。地面に降りて鳴く。
「ピィー!」
機械的な声。
泉の郷の草原が茶色く変色していく。流れる水も失われていく。
「大地の力を奪ってるッピ!」
「やめなさい!」
フルーティーが叫ぶと素直に地面を離れ浮かぶ。
「あれ?言うこと聞いた?」
草は枯れる寸前。水はわずかばかりだが流れ続ける。
「後は私自身を高め、扱いきる力。ストレスの世界」
「ストレスの世界?胃が痛くなりそう」
「きっとそんなものじゃ済まないわ」
パフュームは息を呑む。
「私の作り上げる世界は、平和な世界でも戦いの世界でも感情のない世界でもない」
今度は空が暗くなり始める。雲もないのに灰色の空。
「ギリギリで生きながら、ひたすらに心を痛め続ける奴隷の世界」
薄笑いのワグ。
「なんとおぞましい……」
「怖いなんてもんやない……」
「そんなの嫌ッピ……」
震える精霊たち。
「大丈夫。草は踏んでも強く生きるっていうじゃない」
元気付けようとするパフューム。
「ならば水も光も与えず踏み続けよう」
「なんなのよ!命の輝きを馬鹿にしないで!」
フルーティーは怒る。
ワグはノウンの頭をわしづかみにした。
「フィーリングソウルエナジー!」
『え!』
信じられない言葉。
黒い妖精が輝き解けて吸い込まれるように消える。
ワグの白衣が燃え上がるように消滅し全身が黒く包まれる。
手にはガントレット、足にはレガース。全身が中世の鎧のような黒い武装。
顔から頭まで兜のように無骨なマスク。目だけが赤く光る。
長い髪はすべて後ろになびく。そして長い尻尾のようなものまでついている。
まるで黒い竜騎士のロボットのようだ。
「ついに手に入れた!いや、これでまだ半分か。さあ、世界樹の力をいただこう!」
『させない!』
音もなく構える二人の間に割り込むワグ。
振り向くように腕でパヒュームを、尻尾でフルーティーをなぎ払い吹き飛ばす。
地面を水切りのように跳ねて飛ばされていく二人。土煙に消える。
「み、見えなかったッピ!」
「だいぶスマートやけど、さっきのデカイのより強くて怖いで!」
世界樹と根元のチョラピたちに一歩一歩ゆったりと近づくワグ。
「世界樹の力を手に入れたところで世界をあなたの好きなようにはできませんよ!」
警戒するシフォン。
「インフィニティ。私たちがどうやって次元を超えていたと思っている」
「まさか!」
「お前の力を分析した。あらゆる世界に影響を与える力。力を蓄える力。ノウンが目指した最初の機能だ」
跳んで戻ってきたフルーティー。
「はあああ!」
光で覆った拳をたたき付ける。
バン!
受け止めるワグ。
もう片方の手。
バン!
さらに受け止める。
「やあああ!」
力を振り絞って押すフルーティー。
「無駄だ」
上から押し付けるワグ。
「だあ!」
後ろから攻撃にかかるパフューム。
ギュイン。
首が真後ろに向いた。
「うわ!」
驚く。そして尻尾が飛んでくる。
バシッ!
弾かれるパフューム。
「えい!」
その隙に腹部を蹴るが硬い鎧に効果が見られない。
腕を掴まれたまま蹴ったフルーティーはバランスを崩す。
グルンと首が戻る。そのまま持った両手を地面にたたき付ける。
覆いかぶさったまま腕を振りかぶるワグ。
「やあああ!」
全身に光をまとって突進したパフューム。
ドゴッ!
ぐらりと揺らいでバランスを崩す。
「はあ!」
逆立ちをするように足を畳んで両足で蹴るフルーティー。
ゴン!
それでも倒れない。長いシッポがムチのように飛んでくる。
バチッ!
逆さまのまま腕で受ける。吹っ飛びそうなフルーティーをパフュームが受け止める。
二人とも倒れこむ。
飛び上がったワグが勢いをつけて踏みつけてくる。
パフュームはフルーティーを抱き上げて後ろに跳ねる。
「ひゃー!ありがとう」
「来るよ!」
高速で移動するワグ。体勢を立て直す暇もない。
ボッ!
赤い光。
ワグの腕が空を切る。
ザッ
足音。左にリボンを赤く変えたフルーティー。
「そこか!」
体をひねって足を溜める。
「一人……!後ろか!」
気付いてグンと首だけを不自然に回す。
輝く頭上。黄緑色のリボン。
「光よ!」
「上!あの一瞬に二回移動したのか?」
のしかかる大きな光の弾。両手で受ける。
「ぬ!」
はさむように抱き、押しつぶしていくワグ。
さらに藤色に変わるリボン。
「か、ぜ、よお!」
風がさらに押し込む。
「はあ!」
光の弾は押しつぶされ、風ごと消し去られる。
フルーティーのリボンがピンク、ブルー、イエローと立て続けに変わる。
「無理したらダメッピ!」
「プリキュア四人分の力を一気に使う気かい!」
慌てるチョラピとアルト。
祈るように胸の前で手を合わせ広げると、三色の光のハート。
「いっけえええ!」
手を前に出す。同時に飛び出す輝き。飛ぶパフューム。
「くっ!あああああ!」
なんと光の中を掻き分けて進んでくるワグ。
「なんちゅうやつや!」
「怖いッピ……」
近くまで来ると光線の中から体を出し腕を振りかぶる。
フルーティーの隣に飛んできたパフューム。金色に輝くリボン。
「や!」
半球の光の壁。
ズン!
大きく開いた手を止める。しかしすぐにひび割れる。
「やああ!」
さらに銀色に変わるリボン。
「はあああ!」
両腕で押し込むワグ。
ドン!
いくつもの輝きと共にその場が爆発する。
アイキャッチ
CM〜
アイキャッチ
※Bパート
倒れそうになりながらもどうにかバランスを整え着地する二人。
息が乱れる。汗が流れる。
「疲れとるな……」
「力に頼りすぎッピ……」
「せやかて力押ししかあらへんやろ」
「プリキュアの力は心の力ッピ。バランスが合ってないッピ」
「なにか迷うとるんか?」
土煙の中から平然と現れるワグ。
「スピードはなかなかだが、パワーはもうひとつのようだな」
目を丸くするアルト。
「力押しであれかい……。スタミナやバランスっていうレベルやないで」
「……それでもプリキュアを信じるッピ」
前を向いて互いの手を握る。白く輝くリボン。
ワグも両手に黒い輝きを集め踏み切る。
ズドン!
たたき付けられる力。
ワグの両手を片方ずつ輝く手で受け止める二人。
「一体誰があなたを責めて、あなたから何を奪うというの!」
「私たちはそんなこと……しないよ?」
表情崩れる二人。
「私は心の歪みが力であり存在。しかし生命はそれを癒し、解消し、満たされようとする」
ぶつかり合う力、心。
「そんなの、誰だってそうでしょう?どっちも完全になくならないことだって知ってる!」
「でも一生懸命に前向きになって!そうやってバランスとって、みんな生きてるんじゃない!」
押し込まれる力が少し弱まる。
「そうだ。存在ならプリキュアと私は同じバランスの上に成り立つはず」
ぼそりとつぶやくように言う。そして今度は吼えるように言い放つ。
「私と正反対の力を持つプリキュアに救われていた!惨めなことこの上ない!」
マスクに亀裂が入る。
「どうして!」
「そんなの!」
ひび割れるように避けた口。大きく息を吸い込む。
「ガアアアアア!」
声なのか音なのか分からない衝撃。
周囲がえぐれる。
二人は吹き飛ばされ後退するが、踏みとどまり耐える。
ワグの様子が変わる。スマートな鎧のようだった足にするどい爪が生える。
猫背になった背には悪魔のような翼が生え始めた。
「変化してる!」
「止めないと!」
つないだままの手。
※半バンク
二人に集まる光が粒子になって舞う。
光る粒が螺旋状に集まり小さな円になる。
フルーティーフープとパフュームフープが浮き上がり光の円をはさんで筒になる。
つないだ手を上に向ける。筒が二人の腕に入り、つながった手の先だけが出た。
そしてその手にさらなる光が集まる。
『心に実る命の香り!包み込め!』
ダンスを踊るように振りかぶる。
『プリキュア・スパイラル・フレーバー…』
足を踏み出して手を前に。
『アライブ!』
放たれた光から。巨大な光のつる。緑色に輝き伸びるように流れ走る。
三つ編みのように重なり合い葉のようなものがところどころに出る。
ザアア!
輝く葉の集まった先がワグの放つ衝撃を消していく。
「ぐうう……!」
そのまま衝撃と黒い輝きを破ってワグに直撃。
「成長したな。ずっと見ていた。半人前だったお前たちも、もはや十分に伝説の戦士、プリキュアだろう」
抱えるように大きく手を広げる。
バリバイバリ!
押しつぶし砕く。枯れるように消えていく光のつる。
「まだまだ!」
「あきらめない!」
根元から生気を帯びる。
「オオオ!」
畳んだ腕が大砲のように筒状に変化する。
収束する黒い輝き。
シッポを地面に突き刺し、翼を広げ中腰になる。
ゴウ!
砲撃された黒と紫の炎の塊。流星のように走る。
裂かれる焼かれ消滅していく光のつる。
ドオオオン!
「フルーティー!」
「パフュームはん!」
「ダメです!」
出て行こうとするチョラピとアルトを抱え世界樹の根の陰に隠す。
ゴオッ!
熱風が駆け抜ける。
焼け焦げた一帯。
大地に出ている世界樹の根も欠け、炭になり砕ける。
そっと顔を出す。
倒れるプリキュア。
光が漏れ出している。
二人とも動かない。
そして変身が解けた。
「無策のままなら破れていた。だが、完成したノウンをまとった私は止められん」
「みのり!」
「千香はん!」
止めるシフォンを振り切って駆け出す。
シフォンとフィーリア王女も続く。
「世界樹を傷つけてしまった。ふむ。これ以上、待っても実は付かないか」
腕を組み思案する。もうチョラピたちも眼中にない。
「まあ、いい。世界樹の花も失われた魂を呼び戻すほどの力があると聞く」
羽ばたかない翼。しかしふわりと浮く。生い茂る世界樹。咲く花。
「さあ、その力をよこせ!」
全身を広げる。吸い込まれていく光。しおれる花。
「花が、枯れていく……」
絶望するシフォン。
「あかんのか……」
アルトは地面を叩く。
「フィーリア王女!」
チョラピの声。
「大丈夫……です……」
フィーリア王女の体が透ける。
「フィーリア王女は世界樹の精霊ッピ!このままじゃ消えちゃうッピ!」
シフォンはワグを見つめる。
「仕方ありません。私があの人ごとどこか遠いところに飛びます。すべての力を使えば……」
「そんなのダメに決まってるでしょう」
立ち上がる千香。
「千香ちゃん?何を……」
途中でシフォンの頭を一撫で。
みのりもふらふらと世界樹の方へ歩いていく。
上空ではワグの様子が変わる。
自らの体を確かめるように手を見て握るように動かす。
「素晴らしい……」
黒い鎧のような体に黄金のラインが入る。
「これで完成だ」
光を失っていく世界樹。
みのりと千香は世界樹の張り出した根に足をかけ幹にしがみつく。
「あの人たち、プリキュアの力を奪っていって使ったでしょう。同じことができるかも……」
「今の私たちにはそれくらいしかできないかもね」
二人とも目に力がない。
「そんなことしたら本当に栄養になってまうがな!」
驚くアルト。チョラピが震えだす。
「そんなの!そんなのダメッピー!」
輝くチョラピ。
「なんだ?」
ワグも気付く。
しかし世界樹に変化はない。
「再び花が咲く様子も無いが……」
透けていたフィーリア王女の体だけが戻る。
「精霊の力を集めてるんでしょうか……」
起き上がるフィーリア王女。
「いけません……。これは太陽の泉の力ですね?」
「海の……」
みのりは咲たちの話を思い出す。
「でもフィーリア王女が……」
「あなたがこの力を使うには負担が……」
「それでもいいッピ!」
フィーリア王女にしがみつく。
「やっぱり私が……」
シフォンはワグを見る。
「だめよシフォンちゃん……」
「私たちが……」
「アカン!アカンで!みんなずるいやないか!」
アルトが叫ぶ。
「もはやただの木か。どちらにしろ完全に消し去っておくべきだな。まずは……」
ワグが手を掲げ引っ掻くように振るう。
みのりたちをめがけ、数本の閃光が飛ぶ。
「いけない!」
シフォンが甲羅のような光の壁を作る。
ドガッ!
壁は砕け土煙が舞う。
ワグは背を向けた。
「世界を不安に陥れる。疑心暗鬼の世界へ」
空が暗くなる。
その影響はまず、スウィーツ王国。そしてラビリンス。
暗く、そして道や建物の影で何か黒いものが揺らめく。
夕凪町では海の色が暗くなる。
かすかな音。
垂れ下がった木の枝。枯れた小さな花が一つ。
みのりと千香は吹き飛ばされたはずなのにならんでならんで座っていた。
倒れて透けているフィーリア王女にしがみついて尚も光を与えるチョラピ。
「チョラピ……」
震えるチョラピをそっとなでるみのり。
霞む視界に何かが動いているのが見える。近づいてくる。
ボロボロのシフォン。それを担いでいるアルト。
「わいは妖精言うても何の力もなくて足手まといになってばっかりやからな……」
自分自身も傷だらけだ。
「こんくらいせえへんと!みんなでおったらまだわからへん!」
「アルト……」
何かが聞こえる。
みのりと千香は目を合わせる。
どこからか声が聞こえる。
「千香ちゃん……」
「みのり……みのりちゃん……」
垂れ下がった枝。枯れた花。
その周りの小さな花が光る。
僅かに残った若葉から聞こえてくる声。
「聞こえる……」
「大切な人の声……」
「大切な人を守る力は……」
「大切な人がくれるんだね」
手を取り合って立ち上がる。
枯れた花に手を伸ばす。
「みんなの笑顔が見たいから……」
「私たちが笑顔じゃないとね」
思い出す咲の言葉。
思い出すラブの応援。
「あきらめられないよね」
「あきらめないのがプリキュア」
枯れた花が強く輝く。
「しつこいな……。ん?まさか!あれは!」
バスケットボールほどの輝く果実。
二人の手にゆっくりと落ちてくる。
二人はそっとそれを受け止める。
カッ!
はじける輝き。
無数の光の粒が一帯を包む。
「これは……」
「プリキュア……」
目を覚ますフィーリアとシフォン。
「ええ香りや……」
「瑞々しくて生きてる匂いがするッピ」
渦を巻く光の粒がみのりと千香を覆う。
「信じて待っとったで!」
「もう負けないッピ!」
さらにはじける光。
輝くフルーティー。
七色に輝く胸元のリボン。
煌くパフューム。
七色に輝く腰元のリボン。
フルーティーのリボンから肩の上で弧を描き大きく背を回る帯。
腰で結ばれさらに伸びて揺らめく。透明感あふれる光の羽衣。
パフュームの背には白く輝く光の翼。羽ばたくように大きく広がる。
腰元からさらに二枚の小さな翼。柔らかでいて鋭い輝き。
『笑顔呼ぶ香り、幸せ巡る命。私たちはプリキュア!』
ED♪
「ガンバリードでビートハート」
予告
奇跡に到達するプリキュア。進化を続け強くなっていくバクター・ワグ。
幸せに向かって生きる希望を失わせはしない!
次に向かって世界が変わるとき!私たちは絶対に忘れない!
最終回!
「心に実り、世界に香る!生まれるつながる物語!」
またみてね
K
※アバン
輝くフルーティー。
七色に輝く胸元のリボン。
煌くパフューム。
七色に輝く腰元のリボン。
フルーティーのリボンから肩の上で弧を描き大きく背を回る帯。
腰で結ばれさらに伸びて揺らめく。透明感あふれる光の羽衣。
パフュームの背には白く輝く光の翼。羽ばたくように大きく広がる。
腰元からさらに二枚の小さな翼。柔らかでいて鋭い輝き。
『笑顔呼ぶ香り、幸せ巡る命。私たちはプリキュア!』
輝く二人の姿を上空から見つめるワグ。
フルーティーの羽衣とパフュームの翼がさらに光る。
二人はふわりと浮くとワグの高さまで昇る。
「何故かな。ここに来てあまり驚きがない。そういうものだと思っていたのかもしれない。プリキュアよ」
どちらも不自然なほどに落ち着いている。
「そうね。あなたはプリキュアをよく知っている」
「だから、尚更こういうことになってしまったことが悲しい」
互いにゆっくりと構える。
「憐れむか。さあ、いくぞ!」
黒い外装に通った黄金のラインが鈍く光る。
OP短縮
CM〜
※Aパート
「心に実り、世界に香る!生まれるつながる物語!」
緊張が高まる。動かない。
見つめるチョラピとアルト。
世界樹から一枚の葉が落ち、空中で光となって散った。
同時にワグの目の奥が光る。
音もない高速の接近。
同時に前に出たパフュームが光の壁を作り衝突させる。
バリッ!
ワグは失速したがさらに前に出る。
ワグは片手で壁を裂くように破っていき、もう片方の手に黒い火の玉を作る。
フルーティーがパフュームと光の壁の前に入り、手にピンクのハートを作る。
振り下ろすワグ。振り上げるフルーティー。
ドン!
大きな爆発。
空気が震える。
煙から抜け出す三人。
突撃するプリキュア。迎え撃つワグ。
「はああ!」
「おおおお!」
「やあああ!」
高速の突き、蹴り。二人分を裁くワグ。
時々出てくるシッポにいいところで遮られるプリキュア。
「あああ!」
裏拳と強烈な蹴り。腕を組んで防御する二人を同時に吹き飛ばす。
「くらえ!」
両手を広げて黒い火の玉を飛ばす。
空中で停止する二人。
『はあ!』
月の光の玉を飛ばすパフューム。
イエローのダイヤの光を飛ばすフルーティー。
ボン!ボン!
どちらも黒い火の玉と中間で相殺、爆発して消滅する。
「まだだ」
ぼそりとつぶやくワグ。
爆発した煙の中から少し小さめの火の玉。
「初めから二つ?」
「陰に!」
瞬間に赤い光の中に逃げるフルーティー。
しかしパフュームは後ろを気にした。
後ろには妖精たち。
「くっ……」
光の壁で受け止める。
ズウン!
爆発して空気が震える。
「なんてことを!」
回避したフルーティーが焦る。
「死角を突く!弱点を突く!当然だ!」
さらに追撃を仕掛けに行くワグ。
「させる……」
赤い光に消えるフルーティー。
「もんですか!」
ワグの目の前に現れる。手にはブルーのスペード。
距離はない。そのまま叩き付ける。
ズバン!
「ぐわ!」
「きゃあ!」
フルーティーとワグの間に生まれた衝撃が二人を吹き飛ばす。
吹き飛んだフルーティーを受け止めるパフューム。
羽を広げて空中で止まるワグ。
「なんという……」
さらに高速で飛んでくるプリキュア。
「風よ!」
竜巻のような風がワグを包む。
「吹き荒れよ!」
赤い無数のハートがさらに風を嵐に変える。
ゴオオオ!
「ぬあああ!」
体を包むように一度羽と腕を閉じ、一気に解放する。
バン!
散る嵐。
再び羽をコンパクト背の方に畳む。
下から並んで飛んでくる二人に向かってさらなる速さで突撃。
両腕を広げ刈るようにして自分ごと地面に叩き付ける。
「ぐはあ!はあ!」
立ち上がるワグ。大きく息が乱れる。
ワグの四方を囲む四枚のハート。
矢の様に中央に向かって飛ぶとクローバーの形がワグの羽を畳んだ体を拘束する。
「なんだ!」
下を向いたまま両手を掲げて立つフルーティー。
「はあっ……はあっ……」
肩で息をする。
「はっ!」
首を直角に左に回すワグ。
同じように立つパフューム。
パフュームの両手に輝く水の渦。
「はああ!」
二つの水流が混ざり合うように螺旋を描きながらワグにぶつかる。
「おおおおお!」
鎧から吹き出る黒い炎がクローバーごと蒸発させていく。
「はあ!」
吹き飛ばすように大きく全身を広げるワグ。
そこに突如フルーティーが現れる。
「やああ!」
輝く手。渾身の一撃。
「ぐあ!」
マスクにヒビが入る。
振り払うように腕を振るうと横からわき腹に飛んできたパフュームの蹴りが入る。
吹き飛ばされるワグ。
しかし途中で羽を広げて空中で止まる。
「なんという力だ!闘神か貴様ら!」
焦りだすワグ。わき腹にもヒビが入り鎧が欠ける。
『プリキュアよ』
応える。
「そうだ、プリキュアの力!それならまだ!まだ私は上にいける!おああああ!」
大気が震える。
ワグの様子がおかしい。
「なんや、変やで!」
「暴走してるッピ……」
不自然なほどに鎧が変化する。
どんどん背筋が前のめりになり脚が大きくなる。指先はすべて猛獣のように鋭くなる。
極端なのはマスク。割れた口のような部分が大きく広がりキバが生えた。
全身を走る黄金のラインが輝く。羽はさらに大きく広がった。
「グオオオオ!」
首をひねり雄たけびを上げる。
「パフューム……」
「フルーティー……」
うつむいたまま歩み寄って手を握る。
祈るチョラピ。アルト。シフォン。フィーリア王女。
そして二人は同時に顔を上げ笑った。
光の粒が集まる。
光の粒が舞う大空の木を抱いて手をつなぐ四人。
咲、舞、満、薫。
光の粒が舞うラビリンスの中央で輪になる四人。
ラブ、美希、祈里、せつな。
無数の光の粒。
「一つ一つ小さくても強く輝いてる」
「全部、一生懸命に輝いてる」
二人を包み始める。
「オオオ!」
ワグの大きく開いた口の前に小さな黒い太陽のようなものが現れる。
時々、飛び跳ねるように弧を描き再び収まる黒い炎。
その度に黄金の雷がほとばしる。
光る粒が螺旋状に集まり小さな円になる。
フルーティーフープとパフュームフープが浮き上がり光の円をはさんで筒になる。
つないだ手を上に向ける。筒が二人の腕に入り、つながった手の先だけが出た。
そしてその手にさらなる光が集まる。
『心に実る命の香り!包み込め!笑顔を解き放て!』
ダンスを踊るように振りかぶる。
『プリキュア・スパイラル・フレーバー…』
足を踏み出して手を前に。
『アライブ!』
放たれた光から。巨大な光のつる。緑色に輝き伸びるように流れ走る。
「ガアアアア!」
黒い太陽が弾け黒い炎が巨大な濁流となり金色の雷を伴って駆け抜け押し寄せる。
『フレッシュスター!』
巨大な光のつるの周りに光の水流が帯のように現れる。
さらに周りにはじけ出た水の粒が羽根となり舞う。
炎を打ち消す水。
雷を打ち消す羽根。
三つ編みのように重なり合い葉のようなものがところどころに出る。
ザアア!
輝く葉の集まった先がワグを包む。
つるが巻き付いて毛糸の玉のように丸まる。
パアアアン!
はじけると中から洋ナシのような光の実。中で浄化されるワグ。
砕ける鎧。羽もシッポもすべて割れて砕ける。破片はチリになる。
ワグだけが残り、光が消える。
黒いスウェットのようになったワグ。
ノウンになる前の黒い多面体が胸元に現れ落下する。
続いてワグ自身もふわりと地面に降り、膝をついて前のめり倒れ手をつく。
体か出る黒い霧が散り、消えていく。
二人はワグにゆっくと歩いて近づいた。
「ストレスの結晶……。私のような存在は消えない。また……」
二人が近くに来てもうつむいたまま低い声で語る。
「私たちが、プリキュアがとめてみせる。何度でも」
フルーティーはただそう言った。
「ならば私をここで消せ。どうなるかわからんぞ」
「言ったでしょう。何度でもとめてみせる」
パフュームもそれだけ言う。
そして二人で顔を合わせると、そのまま後ろを向いた。
「何故だ……納得できるはずもないのに……!」
何かを振り払うかのように上半身を起こす。
そして二人に向けて掴みかかるように手を伸ばすが、そのまま倒れ再び手をつく。
ドサ!
思わず振り向いた二人。
「もう怒りもわいてこない……わからない……私は……何がしたかった?」
「プリキュアになりたかったんだね」
パフュームはそう言った。フルーティーも驚く。
「妖精、変身……そういうことなの?」
「違うな、お前たちを越えたかったのさ……。だが、知れば知るほどに……」
ワグの力が抜けていく。禍々しい気配はもうない。
「本当は分かっていた。自分自身が満たされてしまうことすら怖かった」
体が少しずつ分解し消えていくワグ。
「皮肉なものだ。お前たちを認めてしまった。満足してしまった。最後の私自身のストレスも無くなったか」
手を伸ばそうと前に手を出して包む光に気付く二人。
変身を解いて一歩前に出ると、ワグはそれを拒絶した。
「よるな。もういい」
二人は止まる。そして歯を食いしばる。こらえる涙。
「私のために泣くのか」
驚くワグ。
「悪くない……」
バクター・ワグは最後に笑顔を見せて散った。
アイキャッチ
CM〜
アイキャッチ
※Bパート
「終わったッピ」
「頭良くて器用でも、やり方は不器用なやつやったんやな」
しばらく二人はワグが散っていった空を見つめていた。
「絶対に……」
「忘れない」
そしてようやく振り向いた。
「花、枯れちゃったね」
「世界樹は守れなかったのかな?」
悲しげな二人に光が差し込む。
暗くなっていた空が明るくなる。
そして不自然に静かだった泉の里に風や水の音が響き始める。
光の粒が飛び回る。
「精霊たちが目覚め始めたッピ!」
「ほな、王国も!」
スウィーツ王国では国民が目覚め始める。
同時に太陽の泉のやラビリンスの空が元の色に戻り始める。
神秘的な光の舞に感動する二人。
「世界樹も!」
輝きを戻す世界樹の葉。
「でも、花は……」
「大丈夫です。実が生るために花は役目を終えただけですから」
フィーリア王女が空に手を上げると泉の郷全体が輝く。
「精霊たちよ。もう少しだけ頑張ってください」
花が光り輝き形を変える。
バスケットボールほどの輝く果実。
「ようやく、このときを迎えられました。プリキュアに感謝します」
シフォンは宙に浮く。木の全体を見渡し手を広げる。
解けるお団子の髪。額に浮かぶ紋章。
「キュアキュアプリプー!」
輝く世界樹の実。
もがれるように葉を一枚お供にして切り離されると宙をふわりと浮く。
そして次々と空に向けて飛び立っていく。
無数の光の軌跡が空に輝く。
「うわぁー!」
「きれい……」
「よかったッピー!」
「やった、やったで!」
最高の笑顔で見送る。
飛んで弾ける世界樹の若葉。
光のスクリーンが世界樹から飛び立つ光の光景を映し出す。
咲たちラブたちはそれが何を意味するのかをすぐに理解した。
飛ばし終えるとふわりと降りてきたシフォン。
沈黙が訪れる。
すべてが終わった。
ふと見つめ合うみのりと千香。
カッ
突然空が光った。
何かが落ちてくる。
「世界樹の実ッピ!」
「なんでや!」
間違いなく世界樹の実の一つ。
ワグの残した黒い多面体、ノウンにぶつかって輝く。
みんなで駆け寄る。
金色のボールになり、割れた。
「ピィ」
中から出てきた小さな光。
少し目つきの悪いチョラピに似た精霊の赤ちゃん。
「うはあ!」
「かわいい!」
ソフトボールくらいの体。よく周りが分からないのかきょろきょろとしている。
「しかし大丈夫やろか?言うてみればラグナラボの兵器だったんやろ?」
「しばらくここで面倒を見ます。きっと大丈夫ですよ」
前に出てきたフィーリア王女が拾い上げて抱く。
「私もある程度力が戻るまではここにいます。きっと大丈夫です」
シフォンの体がほんのりと光る。
「最後にわずかばかり残った力です。あの、きっと、また……」
大きく深呼吸するみのりと千香。
「うん」
「わかってたよ」
チョラピは首をかしげる。
「ッピ?」
「お別れやな」
「帰るッピ?」
「家族のところに帰るんや」
寂しそうなみんなに不安になるチョラピ。
「でもまたすぐに会えるッピ?」
「世界樹も私もかなりの力を使いました。どのくらいでまた会えるかは分かりません」
「そんなのイヤッピ!」
泣くチョラピ。
「寂しいけどな。もう会えなくなるわけやないで。前を向きい!」
アルトは真っ直ぐ前を見ながら滝のように涙を流している。
「また明日みんなで会いたいッピ!」
みのりはチョラピの頭に手を置く。
「チョラピ。お兄さんだね」
フィーリア王女に抱かれて眠る精霊の赤ちゃん。
チョラピはそれを見つめた。
みのりと千香は世界樹の方へ。
世界樹の根のすき間。籠のようにつるで守られていた荷物。
スケッチブックとポシェット。
千香はポシェットの中からアクセサリーを取り出す。
緑と黄色、ピンクのブレスレット。
「みのりちゃんのイメージでフルーティーっぽくしてみたけど……」
「作ったの?すごい!」
みのりの腕につける千香。
「ありがとう。私のは、ただの落書きだけど……」
千香がスケッチブックを開けると、そこには千香が書いてあった。
そして、プリキュアたちとチョラピ、アルト。様々な出会いのラフスケッチ。
「結局、一冊に描き切っちゃった」
「いいの?大切なみのりちゃんの思い出じゃない」
「うん。だから千香ちゃんが持ってて」
「ありがとう。大切にする」
そのまま二人は黙ってしまった。
春のような風が吹きぬける。
閉じたスケッチブックの上に一粒の涙がこぼれた。
手を出したみのり。
顔を上げ千香がみのりを見る。
歯を食いしばって涙を溜めて握手を求めている。
「みのりちゃん、かっこいいんだから」
千香は笑顔で握手に応えるとすぐにそのまま抱きついた。
「また笑顔で会おうね」
力んでいた顔が和らぎすっと涙を流すみのり。
「うん」
しばらく泣きながらその様子を見守っていたチョラピとアルトだったが、ついに駆け出した。
「絶対みんなで再開やでー!」
「また会うッピー!」
跳んでしがみつく。
みんなで泣いて、笑った。
輝く光。
「それではみなさん。本当にありがとうございました。お元気で」
光に包まれるみのり、千香、アルト。
「またね」
「またやで!」
「また会おうね!」
「また会うッピ!」
光に包まれて消えた。
泉の郷。残ったチョラピ。
フィーリア王女は世界樹の根で精霊の赤ちゃんを抱いている。
「ふう。私も少し休みます」
「シフォンはすごいッピ。また会えるときには頑張ってほしいッピ。だからゆっくり休んでほしいッピ」
「はい」
気遣うチョラピに笑顔のシフォン。
世界樹の根元へ歩く。
そこに二つの影。
「よくやったラピ」
「誇りにおもいますチョピ」
あふれる心。
「ッピー!」
走り出し抱きついた。
スウィーツ王国城門前。
「帰ってきたけど、ボロボロやな……」
ほこりにまみれて毛羽立つ体。
開く城門。
「あり?みんな起きたはずやのに静かやな」
中に進む。
パパァーン!
大きなラッパの音。
「我らが英雄!アルト王子に敬礼!」
いきなり大歓声とともにパレードが始まった。
「な、なんや!ビックリすんで!ま、悪うないな!」
城の上から眺める二つの影。
「男になったんやないの」
「まだまだどす」
アルトは堂々と中央を歩いた。
ラビリンスの広場の中央。
輝く光。
千香が降り立つと観衆が沸き立つ。
「仕事に戻らんかお前ら!」
国王の声も届かない。
「ふっ、いいじゃないか。第二のプリキュア記念日だ」
瞬は周りを見渡して手を挙げ、下げる。歓声は静かになった。
『おかえりなさい』
「ただいま」
千香の前にはラブたちプリキュア。
「頑張ったわね!」
「千香ちゃん完璧!」
「私、信じてた!」
千香は倒れるようにラブに抱きつく。
「おかえり。幸せゲットできた?」
「うん。たくさん大切なものができたの」
大空の木。
うろから飛び出る光。
降り立つみのり。
真っ直ぐに前を向く。
そこには咲たち。
『おかえりなさい』
「ただいま」
舞が顔つきの変化に気付く。
「あら?ちょっと咲っぽくなったみたいね」
「本当。強くなったみたい」
「みのりちゃん……。寂しいけどうれしいわ」
笑顔の満。泣く薫。
咲はみのりを抱きしめる。
「頑張ったね」
「うん。みんなありがとう」
※スタッフロール&ED曲
クローバーストリートの本屋の前を歩く千香。
雑誌の表紙を飾っている美希。
逃げてしまった動物を追いかけて捕まえている祈里。
公園ではダンスの練習をするラブとミユキ。
遊びに来ていたせつなにドーナツを持ってくるカオルちゃん。
手を振って一言二言。また歩く。
病院の前で看護師さんに会う。あいさつをすると、がさがさと物陰で音がする。
首を伸ばしてみると鳥が飛び立っていった。
パンパカパンを出るみのりと大きな荷物を持った咲。
コロネをひと撫で。パンの袋を持って出てくるエプロンの満。
それを受け取って坂を下る。堤防で絵を描いている舞。
鳥が肩に乗っている。飛び立つとようやくみのりと咲に気付く。
共に駅へ。もう電車が辿り着こうとしている。ホームで呼ぶ仁美。
慌てて咲がホームへ向かう。電車に乗った咲。手を振る。
みのりは舞と一緒に保育園へ。子供達に囲まれる薫。
スケッチブックを取り出す。
四つ葉町。新学期。
「おはよう千香」
「おはよう千歳」
並んで歩く日常。
「久しぶりの学校って緊張しない?」
千歳はまだこちらの生活に慣れていない。そんなことも知った夏。
「深呼吸!リフレッシュ!」
千歳をくすぐる千香。慌てて逃れる。
「もー!もうすぐラビリンスからスウィーツ王国への道が直るって」
「本当?アルト元気かな」
空を見上げる。
夕凪町。新学期。
「おはようみのり」
「おはよー」
「おはよう志乃、静」
下駄箱が懐かしい。
「ねむーい」
志乃の背を叩く。
「全力!ノリノリ!絶好調!わっはっは!」
みのりは颯爽と歩く。
「みのり元気だなー」
静もあっけにとられる。
教室の前。
ドアの前にタケシ。
「よう。千香はどんな夏だったよ?」
ドアの前におかっぱメガネの先生。
「あら、夏休みはどうだった?」
『最高の夏休み!』
教室のドアを開けた。
fin
拍手返信
〜7/27
>面白かったです>Spiral Flavor!
>みのりちゃんをプリキュアにするというケースはいくつかトライされていますが、今回は結構期待できそうです。
アリガトウゴザイマース!期待されるほどのモンでもないですが
千香ちゃん登場からずっとやりたかったことなのでトライします(`・ω・´)
〜8/18
>Spiral Flavor!も既に4話、今回はS☆Sのみのりちゃんとフレプリのゲストキャラだった森田千香ちゃんを主軸にしている様ですが、いくつか質問が・・・
>1・何話構成を予定していますか(夏休み企画で週1更新となれば、あと2・3回で完結しなければならないのですが、どうもストーリーを見る限りそうはなり
そうもない)
>2・出来ればみのりが変身するキュアパフュームと千香が変身するキュアパフュームのイラストがあるといいのですが(これは個人的願望ですので)
>千香ちゃん
名字は設定されていなかったので「森田」というのはうららの友達のカレー屋さんの娘さん
からいただきました。中の人つながりですかね。
>1
とりあえず劇中の夏休みということで…
いや、本当は6月くらいから公開していくはずだったんですがずれ込みまして…
まあ、もう夏休みなんて遠い昔ですから…あ、大学生は九月半ばまで夏休み?まあ、関係ないけどw
実際、いっそ1クール12回がキリがいいかなと思ったり。しかし実際は11話になりそうです。9月末までかな?
>2
原稿用のイメージ作りのコラならあります。
イラストを描くとトレスでも一ヶ月くらいかかりそうなので…
あと、想像を固定化してしまうのもどうかな?とも思ったり…
まあ、気にしないのでしたらどうぞ→コラージュこちら
ブルームベースのコラです。
あ…、リッタッチのケースも無いしパフュームはベリー風のリボンだったのに…
まあ、だいたいですw
あとがき
製作期間中、素に戻ることのないようにテンションをキープするのが大変でした。
なんでこんなことやってるんだろうって思ったら負けですw
できる限りテレビアニメに近く!を目標に。これがまた大変。妥協、妥協w
少し油断すると百合百合な展開にしてしまいそうになる。自重w
デザインも難しい。ブルームに三つ編みつけたら部族みたいだしw
逆にパフュームは地味じゃない?ごめんよ千香ちゃん(´・ω・`)
あと、問題は出合った後の二人のキャラ。差別化できてねえ!また説明っぽく…
驚いたのは期間中にサンシャイン爆誕!タンバリンネタかぶりにはビックリ!
いや、フープでセーフ?いやいやwおもちゃ的にも番台や安全に気を使う。
腕からスポーンて抜けたりケガしない?
映画でくるくる回すのは危険だからとか注意されてるし…そんなことまで考えて。
コロンの消滅にはここまでやっていいんか!って逆に度肝w
なにしろハートキャッチには今回の世界樹的な話が多くて…かぶるかぶるw
都合上、プリキュアの世界の根底をひっくり返す設定が出てきてしまうのはご愛嬌。
さて、他に気にしてた点。
千香ちゃんは成長して敬語率が高いです。さてみのりは?
敬語で話したら薫お姉さんが悲しむだろうが!というのが結論。
19歳桃園ラブ、髪型は同じでいいのか?誰だか分からないのでヤツのせいにしようw
プリキュア名物、愛される敵。ちょっと厳しかった。安易な生存はしたくない。
るー語紳士。緊張感ないwござる口調が安定しねーwちょっと辛かったです。
製作期間中。誤字だらけ…ゴクリ。
やべえ、いつのまにかみのりとアルトが組んでるw関西弁チョラピw疲れてるなw
だんだんと子供向けという自主制限が効かなくなって複雑になっていく…
そしてラスボス。ここだけは大いに本編無視したかも。絶対悪っぽくない。
プリキュアとして敵を倒すことに違和感があるのはタブーだったと思いますが…
最終的に生命っぽいテーマだったはずが、明るい人生にシフトしてしまったような…
ざっとそんな感じです。おまけは音源付きのでぃれくたーずかっと版です。
三ヶ月1クール12話。書ききってしまった…
もし最後まできっちり読んでくれた人がいたらビックリです。
ありがとうございました!
続編?ハートキャッチ次第かな?